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独り言

 抱えきれないから吐き出した、ただの独り言。そういうことにしてる。

 大人に近づいて気付いたことがある。


 生きることはそんなに楽しくないし、

 正しい人なんてどこにもいないし、

 自分の考えが全てなわけでもないって。


 常に頭の中を回るのは、

 『将来』とか『正義』とか『愛』とか、

 そういうちっぽけなワードだけで、

 何一つ具体的なものなんかなくて、

 他の人が当然のように知っていることを、

 僕は知らなくて、知らないことにも、

 気付かないまま、ただ空想を繰り返してる。


 誰が好きで、何が嫌いで、

 正しくて、悪くて、

 弱くて、強くて、

 楽しくて、悲しくて、辛くて、

 心が耐え切れなくなって、はちきれそうになっても、

 この考えは胸に仕舞っておくしかなくて、

 誰かに理解してほしくても、どこか他人な僕たちは、

 頷いて笑ってあげて、それで全部解決したと思ってしまう。


 偏った目で物事を見て、

 足りない頭で誰かを想って、

 男は獣で、女は清楚。

 そう決めつけて

 そんなことないのに、

 矛盾を抱えて、独りで悩んで、

 愛の形もわからずに、

 縛ることも、縛られることも嫌で嫌でたまらなかった。


 安定した職に就いたって、

 幸せは誰も保証してくれないし、

 夢を追いかけ続けたって、

 叶うかは誰にも分からなくて、

 考えるのも面倒になって、

 頭が痛くなって、

 君のこと考えるけど、

 君が獣じゃないなんて事実はどこにもなくて、

 誰かが君を愛してると思うと、

 胸が痛くなって吐きそうになる。

 吐いた。

 吐いて全てに八つ当たりしたって、

 何も未来は変わらないし、

 僕は一歩も進んじゃいない。


 小学生になって、

 中学生になって、

 高校生になって、

 枠組みから抜け出したとして、

 僕の手元に何が残るんだろう?

 この苦悩はきっと、

 何の活力にだってなりはしない。

 人を恨んで、周りに失望して、

 将来に怯える僕の思いは、

 僕にしか分からないようでいて、

 本当は誰もが抱えてるありふれたものでしかなくて、

 それでも人が人を理解することは出来なくて、

 ちょっとだけ飛び出た棘がすれ違いざまにかすり傷を作っていく。


 傷は消えない。

 いつまでも残り続ける。

 大人になっても、子供を産んでも、

 いつだって人は誰かを傷つけるから。

 自分の事が大切で、心を抉るのが快感で、

 認めてほしいから他人を愛して利用する。

 そうやって生きている。


 たまにあふれ出てくる殺意も、嫉妬も、嘆きも、

 見てみないふりをして、

 誰の心もいらないように振舞えば

 傷つかないから。苦しまないから。

 勝手に踏み込んで、忘れて、飽きてを繰り返すたびに、

 心は擦り減ってく。何も感じなくなっていく。


 自分の価値を問い質して、

 意味のないことに気付いて、

 何を探していたかもわからなくなって、

 ルールに雁字搦めで息が詰まる。

 どこを見回したって正しいものなんてどこにもない。

 輝いて見えた人は本当は愚かで、

 描いていた未来はそんなに綺麗でもなかった。


 綺麗なものは美しいだろうか。

 輝いて見せるためにどれだけの犠牲と時間を費やして、

 心を殺してきたのだろう。そこまでして何が欲しかったのだろうか。

 汚いものは悪いだろうか。

 社会に汚くないものはあるのだろうか。

 皆の言う『不潔』は、自分の親を指さして言えるものなんだろうか。


 僕らは何も分からないままだ。

 僕らはいつだって僕らでしかない。

 『君』でもないし、『私』でもなくて、

 価値観も天秤もそれぞれが持っている定義の一つで、

 どれにしたって同じじゃないし、

 一緒にするのも馬鹿げてる。

 たとえ誰かと繋がったところで、

 きっと僕らは分かりあえないから。

 叫びだしたい衝動に駆られながら、

 満たしたい欲望を必死に仕舞い込んで、

 僕らは今日も独り呟く。

 悩んでるフリも、

 考えてる姿も、

 もう飽きたから。

 現実から目を背けて、

 描きたいように筆を動かす。


 それだけ。

 ただそれだけ。

 頭が痛いことばかり。

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