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本当に丸洗いしやがったんだけどこの美少女……。


人間だった記憶があるけれど、そこはやはり猫の本能が勝るというか……水怖い!となっている私を容赦なく風呂に沈めやがってこの野郎…。擦り傷だらけの体はそれはもう滲みた。だというのに、にぎゃーと悲鳴をあげる私の声なんて華麗に無視する幼女である。いや、声だす度に黙れとばかりに水に沈められ命の危機を味わったけれど……子どもって本当に嫌なんだけど!?虐待だよこれ!?


猫の扱いなんて慣れてないんだろう幼女にぐりぐり洗われてタオルでぐしゃぐしゃ拭かれて、それなりに綺麗にはなったがぐったりだ。タオルが所々赤く染まっている件については…ちょっと申し訳ないような気がしなくもないけど、これ幼女が加減を考えずに体拭くからだよね!?


「きれいになったわ!」

「にゃうん…(そうかなぁ…)」


満足気な幼女を遠い目をして眺める。

いや、うん。悪い子ではない、と思う。タオルに包まれてぐったりしている私を見る目は、さっきの言葉とは裏腹にきらきら輝いているようだし。視線を合わせるだけで、何が楽しいのかにこにこしている。


「にゃあ…」

「ふふ、なぁに。うに?」


顔だけなら天使だぁ……。


「そうだ。ごはんをあげなくちゃ!」


両手を合わせた幼女が立ち上がって部屋を出ていく。そこで漸く私は落ち着いて室内を見回した。猫のサイズだからではなく、普通に広いお部屋だ。でもなんていうか…古い。そういえばあのこの子が着ている服もなんていうか昔の貴族が着るようなドレスみたいだった。顔付きは日本人じゃなかったけど言葉は通じたし…つまり、どういうこと?


首を傾けて考えこんでいると、ご飯よ!と宣言しながら幼女がお皿を持って戻ってきた。ことりと目の前に差し出されたお皿にはたっぷりと白い液体が入っている。…恐らく動物用ではなく人間用の牛乳だろう。キンキンに冷やされている牛乳は美味しそうだ。


いや、冷えすぎじゃない!?

うっすら冷気が見えるけども!これ絶対お腹壊すよ!


「召し上がれ」


そんな満面の笑みで言われても。

ちゃ、首押さえないで!?それあかんやつ!あかんやつー!!


べちゃ、と顔から突っ込んだ牛乳はやはりキンキンに冷えていた。おうふ。


「ふふ、美味しい?」

「にゃうにゃー!(そんなわけあるかい!)」

「きゃっ!?」


全力で起き上がったせいか、牛乳が飛び散ったけどそれどころではない。かお!顔が凍りかけたよ!?どんだけ冷えてるんだこの牛乳!

前足で一生懸命顔をくしくし撫でて牛乳を落としていると、幼女の方から情けない声が届いた。


どうやら私の飛ばした牛乳が掛かったらしく、泣きそうな顔をして座り込んでいる。


「う、うぅ…」

「にゃ!?」


あ、これあかん。泣く。

咄嗟に幼女の膝に飛び乗って、一生懸命顔に跳ねた牛乳をぺろぺろ舐めとるとまさに大声をあげようとしていた動きぎぴたりと止まった。セーフ?セーフなのこれ?

冷たい牛乳も人肌のおかげか多少温くなっている。…ってこの言い方なんか変態臭いな。


「…ふふっ、くすぐったいわ!うに」

「にゃあ」


名前はもうこれで決定してるのか……。

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