表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/65

提案

 イスタラとの蜜月は瞬時に過ぎ去った。イスタラはイスタラであって、伯母ラアニでは無かった。言いなりに弄られても不満を抱くことは無い代わり、パージェを虐げようとすることも無かった。いわば、非常に良く出来た、外見だけの愛玩人形であった。


「どうして!」


 苛ついてパージェはイスタラを平手で打った。


「どうして君は、僕を虐めようとしないのさ! 伯母様ならこんなに従順じゃない、伯母様ならきっともっと……!」


「マイロード、私は、マイロードの伯母様には成れません」


「成れよ!」


 パージェは何度も平手を打った。そして、イスタラをぎゅっと抱きしめて泣いた。


「……成ってよ……僕は、僕はやっと伯母様に再会できたと思ったんだ……十年以上待ったんだ……僕を愛してくれる伯母様に会いたくて……」


 イスタラは沈黙した。そしてパージェの体に手を回し、抱きしめ返した。


「私がキャラバンに居た頃、死者をも蘇らせるという凄腕の精霊学者の噂を耳にしました。マイロードの願いを叶えられる可能性があります。その学者を探ってみては如何でしょうか」



 メルクリア・バル・リウー博士。


 狂気に落ちることと引き換えに、超越した技術力を手にしたとされる精霊学者だ。



「伯父様の命で呼びつけられるかな」


 ウェブル伯は辺境伯だ。そう位の低い貴族ではない。


 だが学者が狂っていて、正気でないとしたら、会話など成り立つものだろうか。


「……やるだけは、やってみよう。伯父様に進言してみるよ。僕の願いならそこそこは聞いてもらえると思うからね」


 情報さんきゅ。パージェはイスタラに軽く口づけた。



 イスタラを手に入れてから、パージェの戦績はうなぎのぼりだった。


 辺境伯とは、文字通り国境警備を任された、危険を伴う階位である。故に、通常の伯爵位より高位の扱いを受けていた。


 辺境を実戦で守るのは、騎士であるパージェ達の仕事だ。並みいる国境警備騎士の中にあって、パージェは異色の騎士であった。イスタラを影に忍ばせて共に活動するようになってからは、更にその傾向は強くなった。


 暗殺専用騎士。


 騎士道が目を剥いて怒り出しそうな作戦を、幾らでもこなした。敵軍(隣国から進軍してきた兵士たち)を翻弄し、そのリーダーを見つけ出しては誰にも悟らせずに殺した。


 司令塔たる人物を見つけ出し、様々な方法で暗殺する。それがパージェの得意とするやり方だった。異議や批判もある程度は飛んでいたが、パージェが辺境伯の甥であり、跡取りであるという事実が、正面から楯突くことを阻んでいた。


 実際、司令塔やリーダーを失った兵士は統率を失って戦力にならなくなった。


 多くを殺すより、騎士らしいじゃないか。パージェはそう言って批判を一笑に付した。


 戦績をあげ続け、伯父の期待を背負い始めた頃、パージェは切り出した。



「伯父様。狂気の学者、メルクリア・バル・リウーを、この城に招待しては貰えないかい?」


 ――と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ