最後の戦い(2)
斬は、ゆっくりと地面に落ちた。磨夏ちゃんをはじめ、皆が斬に駆け寄っていく。私もすぐに行きたいが、その前にちょっと里亥さんにお願いをしにいく。
「里亥さん、お願いがあります。」
「なんだぁ、リーダーさんよぉ?」
「斬が放った弾丸で、超大型機械兵の喉仏は破壊されました。早いうちに戦いは終わらせたいです。なんとか内部に突っ込んでもらえませんか?」
「それは車でってことかぁ?」
「はい。あなた方も空を飛べるなら別ですが。」
「今すぐに、てのは無理だな。残念ながら機械兵の破片でタイヤがいっちまってらぁ。交換してからすぐに突っ込んでやらぁ。それでいいか?」
「ありがとうございます。」
すぐに私はきびすを返して、斬のところへ急いだ。
斬の周りに全員が集まった。斬の顔は傷だらけで、服も破けている。けど、脈はだいぶ安定していた。
「斬は無事だ。強大な力でちょっと気絶しているだけだ。安心して。」
全員の顔に安堵の表情が浮かぶ。私はこれからの計画を話す。
「斬のおかげで、塔の内部への道が開けた。何人かに、里亥さんと一緒に内部に突っ込んでもらう。誰か、行かないか?」
「俺が行くっす!」
「俺も!」
大夢くんと海督くんが立候補する。
「もう2人。」
「私が行きます。」
すずみちゃんが立候補する。すずみちゃんが誘って、磨夏ちゃんも行くことになった。
「うん。じゃあ他の人は斬を見守ろう。斬が回復し次第、私達は外から周囲を警戒する。外部で何が起きるかわからないからね。」
全員がこの計画に賛同する。
すずみちゃんが、不安そうにしている磨夏ちゃんに声をかける。
「大丈夫。気絶してるだけだって言ってたでしょ?」
「うん…。そうだね。」
「斬さんのためだよ?せっかく斬さんが道筋つけてくれたんだから、私達でちゃんとケリつけないと。」
「うん…!よし、頑張ろっ!!」
俺、こんな格好いい車見たの初めてだ…。ホンダでこんなの作ってるのか…。
「お前も中に突っ込むのか。」
里亥さんが聞いてくる。
「そうっす!」
「全員乗ってけ。タイヤは直った。」
俺はその一言にテンションが上がった。
「ありがとうございます!!」
俺は狭い後部座席の運転席側に座った。スピードメーターは300km/hまであった。
「リミッター切ってあるんすね…。」
「そこまでわかるのかぁ、お前?どうりで初対面から話合いそうだと思ったらよぉ。」
「ところで、ここで加速足りるっすか?」
「いや、足りん。だから、ニトロでも使うさ。」
「えっ!?現実にニトロって存在するんすか!?」
「おう、あるぜ。さ、行くぜぇぇぇ!!!」
里亥さんがアクセルを叩くように踏む。体がシートに叩きつけられる。一瞬見えたが、メーターは既に200km/hより上を指していた。
「もう一本行くぜぇぇ!!」
もう一度シートに叩きつけられる。メーターの針は300km/hで止まってガタガタ震えていた。マジか!?300km/h!?このこと、斬さん目が覚めたらちゃんと伝えないと。
「こ、これ300km/h以上出てるっすよ!?」
「あったりめぇだぁぁ!!」
視界の端に赤い何かが見えた。直後、衝撃が襲う。そして、車体は宙に舞った。
「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!??」」」」
「ったく、まぁたバンパーとボンネット直さないといけないじゃないかい。」
行贄さんがだるそうに言う。
「いっつも使われるんですか?」
近くにいた湖が聞く。
「車で空飛ぶときはいっつも。車高が低いからジャンプ台にはピッタリなんだってよ。これで何回目だか。」
「車のことはよくわかりませんけど、確かに他の車に比べて格段に小さくて背が低いですね。」
「だろ?いい加減ジャンプ台にならないような新しい車買おうかしら。」
キィィィィ。車は止まった。
「こっからさらに中の方に繋がってるんだな。」
「行こうぜ、海督。」
「おう。」
「私達も行くよ?」
「うん。」
「さーて、俺もついてくかぁ。」
こうして、俺達は内部の調査に取りかかった。
「派手に飛んだね…。」
来実が感嘆のこもった目で空飛ぶ黒い車を見つめる。
「しかも、火噴いてるし。」
鳴実も驚きのこもった目で見上げている。
「あれって確か、ニトロとかいう機能だよ。」
葵衣さんが補足する。
「そうなんですか。」
私は、とにかく皆無事で出てくることを祈っていた。斬はまだ目覚めない。もうこれ以上怪我人が出るのは望まない。
「斬さん、目覚めませんね。」
結菜ちゃんが不安そうに斬の側にしゃがみこむ。
「実は目覚めてたりして…」
朱魅ちゃんが斬を揺さぶる。
「うぅ…。」
「「うそ!?」」
斬が声をあげた。2人の驚きの声が重なる。
「目が覚めたか!!」
私も駆け寄った。
「ふぅぅ…。おぉ、生きてるな僕。今どうなってる?」
私は頭の中で状況を整理しながら説明する。
そうか…。とりあえず、僕の放った弾丸は当たったのか。そして、今は大夢、海督、すずみ、磨夏、里亥さんの5人が内部に入ったのか。僕達の役割は外部の警戒。よし、状況はわかった。
「うん、わかった。じゃあ、とりあえず待機だね。」
「まぁ、そういうことだ。それより、怪我…。」
「傷がかなり多いですよ。ザ・傷だらけって感じです。」
杏も言う。
「あぁ、うん、大丈夫。血が出てるだけだから。」
あれ、脇の辺りが痛い。もしかしてまたあばら折れた?ま、いいか。
斬の意識が戻ったのは露知らず、大夢達は内部の最深部の辺りまで進んでいた。
「さて、こいつをぶっ壊せばいいのかな?」
海督が手を伸ばした途端…。
なんだ?
「なんで外観が縮み始めてるんだ?」
大可士が心底不思議そうにしている。メリメリ、という音がする。
「おい、中の人達ヤバいんじゃないか?」
僕は南町さんのその一言で体中に衝撃が走るような錯覚を覚えた。中の人達が危ない。それだけで、僕は傷だらけの体を動かすことが出来た。
「斬さん、どこに行くんですか!?傷が…。」
杏が聞いてくる。
「助けにいかないと。せっかく助けた仲間を、失いたくないし。」
そして、僕は振り返らずに一直線に塔の中に突っ込んでいった。
「まったくもう…。ま、斬らしいっちゃ斬らしいか。」
杏は独り言を呟いてから、斬の後を追った。




