第十五話 月夜の蕾の大輪の花咲く時
(葬儀告別式の前日の夜になった。いよいよ、明日、俺はこの村を去る。菫達にも何も告げずにだ。深夜夜遅くに一人で、東雲家の縁側で夜空に浮かび上がる月明かりを見つめていた。すると、女の声が聞こえた。その声は菫だった。俺は振り返りもせずに声をかける)
まだ起きていたんだな…明日から忙しくなるんだ。さっさと寝ろよ…
(菫は何かを感じ取っていたのか、何も言わずに俺の隣に腰掛けて、共に夜空に浮かび上がる月を見つめていた。そして語り出す)
…虫の知らせと言うのですかしらね。貴方が去ってしまいそうな予感がしたものですから、私…貴方のおかげで強くなれたんですよ…そんな貴方が私に、なにも告げずに去るのですか?…
(月を見上げていた俺の横顔を涙を流しながら、菫は若干怒った顔で俺の事を見つめて来ていた。だから、俺は菫の頭を胸元に抱きよせて、頭を撫でてやる)
ふん、めそめそしてんなよ。憐の爺さんと約束したんだろ…。まぁ俺も、一緒に約束しちまったからな…約束は必ず守るよ…
(菫は無言のまま頷いて来ていた。そして、俺に愛の言葉を囁いて来た)
勇気をください…貴方が傍にいなくても頑張れる様に…澪さんの…勇気を私に分け与えて下さい…
(その言葉に俺は菫のおでこを指で弾いてから、俺は菫の身体を力強く抱きしめた)
なら、俺が戻るまでの間、しっかり守っているんだぞ…。時々連絡は入れてやるよ…
(菫は涙を流して笑みを浮かべながら、何回も頷いて来ると、俺と共に立ち上がり菫の部屋に消えて行って電気が消えた)
第十五話書き終わりました。