踊れ華の散る元で
レイチェルが飛び出してきた。
「お化粧したの。」
「そ、そうか。」
何かの罰ゲームかと思った。
ドリスが俺を見上げる。
「ドリスかわいい?」
「あ、あぁ、かわいい。」
かわいいがタヌキみたいだ。
ファリアが俺の頭をむんずとつかんで自分の顔に近づける。
「ファリアがんばった。」
「うんがんばったな。」
塗りたくればいいというものでもなかろう。
ミラは?
ん?どこいった?
つんつん、うしろにいたのか。
「ぅわ!、・・びっくりするほどかわいいよ。」
お化けがにたっと笑って走っていった。
これは心臓を鍛えるのによさそうだ。
あの後姿はアリスだな。
俺は腹に力を入れてアリスの肩をたたいた。
「なぁアリス。うわぁぁっ!」
「アリスの顔を見て、うわぁぁっ!ってかなり失礼じゃないの?」
「い、いやお前アリスだよな?こんなに美人に化けると思わなかったからさ、いゃ驚いた。」
真剣にほめているのが伝わったらしい。
「ルーナにお化粧習ってたの。」
「そ、そうかアモンも腰を抜かしてびっくりすると思うぞ、ほんとにきれいだ。」
「ありがと、サラさんに負けない。」
アリスはにっこり笑って厨房のほうに歩いていった。
誰なんだよ、サラって?
「あ、レイ、サラってだれ?」
「アモン様の許婚です。」
レイもそれだけ言って厨房へ向かった。
「おい!」
俺はひとり立ち尽くしていた。
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俺はひとり神域の中に入っていった。
視界にはだれもいない。
しかし気配を消そうとしているが俺は全員の位置をつかんでいる。
一際弱いのはたぶんサラの気だ。
誰もが好奇心に満ちた視線を俺に送りつけてくる。
里の外で成人した修羅も一度はここで舞を奉納せねばならない。
だから見知らぬ修羅が踊るのは珍しいことではない。
だがその場合かならず二人で踊る。
この神域は二人しか入れないからだ。
誰にも邪魔されず二人で約一時間踊る。
それで二人の仲が認められる。
俺たちもそうするはずだった。
俺は神域の真ん中に進み、歌うことも無く剣を抜きリズムを刻み始めた。
タンタタン・タンタタン・・
見物していた修羅たちが息を呑む。
これは贖罪の舞、罪を犯したものが罪を償うために七日七夜舞い続ける。
もし舞きることが出来たなら、いやそれはもう関係が無い。
俺がサラにしてしまったことに対して俺が出来るのはせいぜいこんなことぐらいだ。
俺の舞にあわせ、ひとりの修羅が踊り始めた。
足音のみで奏でられる一つの曲が終わるとき、俺は戦うか、相手に隷属するかを選ばねばならない。
そして俺はバラム・ドロンと名乗った男の角を両方とも切り飛ばした。
文字通り命をかけた舞に割り込めば命をとられても文句はいえない。
たとえ角を切り取られても、である。
次に舞に入った大男は明らかに殺気の強さが違ったが、大事な角を二本とも奪われ逃げていった。
タンタタン・タンタタン・・
散りだしたサラの花びらとともに、俺はひたすら舞い続けた。
時たま、俺の剣が光る。
タンタタン・タンタタン・・




