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蹴師(けりし)  作者: 福島崇史
34/55

プシラットだから…

あまりの衝撃に身体をくの字に折った高柳。

下がった視界に映ったのは、自らを貫く槍の如きギガントの脚であった。

ギガントは先のハイキックを捨て技とし、高柳がダッキングでかわすのを見越した上で腹部への後ろ廻し蹴りへと繋いだのだ。


「コオォォ~~ッッ…!!!」


太い息の束と共にマウスピースを吐き出した高柳…

(たたら)を踏みながらも、何とかダウンだけは免れている。が…

更なる追撃を仕掛けようと迫るギガントを見ると、ここで沈んでいた方が幸せだったのかもしれない…とすら思える。


〝くっ…!やっぱこの体格差は卑怯やでぇ…ただの木偶の坊やったら対処のしようもあるけど、コイツは…!!〟


弱気の蟲が全身を這いずる…

しかしそれでも気丈に構えを取る高柳。

そこへとどめを刺そうと、ギガントが上から覆い被さりに来た…狙いは首相撲からの膝蹴りである。

巣にかかり弱った獲物にも油断せず、動きを封じた上でキッチリとどめを刺す蜘蛛の様に…

しかし高柳とて黙ってヤラれるのを待ってはいない。

首筋を掴もうとするギガントの両手を外へと弾き、横へ逃げながら足底で膝裏を蹴る!

そしてギガントがバランスを崩した隙に、その背後へと回り込んだ!

本来ならここで背後から相手を引き摺り倒すなり、スリーパーを狙うなりするのが定石だが、ギガントの巨体がそれを許さなかった。


〝チッ!流石に崩せねぇかよ…普通の奴やったら膝の1つでも地面についてくれるんやけどなぁ…せやけどデカい奴には身体の末端を狙うんが定番や!先ずはその馬鹿デカい図体を支えとる足首や膝を攻める…隙があれば手首を掴んで関節技で制圧する…これっきゃ無い!〟


高柳が戦法を固めた時、背後に蹴速の声がぶつけられた。


「そうだ(にい)やん!それでええっ!シラットの利点、素早い動きとカウンターはドンドン使って行こ!ただしシラットで綺麗に勝とうなんて考えるなっ!!(にい)やんの知ってる格闘技術を総動員させろっ!!」


〝へ…なるほどね。始めにお前が言うた、シラットに拘るなってのはそういう意味やったんか…せやけどなぁそれは出来ん相談やで。

お前が当麻流を名乗って闘うんと一緒や…なんせ俺はシラット使い…プシラットやからなっ!!〟


僅かにバランスを崩しながらも、直ぐに体勢を整えてギガントが振り返った。

銀色に光る短髪の下の表情は見るからに不機嫌そうである。

そして面倒くさそうに首を振ると、あろう事か構えもせずに高柳へと近付いて行く…

まるで我が家のリビングを歩くかの様に無警戒で自然な動き…

しかし闘いの場という事を考えれば、それ以上に不自然で不気味であった。

一瞬、訝しむ目を向けた高柳だが、ここで怯む訳にはいかない…


〝ケッ!舐めくさっとんのぅコイツ!そうかぁ…そういう事なら誘いに乗ったろやんけっ!!〟


高柳が懐に飛び込み、ギガントの腹へと突きの連打を放った!

しかしギガントはニヤニヤしながら、ポリポリと頭を掻いて平然とそれを受ける。

まるで大人に全力でじゃれつく赤子の様な光景…

しかし受け続ける事にも飽きたのか、ついにそのグローブの様な掌を高柳の頭へ伸ばした!

そしてそのまま髪を掴む!!


「へっ!かかったなぁデケェの♪この時を待っとったでっ!!」


高柳はそう叫ぶと、自らの頭髪を掴むギガントの左手首をガッシリと握った。

今こそ反撃の時!

そう思った瞬間、飛んで来た蹴速の言葉は意外な物であった…


「アカン!(にい)やん!!今直ぐその手を離せっ!!」






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