5-13 稲田の子
子の家は、大きい。子らは十二になると、試み村へ行く。そこで生きる道を選ぶ。
乱雲山には、三つの村がある。田んぼの多い、幸田の村。畑の多い、切雲の村。狩りと釣りが盛んな、矢光の村。
子の家では、一人で生きて行けるように、いろいろなことを学ぶ。すでに知っている子や、強い力を持つ子は、社の子として、働くこともある。
見込みのある子は、長が許せば、村の子として生きられる。
「八つからは、女の子と男の子。別の家で寝起きします。だから、そろそろ離れましょうね。」
・・・・・・離れたく、ない。
ツウもコウも、稲田の村を出てからずっと、離れなかった。何もない。清いままだ。
コウはツウを、ツウはコウを、大いに慈しんでいる。大人になるまで、そういうことはしない。
しかし、子の家には、多くの子がいる。ツウとコウだけ、というわけには。分かっている。それでも、願ってしまう。離れたくない、と。
「二度と会えなくなるわけでは、ないのよ。朝餉と夕餉の時、会えるわ。割り当てられた事が済めば、好きにして良いの。あなたたちが思っているより、ずっと、共に過ごせる。だから、ね。」
・・・・・・。
「ほら、御覧なさい。右が女の子、左が男の子。真ん中にあるのが、みんなで過ごす家。寝起きする家が、違うだけ。」
・・・・・・。
「あの、ね。思い悩むことは、ないの。」
「会えますか。嘘ではありませんか。」
コウもツウも、手を繋いだまま。真っすぐ、サエの目を見ている。
「嘘ではありません。雲井の神に誓って。」
ツウとコウは見合って、考えた。嘘ではなさそうだ。けれど、どうも気になる。刺すように見る、二人の娘。
コウは思った。あの目、早稲のタツに似ている。決して逃さない、そんな目。
ツウは思った。あの二人、怖い。三鶴の長も、同じような目をしていた。見下して、弄ぼうとしている。そうとしか思えない。
「もし、ツウに何かあったら。誰に、何を言われても、釜戸山に戻ります。祝に願い出て、他の村へ行きます。」
「もし、コウに何かあったら。乱雲山の麓にあった、洞に入ります。嘘ではありません。」
驚いた。この子たちの絆、強いわ。それに、眩しい。でも、決まりは決まり。夜は、離さなければ。
とはいえ、セイとヒサ。何かするでしょうね、ツウに。もし、何があれば。この子たち。迷いなく、動くでしょう。




