5-14 保護せよ
ゴロゴロは急ぐ。手遅れになる前に、稲田の子らを、社へ。
「雲井神。ゴロゴロ、一生の願いです。稲田の子、ツウとコウ。社で、匿って下さい。」
「なぜ。」
「お気づきですよね。ツウには、天つ神の力が。」
「うぅぅぅん。まぁ、そうだなぁ。」
「もし、何かあれば。」
どうなるか、お分かりですよね。吹っ飛びますよ。国つ神の社なんて。
「フク。稲田の子、ツウとコウ。急ぎ、社へ。」
猫股ゴロゴロ、転がるように飛び込んできた。
「はい?」
「はい? ではない。今すぐ、行け。」
猫の大鳴き、祝を動かす。
「たっ、ただいま。ツルゥゥゥ。」
「御告げだ。稲田の子、ツウとコウ。今すぐ、雲井社へ。さあ、さあ。急いで。」
息を切らせて、社の司が。
「ツウ、コウ。着いて早々、ごめんさない。私たちと共に、社へ。」
同じく。息を切らせて、祝が。
良く分からない。けれど、ここにいるより良い。ツウとコウは見合い、頷いた。
「はい。雲井社へ、行きます。」
「良かったわねぇ、二人とも。」
信じられない。何なの、アレ。あの子たち、選ばれたの? 私がココに来た時、あんなじゃなかった。
決ぃめたっ。あの男の子、私のモノにする。ウフフ。
「また、会いましょう。」
渡さないわよ、セイ。あの男の子、私のモノよ。骨抜きにして、ドロドロに溶かすんだから。ウフフ。
狐と狸の化かし合い。いや、狐や狸に失礼か。にしても、セイ十一歳、ヒサ十歳。末恐ろしい。
雲井社、大騒ぎ。あのゴロゴロが、転がるように駆けたのだ。九尾の狐、コン。大烏、キラ。見合って、焦る。天変地異の前触れか?!
「フゥ。間に合った。」
ベタァァ。猫股、俯けで、伸びる。
「良うございました。で、ゴロゴロさま。」
「ん?」
「稲田の子ら。これから、どうなるんでしょう。」
「乱雲山で暮らす。幸せに、な。」
雲井神、深くお考え為さる。ゴロゴロの一生の願いとは、幾度かと。




