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融けて
夏に、君を思い出す。
雲が流れていく。
目を離した一瞬。
見えなくなって消えてしまった。
雪が融けている。
陽が照り始めたら、
水になって空へと消える。
君を忘れていく。
すれ違った瞬間、
見えなくなって、
見えなくなったんだ。
人混みに呑まれて、君は消えていく。
思い出せないまま、日々は過ぎていく。
幻のようだ。目覚めたら消える。
そんな夢を、あの雲を眺めながら見てる。
快晴の空にもう君はいない。
夏の思い出は雪に埋もれて消える。
それでも季節は廻っていくから。
雪は融けていく。
水になって、空へ消えたら、また会おう。
いつか、君のことを思い出すから。
夏の日、君と過ごした記憶。
懐かしいあの声が、聞こえてくるような気がした。
いつか――
季節が廻ったら、またいつか。




