最後の戦い(1)
途中で、大可士と会った。
「これ、最後の戦いなんだよな。」
「だな。でも、俺らはただ一緒に戦ってただけじゃないだろ?だから、一気に関係が薄くなることはないだろ。」
「同じこと考えてたよ、僕も。これからも、先輩後輩関係無く今まで通りに楽しくいられたらいいなと思ってる。」
「戦いは終わるんだ。これからは気にしなくてはいけないことが1つ減るんだ。もっと楽しいことに集中できるってことだ。」
「そうだね…。」
今までの思い出。たくさんありすぎて思い出せない。一緒に戦うことは無くなるけど、このメンバーでこれからも楽しく過ごしていきたい。心の底からそう思った。
ついに、丘に着いた。ここで全ては一区切りつくのだ。全員がいつもとは違う複雑な表情を浮かべていた。
「これで終わりなんだな。」
陽響に話しかける。
「あぁ。けど、これからはこのメンバーでもっと楽しいことしようよ。ただ一緒に戦うだけの関係では、もうないはずだ。」
「皆同じこと言ってるね。僕も全く同じ気持ちだよ。」
「さ、行くか。」
「よし、行こう!」
ついに、最後の戦いの火蓋が落とされた。
前よりもすごい数の機械兵が襲ってきた。武器を新しくした人達はかなり善戦していたが、特に塔を守備している機械兵が強かった。
飛行機械兵はほとんど倒した。さて、あとは塔をぶっ壊すだけか…。メールには塔の破壊方法が詳細に記されていた。
外部からのダメージはほぼ通じないので、内部から壊さなくてはいけない。頭部には多少のダメージを蓄積するらしい。内部への唯一の入り口が、人間でいう喉仏付近にあるようなので、その辺りを集中して攻撃すればいいようだ。
まずは守備機械兵を倒さなくてはいけない。守備機械兵はさらに装甲が固く、倒すのはだいぶ時間がかかる。
里亥さんは、今日はシビックに乗ってきた。行贄さんのビートと町田さんのシトロエンの2台と協力して守備機械兵を撹乱する。
「守備機械兵は任せろ!お前らは内部に入る入り口探しとけぇ!」
里亥さんが窓から顔を出して言う。
「わかりました!陽響、皆に指示して!」
「わかった!皆、塔の頭部を狙って集中攻撃だ!!」
全員が上空に一気に舞い上がり、頭部を目指す。
「金属だから、雷で大ダメージいけるんじゃないか?」
すずみに提案してみる。
「そうですね!行ってみます!」
ものすごい光と轟音のあと、喉仏にひびが入っているのがわかった。
「よし、突っ込むぞ!!」
陽響が自分が先頭になって突っ込む。だが…。
キーン。金属音。ひびが完璧に割れた感じは無く、剣が弾かれていた。
「え…?」
ていうか、ひび回復してんじゃん!!喉仏だけ回復機能ついてるのか。一発でぶっ壊さないといけないのか…。
その後、何人かが喉仏付近の破壊に挑戦したが、いずれも失敗した。杏が、ライフル銃の連射の準備に入った時…。突然超大型機械兵が動き出した。肩の穴が大きく開き、やがてそこから大きな砲弾が放たれた。それはやがて杏に一直線に飛んでいき…
ヤバいぞ、あんなの当たったらひとたまりもない。ライフルで撃って爆破させたとして、衝撃で明らかに死ぬ。杏は見捨てられない。一か八か、吸収してみるか…。
急いで杏と弾丸の間に入ろうとする。しかし、磨夏が先に間に飛び込んだ。そして磨夏は弾丸に向かっていった。
おいおい何やってんだよ!!
「おい死ぬぞ!!」
磨夏は止まらない。だが、弾丸が近づいて明らかにスピードが落ちた。急いで磨夏に近づき、肩を掴んで後ろに放り投げるように背中に回してかばう。
「何やってんだよ死ぬだろ!!」
もし吸収できなかったら、僕は確実に死ぬし磨夏も丸ごとぶっ飛ぶ。僕だけならまだしも、磨夏は…。けど、この状況じゃ無理だ。
覚悟を決めて、最後に様々な意味を込めた言葉を、背後の磨夏に言う。
「死んでも文句言うなよ。」
「え…?」
私は、斬さんに恩返しがしたかったんだ。杏は、斬さんと一緒に暮らしてた。杏がいなくなっちゃったら、斬さんは悲しむ。そんなの見たくないから、助けようとした。弾丸を切り裂いてすぐに素早く上に飛べば何とかなると思った。けど、やっぱり怖かった。自分に負けたせいで、また…また斬さんの手を煩わせてしまった。そして、今の一言。『死んでも文句言うなよ。』
きっと、斬さんは私の気持ちをわかってくれている。多分あの言葉には色んな意味が込められてるんだろう。もう、運命に任せるしかないんだよね…。
グォォォォォォ………。
暴風が吹き荒れているような音。そして、上空でまばゆい光と共に吹っ飛ぶ斬が見えた。片手で背後の磨夏を守りながら。
「斬!!」
戦闘で羽根が折れてしまったのが悔やまれる。親友なのに、あそこまで飛んでいって斬を助けることが出来ない。俺は、叫ぶことしか出来ないのかよ。俺は、俺は…!!!!!
私は死を覚悟した。磨夏が目の前に来て私を守ろうとしたのには驚いた。ライフルで撃ち壊すのもありかと思ったけど、体が動かなかった。斬さんが来てくれたのも見えた。うまく吸収していれば、斬さんは助かっている。お願い、生きてて、斬さん…お願い、斬……。
…!!視界が真っ白になった。体がぶっ飛んでいるのがわかる。私をかばおうとしている斬さんの体の温もりもわかる。斬さん、生きてて!!お願い!!
く…。顔や体が焼けるように痛い。痛みを感じているのだから、多分生きている。両手を広げておいたから、吸収しているなら今すぐ使えるはずだ…。
大きく深呼吸。さぁ、吸収した弾丸はちゃんと撃てるか…?渾身の力を振り絞り、吸収した弾丸を放つ動作に入る。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
弾丸は放たれた。かなりの衝撃が体にくる。徐々に体が下降していくのがわかる。
「…斬さん?」
磨夏が不安そうな目をしている。
「大丈夫か、磨夏?」
「何が起きてるんですか?斬さんは、何をしたんですか?」
答えようとするが言葉が出ない。徐々に何を考えているのかもわからなくなる。磨夏をかばっていた左手がだらりと下がる。羽根はもう動かない。
「斬さん…?斬さん、斬さん!!斬さん!!」
「大丈夫だ…ちょっと疲れてるだけだ…。死ぬなら、上に昇ってくはずだからな…。」
「斬さん…。」
その後、轟音と光が耳と目に刻まれた。どうやら放った弾丸は当たったようだ。
斬さんが目を閉じたのは、そんな冗談を言った直後だった。羽ばたいていないのに、斬さんの体はゆっくりと落ちていく。
「斬さーーーん!!!!!」
斬さん、生きててよ…。じゃないと、文句言えないじゃん…。生きてよ、斬さん…。




