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絶対殺すガール(24)  作者: ロッシ
第四話 賞金稼ぎのお仕事
22/91

新米アシスタント=レオニダス 4-1

 あー……どうも、こんにちは。

 僕は鶴岡(つるおか)・レオニダス・(じゅん)。東京府立能楽町(のうがくちょう)高校に通う一年生。 ピッチピチの十五歳、花の男子高生です。


 っえー、僕は今、とてもテンションが低いです。低いですし、実はめっちゃくちゃにビビってます。

 なぜビビってるのかと言いますと……


「じゃあ、とりあえず自己紹介でもしとくか。俺はヴァイオレット・ブッチャー。界隈じゃVBで通ってる。呼ぶ時はVBと呼べ」


 目の前に、バカでかい黒いタンポポを頭に乗っけた、体もバカでかいとんでもねー強面が座ってるからでぇーす!!!


 なぁんてテンション上げてみようにも、鼻息で吹き消えるくらいのケーキ用のロウソク並のか細さしかテンション上がらないんですけどね!


 だって近い! めちゃめちゃ近いんですよ! この人!

 お互いに膝が触れるかもって至近距離でパイプ椅子に座ってるんで、軽く僕の二倍はありそうな体積の圧力は半端ないですし、何よりも体もデカいから顔もデカいし、とにかくアフロのお陰で頭がデカいんですよ!!

 で、何よりも!


「な、なんでこんな広い場所なのに、こんな近いんですか?」


 ここ、軽く数百人は座れそうな、アホでかいホールなんですよ!!!! 

 そのホールのど真ん中に、パイプ椅子二つ並べて膝を付き合わせてるんですよ!!

 そんな異常な状況で、テンションなんか上がるわけないじゃないですかぁーい!!


「あ? そりゃ、声が外に漏れないよう、小声で話せるようにに決まってるだろ」


 いやマジ意味フなんですけど!

 小声で話すつもりならこんな広い場所に来る必要もないでしょ!!

 てかここ何処なんです!?

 どうやってこんな広いホールに忍び込めたんですか!!

 てかなんでこんな場所を選ぶんですか!?

 色々と意味フなんですど!


「色々と意味フって顔してんな。面倒な奴だ。だがまぁ、これからアシスタントになるんだ。少しは説明してやる。まず、ここは貸会議室ってやつだ。大企業が使うような、な。俺は今、予約無しでここを借りた。それは、お前さんにグリプスってもんがどんな存在なのか? ってのを示してやったつもりだ」

「よ、予約無しで? この広い部屋を、ですか?」

「そうだ。俺にはそれだけの物があって、お前さんもそうなれる可能性があるってことだ。どうだ? 少しはやる気が出てきたか?」


 それは要約する必要もないくらいに分かりやすい内容でした。

 きっとこの規模のホールなら、レンタルにウン十万は下らないでしょう。

 それを、二人で会話するだけのために簡単に借り上げることができる。

 尚且つ、個人で借りるとなれば割と怪しまれてもおかしくはないと思います。相手を納得させるだけの信ぴょう性を持った身分の人間であると示したということ、賞金稼ぎにはそれだけの多大な恩恵が与えられていること、そういうことを言いたいんだと、僕は理解しました。

 って、要約しちゃいましたけどね!!


「で、だ。狭い場所だと単純に声が響く。響けば当然、部屋が音声を吸収する訳で、外から壁でも扉でも耳を付けりゃすぐに聞こえる。だが、こういう開けた場所じゃ壁まで空気の振動は届かねぇ。密談をするにゃ、開けた場所が最適なんだ」


 その説明にも納得です。

 つまりは、僕達は今から、誰かに聞かれちゃまずいお話をするってことなんですね。


「分かったら始めるぞ」


 言いながら、VBさんはスーツの内ポケットから小さな機械の端末を取り出します。

 僕は率直に感動しました。

 だってそれって、クレバーホンですよね!?

 小型の、手の平サイズのインディビジュアルコンピューターで、物凄い高価なやつですよね!?

 一台ウン十万から、高いものはウン百万もするっていう、持ってること自体が上級国民の証っていう、スーパーステータスアイテムなアレですよね!?


「お前さんにゃ悪いが、事前に身辺調査をさせてもらった。鶴岡・レオニダス・潤。府立能楽町高校の一年。父親は鶴岡龍興(たつおき)、五十一歳、日本人。証券会社勤務。母親は鶴岡・ソフィア、四十歳。ギリシャ出身で帰化済み。製菓会社勤務。両親ともに特に変わったところはなし」

「えっ!?」


 クレバーホンの画面に目を落としながら話し始めたVBさんのその言葉に、僕の感動は一瞬でかき消されます。


「当然だ。いくら絶対殺すガールの紹介とは言え、どこの馬の骨とも分からねぇガキをアシスタントにする訳にはいかないだろうが。悪いが、両親の曾祖父母の代まで遡って、親類縁者については洗わせてもらった。素性に関しては特に問題なし。まずは合格だ」


 淡々と語るVBさんですが、僕はもう、この時点でグリプスという方々の存在自体に、恐怖を抱き始めていました。


「で、肝心なお前さん自身についてだ。学業成績は中の中。特に目立った犯罪歴や人間関係の不和もなし。特技は特になし。趣味はアニメ鑑賞、好きな作品は【サキュバスノーツ】、中でも好きなキャラはメイド騎士リリっぺ」


 だけど、人の気も知らずに続けられるその内容に、僕の気持ちは一気に恐怖から羞恥心へと傾いてしまいます。


「まったくもって問題なし。ま、普通の学生だな。強いて問題点を挙げるとすれば、まだ童貞だってことくらいか」


 本当に聞かれちゃダメな話でしたぁー!!

 羞恥心、大爆発!!


「っな!? なななな、なんで!? なんでそれを!? と言うか、なんでそんなことを!? そんなの、賞金稼ぎと何の関係あるんですか!!」


 心拍数は倍速ですし、発汗は直瀑ですし、なんならもう体温はきっと四十度は超えてるはずで、もう恥ずかしくて仕方ないから怒鳴ることしかできないくらい、僕は取り乱してしまいます。


「当たり前だ。ハニートラップの嵌りやすさに関わるからな」


 が、やはりそんな人の気など知らずか、あっさりと言ってのけるVBさん。その態度に、僕の体温はまた一度は上がったことでしょう。


「ハニートラップ!? そんなの、掛かる訳ないじゃないですか!! って言うかハニートラップなんかに引っ掛かる人なんているんですか!?」

「いるわ。いっぱいな。それが原因で寝首を掻かれた同業は少なくねぇぞ」

「そんなの! それはその人達の腕が悪かったんじゃないんですか!?」

「お前さんなぁ。じゃあ聞くが、例えばお前が生死を分けるような危機的状況に陥ったとする。そこに颯爽と現れた美女がお前を救ってくれたとして、お前はそいつを、自分を陥れるために接触してきた刺客だと疑えるか?」

「もちろんじゃないですか!!」


 VBさんの訳分からない、意味フな例え話に、僕は即答で返します。


「そうか。なら安心だ」


 って、白目剥いて言う台詞じゃないですよね!? 絶対に信じてないですよね!? その態度!!


「まぁ、その辺は自然と経験していくだろ……運にもよるが。だから強いてと言ったんだ。そう興奮するな」


 興奮なんてしてないですよ!! あと運とか言わないで! 不安しかないから!!

 どういう訳かちょっと体がワナワナと震えて上手く喋れませんが、頭の中ではそう怒鳴り散らしてやった僕に、VBさんは落ち着きはらって話し続けます。


「とにかくだ、とりあえず書類審査は合格だ。おめでとさん」


 クレホを内ポケットに戻しながら、やはり意味フなことを口走ってます。

 何なんですか? 書類審査って。僕は履歴書なんて渡してないでしょーよ。勝手に調べただけでしょーよ。

 勝手に調べて合格とか、そんなの理不尽ですよ。僕なんてまだ自己アピールも何もさせてもらってないのに。僕のこと何も知らないくせに、勝手に選考した挙句に合格なんて、そんなの、そんなのって……


「っえー!? 合格ですかぁー!!??」


 もちろんVBさんは、なんだこいつ、やっぱ落としたろうか? って顔してましたけど。

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