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7 登校の経験は数あれど、投稿するのは初めてです。

『ただ、なろう小説っぽくはない気がする』


 このメッセージを受け取った後、私はすぐさま友人に連絡を取る。

 それも、普段行っているメセージのやり取りではなく、電話越しで『これはどういう意味か』と、根掘り葉掘り聞き取りを行った。

 のちに、『あの時は鬼刑事から取調べを受ける犯人の気分だったよ、ははっ』と、友人が言ったかどうかは定かではないが、入念な聞き取りの結果、判明した友人の言い分は、つまりこうであった。

 私の小説は、表現や文体が一般的な小説よりすぎて堅い、と。


 自分の小説を見直してみる。

 確かに私の表現や文体は、私が読み慣れた一般小説――という表現が適切か否かはここでは議論しないこととする――のそれであった。


 私自身はこれを堅いと思わないのだが、友人の書いた小説と見比べてみると違いは一目瞭然であった。

 友人の小説は、一文が短く、キャラクターのセリフが多めだ。

 おそらくキャラクターを描写することに重点を置いているのだろう。


 対して私の小説はその真逆。一文がわりと長めで、キャラクターのセリフは少ない。

 キャラクターではなく、場面を細やかに描写することに重点を置いている、つもりである。


 なろう小説と一般小説の違いというか、どちらの文体が良いかは読者各々の好みと判断に任せることにするが、私が今から投稿しようとしているのは『なろう小説』である。

 間違いなく友人の文体の方を好む読者が多いはすだ。

 そして、友人が感じたように私の小説を『堅い』と感じてしまう読者も多いことだろう。


 なんということであろうか。

 ここにきて、なろう小説をあまり読んだことのない人間が、無謀にもなろう小説を書こうと挑戦してしまったことのツケが回ってきていた。


 『また書き直し?』という言葉が頭をよぎる。

 確かに今回は前回の場合と違い、主に地の文だけの修正で済むだろうから、そこまで時間はかからないかもしれない。

 しかし、である。

 まだ、私は『なろう小説っぽい』文体というものが、いまいちわかっていないのだ。

 こんな状態で執筆しても、なろう小説よりでもなく、かといって一般小説よりでもない文体の、中途半端なものしか出来上がらないのではないだろうか。

 ならば、暫く勉強のために時間をおくか? いや、いっそこのまま投稿してみるか? そもそも、何故一般小説よりの文体はダメなんだ?

 と、様々な思考が巡っては消える。思考回路はショート寸前であった。

 しかし、私はふとあることに思い至る。


 案外、一般小説の文体で書かれたなろう小説も悪くないのではないか――?


 突然だが、需要と供給の話をする。

 オタク業界では、ある物事がヒットすれば、それに類似したものが量産されがちである。


 たとえば、ある作品のツンデレキャラが大人気を博したとする。

 ならば、多数の他作品でもツンデレキャラが登場する。


 たとえば、異世界転生を題材とした作品がヒットしたとする。

 ならば、同じ異世界転生を題材とした作品が大量に作られるのだ。


 私はそれが悪いことだとは思わない。

 何故なら、需要があるからこその供給なのだから。

 しかし、それも時間が経過し、需要に対して供給が多くなりすぎれば供給過多となり、その流行りは廃れていく。

 諸行無常である。


 本題に戻る。

 なろう小説の文体で書かれたなろう小説。おそらくこういった作品は大量に存在するであろう。

 もしかしたら今現在公開されている小説の殆どがそうであるかもしれない。


 仮にそうであるとして、そろそろ供給過多の時期が来てもおかしくないのではないだろうか。

 いや、ともすればその時期は既に到来しているのかもしれない。

 ならば、私の小説の、一般小説よりの文体で書かれているという事実は、一つの『売り』になりはしないだろうか。

 そうでなくとも、他とは違う私の小説の『個性』として捉えられ、一定の存在感を示せるかもしれない。


 もちろん、私の考えが全くの的外れで、なろう小説の読者には一切受け入れられない可能性もある、諸刃の剣であることも承知している。

 しかし、一般小説の文体で、なろう小説的展開を書く。

 言わば、一般小説となろう小説との融合である。

 いいのではないだろうか。少なくとも私は乗り気になってしまっていた。


 そして、得てしてこういう時に天啓はひらめくもので、私は先延ばしにしていた例のタイトルについても妙案を思いついてしまった。

 つまりは、ここでも一般小説となろう小説との融合だ。

 以前のタイトル『ヒストミリタ戦記』を変える必要はなかった。ここに追加してやればいいのである。


 『ヒストミリタ戦記 ―聖痕の力を宿した俺がハーレム騎士団と共に動乱の時代を駆け抜ける話―』


 これであれば、戦記ものとして真面目な雰囲気を残しつつ、なろう小説的な展開を読者に期待させ、興味を引くことができるのではないだろうか。

 うん、これがいい。これしかない。私の小説のタイトルはこれに決定することにした。


 はて、ということは、だ。

 第1話の内容はこのまま行くことに決めた。課題として残っていたタイトルも決まった。

 残っている課題はもはや何もなく、あとは投稿を行うのみである。


 ついに、ついに初めて書き上げた小説をネット上に、全世界に向けて公開する日が来てしまったのだ。

 そう思うと、何故だか急に緊張してきた。

 私は何度も見返したというのに、第1話の内容を再度読み直し、不備がないことを確認する。


 そして、問題がないことを確認した私は意を決し、ついに人生初めての『投稿』を行うのであった。

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