第19話 君は―――
―――ヒラ……
一枚のカードが、台座の上に乗った銀髪の少年の前へと舞い落ちる。
泉に水を注ぐ女性の頭上に満天の星空が広がる絵に『ⅩⅦ』の数字が印されたカード―――『星の宮殿』の『ダンジョン・コア』を、少年は掴み取り―――
『新規ID名―――『ダブル・バニッシュメント』
登録完了しました』
無機質な『声』が、静かに響くのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
《『星の宮殿』 前 》
そんな訳で、想定外の事態に遭遇しながらも、どうにか『星の宮殿』の攻略を完了したリィドとステラフィアであったのだが……
「………おい」
腕組みをしたステラフィアから不機嫌そうな声があがる。
その理由は―――
「貴様……いつまでそうしてリィドにベタベタしているつもりだ……?」
「別にー?
ボク、『魔力憔悴』で動けないだけだもーん」
リィドの背におぶさった状態のマリティアが、わざとらしい声を出す。
「大体さー、ボクもう殆ど魔力がすっからかんの状態だったのに、2人の怪我を治す為に『回復魔法』までかけてあげたんだよ?
感謝してよねー」
「なんで貴様に付けられた傷を貴様が治したことに感謝せねばならんのだ……!」
ぎぎぎ……と歯軋りをするステラフィアに対してマリティアは実にのほほんとしており―――当のリィドは「あはは……」と気まずそうに愛想笑いをするしか出来なかった。
なお、当初はステラフィアの背に乗せるという案もあったのだが、実行した瞬間ステラフィアが生まれたての小鹿の如く震えだし、あえなく断念となった。
「『膂力5』だもんなぁ……」というリィドの呟きが切なく響き渡っていた。
「あれ?
でも、確かマリティアさんって『自動魔力回復』の『スキル』を持ってたんじゃなかったでしたっけ?
これだけの時間が経ってれば、もう歩くことぐらいは出来るんじゃないですか?」
「………………ちっ」
リィドからの指摘にマリティアは舌打ちをし、ステラフィアの怒気を帯びた眼光がより強さを増すのだった……
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「それじゃ、ボクはフィリオンの所に戻るよ。
リィド、ステラフィアさん―――またね」
そう告げたマリティアは―――
「《ジャンピング・ホーム》」
―――ヒュンッ……
帰還用の『空間跳躍魔法』により、実にあっさりと2人の前から去り―――まるで嵐が過ぎ去った後のような静寂が、その場を満たした。
「『またね』って言ってたぞ……
アイツ、お前を追放したパーティの一員って自覚はあるのか……?」
「ステラ……もう分かったでしょ……?
あの人に常識や倫理観を求めるだけ無駄だよ……」
どっと疲れが押し寄せた2人は、「はぁ……」と心の底から深い溜息をつくのだった……
そして―――
「……なあ、リィド……本当に良かったのか……?」
「え?」
ステラフィアは、おもむろにリィドへ疑問を投げかけた。
「『勇者パーティ』―――色々と思うところはあれど、その『力』は本物だ。
先の戦いでそれは嫌という程に理解した。
お前の助けを借りなければ碌に戦うことも出来ない、不安定な私の『力』とは違う」
『勇者パーティ』の【魔導士】マリティア=エリミネイト。
その実力を目の当たりにしたことにより生まれた『不安』の感情を乗せた言葉が、彼女の口から次々に漏れ出る。
「奴らと共に居た方がお前の目的も―――」
「ステラ」
そんな言葉を―――
「もう一度言うよ」
リィドは―――
「僕は―――『ダブル・バニッシュメント』のリィド=アリアードだ」
「―――――」
一言で、断ち切った。
そして―――
「ねえ―――君は?」
ステラフィアの目を見つめ、問う。
「………………」
少しの静寂の後―――その女魔族は答えた。
「『ダブル・バニッシュメント』の―――ステラフィアだ」
その言葉に―――リィドはニコリと笑うのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そうして―――
「ま、そんな訳で―――
これからも、どうかよろしくね!
ステラ!」
「―――フンっ!
そんなこと、いちいち口にするな!」
『2人の追放者』は、再び歩き出すのだった。
戦いを終え、2人の旅は続く―――
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『勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~』
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