第52話 名前
理事長室に戻った俺たちはソファーに座る
イフリートとネイが並んで座り、俺とシェリルさんとアリスが前に座る。
お茶を持ってきたシェリルさんは自分の分と俺、アリスの前にお茶を置く。
もちろんネイとイフリートには用意されなかった。
「とにかくどうゆうことか聞きましょうか」
先程からシェリルさんは丁寧にしゃべっているが声のトーンはかなり低い。
かなり怒っているのがわかる。
「ほら、学園都市で私の相手になる者がいなかったでしょう。だから炎の魔人であるイフリートに稽古をつけてもらっていたの」
「そうよ、あたいはネイに頼まれたから稽古をつけてあげただけで」
ネイもイフリートも反省してないな。
ピキッ!
シェリルさんのカップにヒビが入った。
おい、ネイ、イフリート直ぐに謝れ。
マジで怖いぞ。
「でわ、なぜ第2武術武道館があんな状態になるのでしょうね?」
1度散歩がてら第2武術武道館を見たが立派な建物だったぞ。
第1武術武道館より少し小さいがそれでもあとから作られた第2武術武道館の方が耐久度は上だと聞いている。
「建築不備だったかもしれないわね」
「ありえません」
「もともと耐久度が低かったんじゃないの」
「ありえません」
「「……」」
シェリルさんの否定に黙る2人。
「はあ~、とにかくこの件は後日話しましょう。とりあえずネイ様の資産で第2武術武道館再建手配は済ませましたので、後でサインをお願いしますね」
「わかったわ」
ちょっと待ってくれ『ネイの資産』でて言ったよな。
もしかしてネイはお金持ちなのか?
考えていると
「ネイ様は世界で上から10番ぐらいの資産家なんですよ」
さらりととんでもないことを言ってくれるシェリルさん。
お金持っていて学園都市市長兼理事長で炎帝と呼ばれる戦闘力。家事スキルも30年前と比べもにならないぐらいのレベル……どんだけ完璧超人なんだこのダークハイエルフは!
ちなみに俺の今の全財産金貨3枚と銀貨5枚なんだが。
ほんと立派になったな……
「イフリートさんもよろしいですね」
「え~めんどくさいな」
「めんどくさいじゃない!わかりました。俺が責任を持って連れてきますので」
イフリートの不手際は俺の責任だ。
だが俺の全財産でどうにか出来るわけないよな。
持っている貴重品や魔道具などを売るか?
それとも……
どうしようか考えていると
「ネイ様、富士での一件を報告させていただきます」
「ええ、お願い」
シェリルさんは富士での出来事を報告する。
オロチとの会話、ジェフのことを聞いているネイは黙って頷いている。
オロチの娘を連れてきたことを聞くと長い耳がピクピクと動いた。
ネイが耳をピクピクさせるときは動揺している時だ。
なぜ動揺するんだ?
30分ほどで報告が終わると
「オロチの子は黙っていたほうがいいわね」
「やはりネイ様もそう思いますか」
「ええ、混乱を招くだけだから今はね」
「でわここにいる我々と、屋敷にいるシヴァさん、サラだけの機密と言うことで」
「キラもそれでいいわね」
「わかった。だがあの子を引き取るのは俺でいいんだろう」
オロチとの約束があるこれは譲れない。
もしダメならアルト王には悪いがアリスの護衛騎士をやめて学園都市を出るつもりだ。
「……そうね、うん、仕方ないよね」
「でわ直ぐにオロチの子の戸籍を作らないといけませんね」
シェリルさんはテキパキ動いているがネイは賛成したのに浮かない顔をしている。
「名前はどうしましょう」
「そうだな~」
ヤマタノオロチの子、ヤマタノオロチ……
「ミズチ……ミズチ・イチジョウはどうだろう」
「ミズチですか……いい名前ですね」
「いいんじゃない」
「いい名前だね」
「え、イチジョウの姓を名乗らせるの?」
家族になるんだから同じ姓のほうがいいだろう。
それに俺の姓を名乗ることでミズチに変な勘ぐりはしてこないだろう。
「ああ、俺の家族になる子だからな」
「そう……キラが決めたのならそれでいいわ」
いいと言ったネイだが納得はしていないようだ。
家族が増えるんだぞいいことだと思うのだが……
ネイとは後でもう少し話さないとダメかな。
「でわ、ミズチ・イチジョウで戸籍を作らせていただきます。年齢はどうしましょうか?」
「見た目はアリスより下にみえるのだが……あとで本人に聞くよ」
「わかりました、でわ私とネイ様は冒険者ギルド長に報告しますので少し帰りが遅くなるかもしれません」
「わかった、あれじゃあ夕食は?」
「シヴァさんに頼んでいます」
「……はあ~」
なぜだろう、ため息しか出てこない。
なにせ夕食はほとんど決まっているようなものだからだ。
せめて辛くないことを祈ろう。
「ミズチちゃんに会えるの楽しみだな~」
アリスは嬉しそうだ。
アリスの周りには年上の俺たちか唯一同世代で委員長だけだもんな。
見た目が年下と聞いたアリスは本当に嬉しそうだ。
「あたいも楽しみだわ、オロチの子……ふふ」
イフリートはアリスと違う意味で楽しみみたいだ。
「さて、じゃあ帰るか」
アリスを真ん中に右手は俺、左手はイフリートと手を繋ぎ歩くご機嫌なアリス。
イフリートも楽しそうだ。もちろん俺も楽しい。
3人で帰るときはこれが定着だな。




