第一話 観測の外へ
地平線の向こう、街の灯りが静かに揺れていた。
トシノリは立ち止まり、夜空を見上げる。
「……また、何か起きてるな」
ルルも隣に立ち、微かに息を吐いた。
「これは……地上じゃ説明できない、異常な光。宇宙規模の観測が反応してる」
その瞬間――
空が、歪んだ。
光が、線のように走る。
トシノリの掌が震える。
世界線が、波打つ。
「観測者……?」
ルルは小さく頷く。
「まだ断定できない。でも、何かが動いてる」
二人は光を追って、郊外の丘へ向かった。
そこにあったのは――
円形に押し倒された草。
完全な幾何学模様。
「……ミステリーサークルか」
トシノリが呟く。
「人間の仕業じゃない」
ルルの声は、静かだった。
「観測の痕跡……それも、かなり上位の」
その時。
頭上に、光が集まる。
夜空が、ゆっくりと裂ける。
「……来る」
ルルの声が、低くなる。
次の瞬間――
巨大な光の物体が、静かに現れた。
円盤状。
音は、ない。
ただ“そこにある”。
「……これが」
トシノリの喉が鳴る。
「観測……してるのか」
その瞬間。
強烈な視線のようなものが、全身を貫いた。
見られている。
完全に。
「トシノリ」
ルルが手を差し出す。
「準備して」
その手は、いつもと同じはずなのに――
なぜか、少しだけ遠く感じた。
「私たちの冒険は――」
一拍。
「ここから、宇宙規模になる」
トシノリは、その手を見る。
何度も、助けられてきた手。
なのに――
今は、少しだけ言葉が出なかった。
「……なあ、ルル」
「なに?」
その表情は、いつも通り。
だからこそ――
言えなかった。
「……いや」
小さく笑う。
「なんでもない」
そして、その手を取る。
「行こう」
ルルは少しだけ不思議そうにして――
でも、すぐに笑った。
「うん」
その瞬間。
光が、弾ける。
重力が、消える。
足元の感覚が――なくなる。
「――っ!?」
視界が反転する。
音が消え、色が歪み、世界がほどける。
そして――
次に目を開けた時。
そこにあったのは。
青い地球だった。




