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小高い丘での苦戦(1)

 「うわ、まさかのこのタイミングで…。」

湖に特才者メールが届く。続いて、スマホを忘れてきた大夢以外の全員にもメールが届く。

「斬に連絡しよう、どうするかはその後考える。」

陽響が斬に電話をかける。

「もしもし、斬か。メール来たけど、どうする?…え?」

陽響がスマホの画面に目を落とす。GPS情報では、斬を表す点が現場に向かっていた。それを見て、陽響はしばし考える。…斬。お前1人で未確認の敵に突っ込むのか?ふざけているのか?装備すらしていないだろ?

「装備していないのに戦える訳無い。とりあえず戻った方がいいと思う。…そんな特別なことがあるのか?…そうなのか。わかった。私達も出来るだけ早く向かう。じゃあ。」

斬が不安だ。嫌な予感がする。

「よし、全員きちんと装備を揃えてから現場に向かおう。各自で現場に向かって。OK?」

「んじゃ、いきましょうか。」

大可士も、妙な予感がしていた。

「んじゃ、レッツゴー!」

葵衣さんの号令で、全員が斬の家からドタドタと出ていった。


 僕はとてつもない光景にうちひしがれていた。なんでこんなんが打ち込まれてんの?巨大な柱のような物体が丘の頂上に建っていて、そこに次々と機械兵が集合してきていた。最上部のあるあたりまで高度を上げると、そこからは港にある最新の軍所有兵器が格納されている倉庫が見えた。さらに沖には秋田沖基地が見える。なるほど、ここから機械兵を発射して直接狙い撃とうってわけか。

 地面に降りると、一面に何かの残骸が大量に落ちていた。多分、この柱をここまで飛ばしてくるために柱を覆っていた容器だろう。あ、僕が見た飛んでたデカイ物体はこの容器に覆われた柱だったんだ。ソーレーンの英語表記のスペルのなかにある『S』とか『gh』って字が見えるし。

 その時。キィィィィンと金属音。上から機械兵が降ってきた。ヤバイ。やっぱりこいつら敵意持ってるのか。外装に変化は無いし、多分機械兵自体は進化とかしてないはず。とりあえず回避!!…ふぅ。なんとか飛び退いたけど、やっぱちゃんとした格好してないと何かとつらいな…。背後に気配を感じる。はっと振り返ると、金属的な冷たい衝撃が脇腹を襲う。くっ…。だいぶダメージでかいぞ今の一撃。早く来てくれ、皆。頼む…。

 

 「ん…?」

湖の目に入ったのは、道端に停められた斬のチャリだった。猛スピードで漕いでいたチャリのスピードを少し緩める。…あ、ケーキ。ブレーキの跡付いてるってことは、すごい急いで来てたんだ。ありがとう、斬。あ、けどブレーキかけた時の衝撃でケーキぐちゃぐちゃに…!?ま、気にしない気にしない。とにかく急ごう。最近全然特才者メール来てなかったから、嫌な予感がする…。


 大可士と大夢、海督は信号待ちの時に偶然合流した。

「大夢…だっけが。斬と話合ってたよな。」

「はい!!あんなに話合う人と出会えて嬉しいっすよ!!」

「俺は驚いたよ。まさかお前と話合う人が現れるとはな。」

海督が言う。

「おし、青だ。急ごう。」

「「はい!!」」


 南町さんは、重いスピーカー2つにギターケース、それにその他機材という超重装備で歩いていた。

「あ"ぁ…遠いぞ…。」

独り言が、大きな黒いピックアップトラックのエンジン音でかき消される。ん…?この辺じゃあんま見たことない車だな…。赤いステッカーがすんごい目立ってるし。なんだろ…不思議だ。俺がこんなに車に目を奪われるとは。何かこれから縁でもあるのか?お"ぉ…にしても重い。急がないと。

 しばらく歩いていくと、後ろから話し声が聞こえた。

「…はぁぁ!?あんたよぉ…だからいっつも言ってんだろうがよ!?」

…声からして葵衣だと思うが、口悪っ!?あんな口悪い人だっけ…。

「うるっせぇなさっきからぁ…。今2人で割れてる場合じゃねぇだろ。嫌な予感するから団結しなきゃっつったのおめぇだろ!!」

…朱魅もこんなに口悪かったっけ…?

「んぁっ!?あんた……って、南町じゃん。重そうだね。出来るだけ急いで来てねぇー。」

…なんだこの言動の違いは。姉妹どうしで言い争いになるとあんなに変わっちまうのか…。


 ピックアップトラックの中の金髪の青年は思う。あのロックを愛してそうな少年も、自転車に乗りながら喧嘩をしている2人の少女も、特殊才能開化装置を装着されているのだろうか…。多分そうなんだろうな。きっと、例の小高い丘に向かってんだろう。でも、それよりも俺はとりあえず旧港の辺りで車を停めてのんびり情報収集しながら状況を読むか。


 皆が思い思いの心情で現場に向かっていた頃。斬は、現状に悩まされていた。

「うおっ!?」

次々と発射される大量の機械兵を前に、苦戦している。全方位から攻撃をされ、吸収とかでなんとかガードできてるけど、ガードできなくなるのも時間の問題だな。

 また1体倒した。けれども、相手が減る気配が一向にない。ダメージが蓄積される。うわ、羽根が…。傷付いてしまった。飛んで回避するのはやめた方いいな。けど、地上だと回避のしようが無いよな。どうしよう、僕やられるのか…?そんなの嫌だ。仕方ない、一か八かだ。エネルギーブースト…使おう。エネルギーを最大発揮できる、空中で。空間が歪むほどの力は、今の状態ではきっと出ないっしょ。最後の力…振り絞れ…僕…!!!


 湖は、いち早く現場に駆け付けた。そこで見えたのは…

「…斬!!」

機械兵が、斬を踏みちぎるように、叩きつけるように攻撃している。斬はなんとか防いでいるようだが、すごくつらそうだ。

「斬!!今行くから!!」

チャリをぶんまわしながら走っていく。

「来るなぁぁぁ!!!!!」

斬が叫ぶ。え…なんで?

「頼むから、来るな!!!危ない!!!」

斬の言うことを聞いて、一旦下がる。斬が、ちぎれかけている羽根で上空高く舞い上がった。何をするんだろ、斬は…。

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