何でお前ばかりがもてるんだ
牛車も人が増えて最近は迷宮の様をなしている。
必要になった部屋は勝手に増築される、それがこの牛車の最大の利点であり欠点でもある。
俺は自分の部屋、つまり左から三番目のドアを開けて、閉めた。
「ごめん、わざとじゃないんだ!」
とっさに叫んだけど中には聞こえない、よな。
「お兄ちゃん何か用?」
そのドアからアリスが首を出した。
「い、いや、違えた。ごめん。」
「部屋がまた増えたからね、お兄ちゃんのは隣だよ。目印付けといたほうがいいよ。」
「そ、そうだな。」
閉じかけたドアがまた開いた。
「お兄ちゃん知ってる?アモン帰ってきたよ。それからサラさんも紹介するから入って。」
さっき誰かの胸がチラッと見えたけどいいのか?
「やぁアイン久しぶり、この娘サラっていうんだ。俺の嫁。」
この角を生やした人族換算で16才くらいのちょいきつめの美女がサラさんなのは分かるが、
「サラさん始めまして、アインです、よろしく。ところでお前誰?」
修羅とエルフのハーフみたいなこれも飛びきり美人の少女に尋ねてしまって気が付いた。
「おまえ、アモンか?」
レイさんにどことなく似た顔がにやっと笑った。
「なんだ分からなかったのか、お前だぞ、それ。」
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俺が抱き上げたサラは老衰でかなり弱っていた。
目も見えず、耳も聞こえず汚物にまみれ、それでも生きていてくれた。
それでも俺を俺として認めてくれた。
もはや遮る者のいなくなった祭壇に二人で上る。
さあ俺たちの成人式だ。
ひび割れてかさかさの唇にキスをした。
二人の気が交わり、共鳴し、爆発する。
激しい閃光にやっと死力が戻ったとき、俺は腕の中に若返ったサラを見つけた。
サラには成人の証の女角、俺にも成人の証の男角。
目が見えるようになったサラは俺の姿に驚いたが、角を見て受け入れてくれた。
「おいで、サラ。仲間に紹介するよ。」