441話「火星総力戦⑫ 五領主“火獣王”ディアディ!」
基地内で五〇代頃のガタイのいいイケオジはモニターを見てニヤリと笑む。
ヤミザキ陣営は知っている。
かつてアメリカで世界大戦を起こし、大魔王に変貌までして多くの犠牲者を出した。
そんな極刑にも値するであろう男が再び火星へ攻め込んできたのだ。
「己の罪を直視せぬ罪深い男よで……。嫌が応でも報いを受けてもらうで」
頭から枝分かれした二つのツノをメコメコ生やしていく。
次第に体格も巨大化していって鹿の体格へと変貌していった。しかも五領主特徴である人魂みたいなのが周囲で不気味に燃え盛っていく。
そして天井をぶち破って、凄まじい威圧を漲らせていったぞ。
「で、出てきましたねッ……!?」
コクアはほおに汗を垂らしながら、巨大な鹿の化物へ振り向く。
「あれが……」
「そうだ! 五領主の一人……」
おののくライクに、目を細めるカゲロ。
偶像化合体ロボ型のグレードロイヤルエースもグッと身構える。
最後にダクライは聖剣をかざす。
「これ以上侵攻するなど、この“火獣王”ディアディが許さんでッ!!」
ズズズズズズズズズズ……ッ!!!
ドス黒いオーラがこもれ出る巨大なシカが双眸を輝かせた。
仰々しいまでに枝分かれしたツノに、赤い電撃が迸っていく。激しくスパークすると、稲妻の嵐が縦横無尽と放たれた。
コクア、ライク、カゲロ、夕夏五戦隊は避けられずバチバチッと浴びてしまう。
「「「ぐあああああああああッッ!!!」」」
ダクライは苦い顔ながらも素早く隙間へ避けて難を逃れた。
するとディアディが素早く迫ってきて、巨大な前足が蹴り飛ばさんとする。ダクライは身を翻しつつ聖剣を振るって前足を薙ぎ払った。
ズガゴッ!!!
衝撃波が爆ぜて、ディアディとダクライ双方にビリビリと衝撃が全身を貫く。
ズザザッと地面を滑りながら後退していくディアディとダクライ、睨み合いする。
「なかなかやるようだが、罪深い男の為に老体を押して戦う義理があるんで?」
「ほっほ、これはまた無礼な方じゃの」
「……無礼者どもに言われたくもないで」
売り言葉に買い言葉に近い応酬。
それでもダクライは意に介さない。そのまま聖剣をかざして合体をしようとすると、ヤミザキが歩んでくるのを感じて手を止めた。
「下がっておれ……。ヤツの目的は私であろう?」
「ヤミザキ殿……」
「話がしたいそうだからな。聞いてやろうじゃないか」
ヤミザキは鋭い視線を見せ、威圧感を漲らせていく。
同時にズズズ……と包むように漆黒の巨大な『偶像化』が具現化される。
頭上から左右に牛のような二本の角。悪魔のような憤怒の形相。隆々とした筋肉質で、四本の腕がそれぞれ漆黒の大剣を掲げていた。
歪な両翼が大きく広げられ、より巨躯が大きく見えてしまう。
「ヴォオオオ……!」
奇妙な唸り声。溢れてくる膨大なドス黒いフォース。
途方もなく広大で深い海を彷彿させるほど底知れない魔力。
「ほう……悪魔。お主に相応しい穢れよなで…………」
「否定はしまいよ」
「確かにな……きさまの罪は決して拭えぬで。例え一生を懸けようとも許されざる大罪、その事を自覚しているのなら、今ここで私に裁かれる道を選ぶが良いで!」
「……断る!!」
ヤミザキは恐ろしい形相で怒鳴り、拒否した。
それだけで地面を揺るがし、烈風が吹き荒れた。ディアディは見開く。
「きさま……! あくまでも悪の道を進み、更なる罪を重ねるんで……!」
「夕夏明王・降魔滅殺剣ッ!!!」
魔王のような偶像化は巨大な文殊利剣に凝縮させた黒い刃を包ませ、漆黒の稲光が轟々と迸る。そして天地を割るほどの強撃を振るう。
ディアディはすかさず赤い稲妻迸る仰々しいツノを突き出す。
ガ カ ッ!!!
周囲に赤と漆黒の稲光を放射状に散らし、爆ぜた衝撃波が大地を穿っていく。
大地を断ち割るように深い亀裂を走らせ、それは地平線にまで一直線と裂いた。
爆ぜて巻き起こった烈風がコクアたちを煽って「うわああああ!!!」と吹き飛ばされそうになる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!
地響きがしばし続き、立ち込めた煙幕が渦を巻く。
すると巨大なシカと巨大な偶像化が飛び出して、ツノと文殊利剣が交差し、大気が爆ぜて煙幕が吹き飛ばされて空の雲まで跳ね除けられた。
ディアディとヤミザキが憤怒の表情で「うおおおおおおッ!!!」と叫び上げる。
ガッ!! ガガガッガガガッガガガガガッガッガッガガガッ!!!
ツノと剣が幾重に軌跡を描きながら、攻防の応酬を繰り広げて、断続的に衝撃波が周囲に吹き荒れて荒野が荒らされていく。
空中戦であるにも関わらず、荒野が騒ぎ立ち、地盤があちこち起伏を繰り返す。
コクアたちは必死に後退して「ヤミザキさま!!」と声を張り上げる。
「うむ、もはや割って入れぬようじゃの」
ダクライは平然と、行方を見守る。
「どこまでも悪辣な男でッ!! 今度は火星で罪を重ねるなどと同じ過ちを繰り返すとでッ!!」
「ディアディと言ったかな……」
「弁解などできるはずもないと、己の罪に問えでッ!!」
ツノから凄まじい電撃の嵐を放つ。
それでもヤミザキは冷静に両手を重ねて、その間に漆黒の竜巻球を生む。
おぞましく高速回転する邪悪な闇の螺旋。
「降魔穿嵐旋ッ!!!」
漆黒の竜巻球が爆ぜるように一気に膨れ上がり、ディアディの電撃を弾き飛ばし、荒野中を破壊が蹂躙した。
地盤を粉々に砕き、旋風が吹き荒れ、大小の破片が流されていく。
ディアディはまともに食らって「ぐがああああッ!!」と弾き飛ばされるが、空中で受身を取って大地に着地して後ろへ滑りながら踏ん張る。
「ぐっ……! きさま……!!」
「己の犯した罪については弁解はせんが、おまえの言い分は間違っていると申している」
「なんだとで…!?」
悠然とヤミザキは偶像化とともにディアディのそばへと降り立つ。ドン!
ディアディは憎々しげに顔を歪めていく。ギギギ……!
「私の罪を非難していいのは被害者だけだ。許さず裁きたいならいくらでも贖おう。だがしかしきさまは全くの関係ない第三者に過ぎぬ」
「ふざけるなで!! のうのうとヤツらと群れて大罪をなかった事のように済ましてるのが気に食わないだけでッ!!!」
怒りをあらわにディアディは片前足で大地をドンッとかち割る。破片が飛び散る。
「それはひとえにナッセたちがそう裁いたからであろう……。生かされているのも彼らのおかげだ」
「だから代わりに裁いてやるでええええッ!!!」
ディアディは憤怒のままに猛スピードで駆け出す。
目の前のふてぶてしい大罪人を許すものか、と電撃纏うツノを連続で突き出す。
だがヤミザキは偶像化の文殊利剣を幾重に軌跡を描いて捌いていく。
「であああああああああああああああああッッ!!!!」
ディアディの歪んだ怒りの咆哮が大気を劈く。
仰々しい枝分かれしたツノが巧みに縦横無尽と振り回されて、それに対して文殊利剣が毅然と打ち払い続けている。
その激しい格闘で地響きが大きくなっていく。
生じて周囲に烈風が吹き荒れて煙幕が流されていった。
ガガガガガガッガガガガッガガガガガガガガッガガガッガガガガガガッッ!!!
のうのうと世を闊歩する大罪人を許すものかと殺意のツノを振り回し続けるディアディと、全くの無関係なヤツが口出し手出しするんじゃないと跳ね除けるヤミザキ。
「見当違いも甚だしい……!」
「なんでえええッ!!!」
「ナッセたちが、この私を許せず極刑してきても仕方ないが、全く被害を受けていないきさまがしゃしゃり出ても迷惑なだけよ!」
「だからでッ!! そのナッセたちに変わって、我が裁いてやるんでえええッ!!!」
「それはナッセたちに頼まれたのかああああッ!!!」
見当違いのディアディに、怒号を吠えたヤミザキが文殊利剣を振り下ろした。
漆黒迸る電撃纏う一太刀で、ディアディは「グッ!!」と吹っ飛ばされて横たわりながら地面を滑っていく。飛沫を吹き上げて破片が飛び散る。
「被害を受けたナッセたちに代行を頼まれたのならともかく……! そうでもないというのなら、裁きを隠れ蓑にした悪質な加害行為だッ!」
「でぇ……ッ!!」
するとディアディは歯軋りして、バッと飛び跳ねて体勢を整えた。
仰々しいツノが次第に赤みを帯びていく。ズズズ……!!
「ヤツらは甘すぎるで!! 甘すぎてヘドが出るでッ!!! そのナッセたちとやらも被害を受けてなおも、大罪人を見逃すなどと同罪やでッ!!!」
身勝手ながらもディアディは大罪を許せぬと最大限の怒りに満ちていた。
その憤怒は被害者であるナッセにも及ぶという。
「然らば、ナッセともども裁いてくれるでぇーッ!!!!」
大地を大きく揺るがして、ディアディは全身から赤く迸る電撃をバチバチッと放射していく。
対してヤミザキはスッと目をつむった。




