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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第30話 謎のひな

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(一)このままでは危ない

◆ 道端のひな


うちの人間と道を歩いていた。


シジミは低い塀の上。


うちの人間は、その横の道である。


少し先で、うちの人間が急に足を止めた。


「えっ」


道の端を見ている。


そこには、小さな鳥がいた。


ひなである。


体には羽毛が生えている。


だが、まだ完全にはそろっていない。


翼にも、ところどころ頼りない部分がある。


目は開いている。


脚で立つこともできる。


しかし、飛べる状態ではなさそうだった。


ひなは地面へ体を低くし、うちの人間を見上げている。


「鳥の赤ちゃん……?」


そうである。


少なくとも、大人の鳥ではない。


うちの人間は栗色の髪を耳へかけ、ひなの前へしゃがんだ。


ひなは少しだけ後ろへ下がった。


歩くことはできるらしい。


だが、動きは遅い。


これでは猫やカラスに見つかれば、逃げるのは難しい。


シジミは塀の上から周囲を見た。


近くには何本か木がある。


低い木。


枝の多い木。


葉が茂っている木。


家の屋根もある。


だが、見える範囲に巣はなかった。


◆ 巣から落ちた


ひなの羽がまだ生えそろっていないなら、自分から巣立ったとは考えにくい。


何かの拍子に巣から落ちたのだろう。


風で巣が揺れた。


兄弟に押された。


親が戻った際に体を乗り出しすぎた。


外敵に驚いて動いた。


理由はいくつも考えられる。


巣の真下に落ちたとも限らない。


落ちる途中で枝へ当たった可能性もある。


枝の上を転がった。


斜めに落ちた。


地面へ降りたあと、自分で歩いた。


目が開いていて、脚も動く。


少しずつ移動したのかもしれない。


だから、今いる場所の真上だけを見ても、巣が見つかるとは限らない。


◆ 巣は見えない


うちの人間は立ち上がり、近くの木を見上げた。


「あそこから落ちたのかな」


分からない。


別の木かもしれない。


屋根の隙間かもしれない。


葉の奥に巣が隠れている可能性もある。


鳥の巣は、人間から見つかるために作られているわけではない。


むしろ、見つからないほうがよい。


外敵から見えない。


雨が直接入りにくい。


上空からも地上からも位置が分かりにくい。


そのような場所へ作る。


うちの人間が少し木の周囲を歩いた。


枝の間をのぞく。


幹の裏を見る。


屋根の端を見上げる。


「巣、ないなあ」


見つけられないことと、存在しないことは違う。


人間は自分の目に入らないものを、すぐにないことにする。


物を棚の奥へ入れれば、片づいた。


布の下へ押し込めば、消えた。


鳥の親が見えなければ、いない。


ずいぶん自分の視界を信頼している。


この状況で重要なのは、巣の位置だけではない。


親鳥が近くにいる可能性である。


◆ 親が見えない


親は、ひなが落ちたことに気づいているかもしれない。


食事を運んできた。


巣にいない。


声を探す。


地面にいるひなを見つける。


だが、その近くに大きな人間と猫がいる。


それでは近づけない。


鳥によっては、巣の周囲で激しく威嚇する。


カラスのように鳴く。


頭上を飛ぶ。


追い払おうとする。


しかし、すべての鳥がそうするわけではない。


声を出せば、自分やひなの位置を知らせることになる。


だから姿を隠す。


少し離れた枝。


葉の奥。


屋根の陰。


人間から見えない位置で、じっと様子を見る。


危険が去るまで待つ。


そのような親もいる。


今、親の声が聞こえないからといって、いないとは限らない。


むしろ、うちの人間とシジミがいるから黙っている可能性がある。


シジミは耳を動かした。


少し離れた茂みから、小さな音がする。


羽が葉へ触れたような音。


だが、姿は見えない。


風かもしれない。


親鳥かもしれない。


確定はできない。


分からないなら、分からないまま可能性を残すべきである。


◆ このままでは危ない


うちの人間は、もう一度ひなの前へしゃがんだ。


「このままじゃ危ないよね」


それは正しい。


道の端にいる。


人間の足が通る。


犬も通る。


猫も通る。


車が近くを走る可能性もある。


ひなをそのままにしておくのは、たしかに危険である。


だが、危険だから家へ連れていく、とはならない。


どこへ移すかが重要だ。


親鳥が見つけられる範囲。


親が近づける場所。


地面から少し高い位置。


猫や犬が簡単には届かない位置。


上からカラスに見つかりにくい位置。


葉や枝に隠れ、横からも見えにくい位置。


そのような場所へ、一時的に置くのがよい。


元の巣が見つからないなら、仮の巣を作る方法もある。


少なくとも、家へ連れて帰り、人間の生活圏へ閉じ込めるよりは親へ戻れる可能性が高い。



※第30話「謎のひな」は全四回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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