その子のこと。
両親は、強い人たちだ。
質実共に、そりゃもう、ナニコレ怪物なの? と思える。
腕っ節も強ければ、その体を支える心も鍛えに鍛えた鋼のよう。
強く、厳しく。
それでいて私は宝のように大事にされた。
普通よりも早く、とても小さく生まれた私は、そのせいか右側の手足が上手く動かせなかった。
小さな内からあちこち転げ回って、泥んこになって遊んでいるうちに、だんだんと手足を動かすことに苦を感じなくなった。
騎士たちのように、とまではいかないが、普通に暮らすぶんにはなんの障りもない。
それは、育ててくれた両親のおかげに他ならない。
私を生んでくれた母は、儚い人だった。
私を生んですぐに。
それよりも前から。
私をその腹の中で大きくする、それに力を使い果した。
なんとか生まれたことに安堵して、それからいく日もない内に息を引き取ったらしい。
生んでくれた母は、若くして亡くなった。
不運なことはたくさんあっただろう。
それでも幸せだったのではないかと思う。
私がそう思えるのだから、そうだと思う。
そうだと嬉しい。
母は戴名をすることを拒んだと聞いた。
世の理に倣いたいと言ったらしい。
母の考えは私にもよくわかった。
王に仕え、民の為に働くことは立派だし、誇り高いことだとは思う。
ただしそれが出来るのは、両親のように身体も心も、ウソだろお化けなの? ってほど強くないと難しい。
荷が重いと考えて、私も戴名はしなかった。
今では父や母よりも年上の見た目になっている。
それでもいつまでも子ども扱いされるのは変わらない。
会えばどこかしら撫でられ、抱きしめられる。
ひとり立ちできる年になると、城都に下りて町で暮らした。
騎士ではなく、自分に出来ることで身を立てた。
私と同じように親を亡くした子どもたちに。私と同じように、血は繋がらずとも家族になれると教えてもらったことを、知ってもらうために。
子どもたちが不運な生い立ちを嘆くことがないよう、幸せだと思える手伝いがしたかった。
周りにいたのは私財を持て余している人たちなので、恥ずかし気もなく、遠慮もせずに援助を受けた。
ことが上手く回り始めると、国からも手は差し伸べられる。
陛下は、会うたびにお小遣いをくれる親戚のおじさんだとでも思え、と笑って気前よく土地や建物を与えて下さった。
今では同じような施設が国中にいくつもある。
私もそれなりに忙しくしている。
頻繁に会うこともなくなったが、いつ会っても両親は変わらない。
見た目だけではなく、心の内側も。
もちろん、仲睦まじさも。
私も人並みに妻を得て子を授かったが、両親の基準がああだからか、少し世間からずれているのかもしれない。
よくウザがられてはいるけど、それはそれとして楽しく過ごしている。
母はよく、後から考えてみて『良かった』と思えたなら、それが全てだと言っていた。
私も全くその通りだと思う。
辛くてしんどかろうが大概が『良かった』と思えるのだから、私はとても、とても幸せだ。
生んでくれた母と。
育ててくれた父と母の子どもでいること。
家族であることが、私の最も誇れることだ。
このお話はこれにて終了でございます。
ここまでお付き合い頂きまして、本当にありがとうございます。
ブクマやポイントは大変な励みと推進力になりました。
また懲りずに番外編が出て参りますから、どうぞその時もよろしくして下さいますよう。
お願いを申し上げます。
ありがとうございました!!
※脳内でばかりいちゃいちゃしてしまい、結局は出し切れませんでしたことを反省しております……。てへへ。本筋から大きく外れるのでいちゃいちゃシーンは割愛しました。
次は頑張ります!!
それに伴いまして、ちょっぴり大げさなタグも少し変更します。




