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玄関開けたら魔界でした。



 その日、学校から帰宅。そうして私が家の扉を開いた瞬間迎えたものは、黒衣のマントを纏った魔王様でした。



 家の帰り道に目の前を黒猫が横切り、靴紐が千切れた。横断歩道を渡ろうとすれば青信号であるにも拘らず車が高速で横切り、電柱からなにやら円柱型の名前のわからない大きな物が落下。後は家の周りに大量の鴉がたかっていた。

 嫌な予感がするなー、なんてのほほんと考えていたら鍵が折れて鍵穴に詰まり四苦八苦。そして開けようとした玄関の鍵は開いていて、扉を開けて一安心しようとした瞬間。周りに見覚えのない空間が広がっていました。


「……、」

 目の前に玉座に座る威厳のある男の人、髪は――紺? ええ、紺です。現実には存在しないはずの、限りなく黒に近い紺です。こんなわけの解んない状況に陥った場合はまず、状況を正確に認識しないといけないはずだけど…、


 この人から目線を外せば間違いなく死ぬ!

 本能がそう言ってる! 幾らなんでも死にたくはないのさ!


 と言うことでこの人をしっかりと観察してみる。

 玉座に座っている時点でこの人は王様。更にこの威圧感とその黒衣のマント、そして脇にちらりと見える付き人っぽい人から察するに…。


「魔王様?」

 あ、しまった。思うだけだったつもりが口に出ちゃった。まあいいか。

 魔王様(仮)はさっきの私の言葉に微かに頬を引きつらせた。玉座で頬付いている格好のまま、あちらも私を凝視している。まあ珍しいかもしれない。これ、多分RPGみたいな設定じゃない? それなら私の格好は珍しいはずだ。

 と言うよりも何時の間にか私の中で此処は異世界設定が確立していた。

(まあ、そうだよね。玄関開けたら空間が別のものになったんだから。)

 正直、今のは自分でも何を思っているのか解らなかった。でも、敷居を跨いだ直後だったから玄関自体なくなっているみたいだ。

 景色が変わったことを認識した直後に思わずしゃがみ込んだものだから少々、足が疲れてきた。じっと待つことが苦手な私だ。このダメージは当たり前だろう。


 魔王様(仮)はまだ私を見ている。その瞳は真っ赤。獣目と言うのか猫目と言うのか。鋭く何処か怖いけれど、綺麗な目をしている。紺色の髪の毛は肩に掛かるか掛からないか迷う程度の短髪。

(マントって、前開いてないと手が出ないから…)


「鬱陶しくないのかな…?」


 あ、また。てか睨まれた。

 いや、それよりもこの状況どうしよう。魔王様(仮)はずっとこっち見てるし、私は頭の中軽くパニック起こしてるみたいだし…。


 よし! 状況を推測してみよう!

 玄関を開けたら魔界でした? 多分そう。ファ○マ入ったら魔界でした。みたいだね。

 ん~…いきなりだったし、召喚魔法と言うよりも空間連結魔法系かな? 人が入ったらこっち来るってアレ。もしかしてこのとっても広いと王座の近くでもわかる此処には魔方陣があったりして…。


 そんな事を悶々と悩んでいるうちに私は考えることに飽きた。そもそも、この魔王様(仮)が見ているのがいけない。せめて何か言ってくれ。

 そうして、我慢の足らない私は意を決して魔王様(仮)に話しかけようとした時だった。


「失礼します!」

 開けたと同時に叫んだようなタイミングで脇辺りから慌てたように扉を開ける音と、叫ぶ声が聞こえた。それにようやく魔王様(仮)が視線を逸らす。

 視線を逸らした事で自由になった私もその方向へと顔を動かす。

 大きな扉を叩きつけるように開いたそれは、正しくゴーレムだった。岩の身体に大きな体躯、顔らしきものはあるが歪な形をしていた。身体の形自体はマッチョだったが大工道具で簡単に壊せてしまいそうな感じがした。

 どうやら此処は神殿のような場所らしい。唯、何だろう…この広さは…。

 うちの学校のグラウンドも狭い方だが、それの三倍ぐらいあるこの場所は一体なんだろう。この世界が広いのか此処が異様に広いのか。魔王様(仮)のほかにも何人かよく解らない人がいる。


「勇者一行がこの城に…! 今はライネール様たちが抑えています! ですが…!」

 どうやら緊急事態らしい。

(私はどうすべきかなー?)

 此処が何処かわからないし、みんな知らない人だし、下手に動くと魔王様(仮)が…。

 ちらりと魔王様(仮)の方向を見る。いや、見たつもりだった。その時、視界全体を覆ったのは人の皮膚っぽいものだった。


「エルガ、先に行って応戦しろ。その他の者はエルガの指示の元、勇者を押さえていろ。倒しても構わん。」


 今はっきりと見た付き人のような人はエルガと言うらしい。クロヒョウの獣人だ。中々格好いい。というか、今初めて魔王様(仮)の声を聞いた。

 エルガさんは魔王様(仮)の命の下、一礼すると直ぐに扉から駆けて行った。この神殿のような場所に居た他のよく解らない人たちも、エルガさんの後を追う。


 因みに、私はと言うと。捕まってます。てへ☆ 

 さっきのはどうやら魔王様(仮)の手だったらしい。と言うよりこの場所が異様に広いんじゃなくて、私が小さかったらしい。魔王様(仮)の手は白く、黒い爪はとても長い。そして私を握りつぶさないように慎重に持っているらしく、しがみ付かないと落っこちてしまいそうだった。


「…さて、」

 魔王様(仮)がこちらを見る。とても大きく、偉大に見えるが此処まで近いと大きいという感想しか持たない。

(…魔王様、八重歯がある。結構鋭いなー。と言うか魔王が美形なのは定石なのかな。)

 下らない事を考えているのがわかったらしく魔王様は顔をしかめている。そして少し手の力を強くする。

「口を閉じろ。間抜けだ。」

「ご親切にどうも。」

 反射的に出た言葉だったが、どうやら魔王様的には問題なかったらしい。目つきを鋭くするとより一層手に力を込める。


「状況はある程度わかると思うが、此処は魔界だ。お前には勇者退治を手伝ってもらいたい。」


 …あーなんか納得。うん…

「詳しくは歩きながらでいいから、とりあえず手の力緩めて、潰れて死んじゃう。」

 流石にそれは不味いと思ったらしい。魔王様は直ぐに力を弱めてくれた。魔王様はさっきから勇者一行が気になるらしく扉の方がチラチラ見ていた。だからか、【歩きながら】と言う言葉に疑問を持たず、既に扉に向かっている。

「肩に乗っていい?」

 どうやら了解したようで直ぐに肩に乗せてくれた。案外、魔王様の肩の上は乗り心地が良かった。座って魔王様の髪を掴む。


「で、何で勇者退治を私に頼むの? その格好じゃ貴方は魔王じゃないか?」

 魔王様は肩に乗っている私を気にかけているのか、首を振ろうとするのを堪えた。

「いや、魔王ではあるが…。今は魔力がない。」


 …魔王様は魔力がない。


 それってどゆこと?




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