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蹴師(けりし)  作者: 福島崇史
52/55

トリックスター

「オメェ…ソレ…ジークンドー…ジャロ?」


アベルの指摘に蹴速が頭を掻きながら言う。


「へへへ…もうバレちまったかよ」


「ミギキキ ノ オメェガ ミギテ ヲ マエニ カマエタ…サラニ ボウギョ ト コウゲキ ガ イッタイカ シタ ギジュツタイケイ…トナリャ オノズト コタエ ハ デルワイナ」


「フンッ!とりあえずは流石と褒めとくよアベル。でもよ…お前は1つ勘違いをしてるぜ」


「カンチガイ…?」


「ああ…そう…勘違いさ。俺の流派である当麻流蹴体術はよぅ…歴代の継承者が、あらゆる格闘技術を体系に組み込んで作り上げて来たもんだ。確かに今のはジークンドーの技術だよ…でもコレさえも数十年前に先々代、つまり俺の爺ちゃんが取り入れた物。だからコレはもう〝当麻流〟の技術なんだよ…解んだろ?この理屈」


これに今度はアベルが頭を掻く。


「ナルホド…コリャ シツレイ ツカマツッタ

ナラバ ソノ タイマリュウ トヤラ トクト ハイケン サセテモラウ デ ゴザル デ ツカマツル」


「………おい…無理くり難しい言葉使うなや…日本語が変になってんぞ…」


蹴速が呆れ顔で返した時、アベルは既に構えてステップを踏んでいた。

慌てて蹴速も再び構える。

構えは先と同じ、右手右足が前の半身である。

それを見て又もアベルが先に動いた!

軽快なステップから一気に飛び込んでのジャブ!

スピードはジャブだが、全体重の乗ったソレはもはやストレートと呼べた。

一瞬反応が遅れてしまった蹴速、今回は捌きからの反撃が出来ずにダッキングでかわす事に。

これにより間合いが詰まった両者…

手を出せば当たるヒリついた距離に、観ている高柳と駿河の喉が〝ゴクリ〟と鳴った。


パンチをかわした蹴速が頭の位置を戻すと、そこには舌を出して嗤うアベルの顔が…

思わず手を出したくなるのをグッと堪える。

すると今まで目の前にあったアベルの顔がふいに消えた…


〝!?〟


反射的に頭部のガードを固めた蹴速。

しかしそれを嘲笑うかの様に、アベルの脚部は地を這っていた!

それを見た高柳が思わず声を漏らす。


「あ、あれは前掃腿(ぜんそうたい)やんけっ!?」


「前掃腿?」


駿河のおうむ返しに頷く高柳。


「中国武術で使われる、身を屈めての下段蹴り…いや…下段足払いって言うた方がシックリくるか…」


「ほぉ~ん…しかしお前は何でもよ~知っとるのぅ……格闘技の事だけは♪」


「なんやトゲのある言い方やのぅ…」


いつも通り〝関西弁同士の絡み〟が始まった時、レフリーを務めている爺さんが大きく気を吐いた。


「蹴速!マイナス5ポイントじゃっ!!」


〝イチャつき〟を止めた関西弁の2人がリングに目を戻すと、蹴速の脛部分に赤いインクが付着していた。

この闘いは減点システムで行われている。

頭部や心臓、動脈等の急所にインクを付けられればマイナス10ポイント。

その他の部分ならマイナス5ポイント。

相手の攻撃をガードしてインクが付着してもマイナス3ポイントである。

今の攻防、蹴速は蹴りをガードしたのでは無く、脛にクリーンヒットされたのだ。

よってマイナス5ポイントの判定が下された。


「蹴速…お前…」


心配そうにか細い声で呟いた高柳…

それが届いたのか届いていないのか、当の蹴速が苦笑いしながら言う。


「ったく!トリッキーでやりにくい奴っちゃなぁ~!!ま、お陰で目が覚めたぜ…続きを楽しもうや…アベルちゃんよぅ♪」


「ソウヤナ…デモ ツギ ハ ココ ヲ モラウゾィ♪」


そう答えたアベルは、舌を出しながら自分の首筋をかっ切る仕草をして見せた。







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