442話「火星総力戦⑬ 罪と罰!!」
ヤミザキを大罪人と勝手に憤ったディアディは、被害者の代わりに裁こうと苛烈な攻撃を加えていた。
しかしナッセたちがあまりにも甘すぎるからと、同罪扱いにして一緒に処刑してやろうと激怒していく。
「それでは、ディアディ……! 私はそのナッセを守る為に戦おう!!」
「やはり!! 共犯ッ!! 共犯共犯共犯共犯ッ!! 許すまじでッ!!!」
ディアディは赤く染まる電撃を更に激しく迸らせて、あちこち地形を穿ち回っていく。
そしてディアディの背後から、虚空より数多のツノが浮かび上がって空一面に並ぶ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!
「これまで我が許せぬと思った罪人どもを地獄に落としてきたでッ!!!」
「私情で勝手に決めつけてはいかんのだろう? 中に冤罪の者もいたではないか?」
「冤罪はないでッ!! 我が許さぬで!! その憤りこそが正しき裁く基準やでッ!! 天網恢々、我が罪人と烙印を押したなら、いかなる理由があろうとも処刑されるべきなんでぇ────ッッ!!!!」
血眼で叫びだし、一斉に無数の角が降り注いでヤミザキもろとも大地を粉砕せんとする!!
しかしヤミザキはカッと鋭い眼光を灯らせ、異なる回転を重ね合った多重層で超巨大な竜巻球を展開した!!
「それを身勝手というのだッ!! 九極星・降魔穿嵐旋ッ!!!」
ズン!!!
お互いの大技が激突して大きく大地が震憾し続け、台風以上の旋風が数千キロにまで吹き荒れ、あらゆる破片を流し、海を大波で暴れ尽くす。
火星を揺るがす勢いで震撼は大きくなっていく!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!!
「ぬうううおおおおおおおおおおッ!!! 大罪人ごときでぇぇぇッッ!!!」
なおも絶えず数多降り注ぎ続けるツノの嵐と、多重層の超巨大な竜巻球がせめぎ合う!!
地盤が砕け、数十キロ範囲に陥没! 更に陥没する範囲がドンドンドンと広がっていく!
カッ!!!
臨界を迎えて、超高熱プラズマが一気に拡散して荒野が蹂躙されていった。
ダクライは聖剣をかざして、コクアたちをかばうように障壁を張った。眩い閃光が全てを覆っていく。
唸るような振動音を響かせながら、大規模なキノコ雲が天高く昇っていく。
ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ……ッッ!!!
「大罪人ならば、大罪人らしく罰を受け入れるんやでええ────ッッ!!!」
「被害者までも同罪と巻き込むんじゃあないッ!!!」
激昂のままにヤミザキの文殊利剣と、ディアディの大仰なツノが激突!!
その凄まじい衝撃波で、キノコ雲が破裂するように霧散した。
「醜悪な加害者が共犯者を庇うのかでぇーッ!!」
「ナッセは共犯者ではないッ!!」
遥か上空でガンガンガンぶつかり合うヤミザキとディアディ。
赤い稲妻が迸り、漆黒の稲妻が迸り、重々しく大気が爆ぜて、荒野が激しく騒ぎ立つように起伏を繰り返す。
亀裂が走り破片が舞い上がり、煙幕を吹き出す。
「大罪と自覚せぬ愚か者は万死n……」
「正義の裁きだと目を背けて、血に塗れて死屍累々と多くの命を散らして、どの口が言う!?」
ヤミザキが凄まじい形相で指摘し、それにディアディは見開いた。
かつて自分がしてきた事が脳裏によぎった。
最初こそ、窃盗や暴行など許せぬと正義の鉄槌を下し、処刑してきた。
恐らく盗もうとしたに違いないと、疑ったヤツを痛みつけてたのが浮かぶ。
《な……なぜなんだ……?? 一体私が何をしたんだ……!?》
《許すまじで!! この私こそが裁きの番人!! 己の罪を自覚せぬ醜悪な罪人は、天に代わって我が裁くんやで!!》
《ま、待てッ!! 私は……ッ!!》
《問答無用だでッ!! 処刑するでッ!!!》
命乞いしようとする哀れな被疑者を惨殺し、おびただしい鮮血が美しく噴き出した。
すると悪が一匹駆逐されたというカタルシスが心を満たした。
……あの時がターニングポイントだったのだろうか?
《はははッ!! 罪人など、我が消し去っていくんやで──ッ!!》
《私が気に入らないヤツはきっと悪だで!! 罪人だでッ!!》
《いずれ悪行を起こすに決まってるで!! アイツ処刑しておくでッ!》
《罪人は殺す!! 罪人は殺す罪人は殺す罪人は殺す罪人は殺す罪人は殺す!!》
あの時から徐々に私情でいかなる理由があろうとも罪人は裁くべしと凝り固まって、一心不乱と多くの命を奪ってきて、気づけば己の手は血に濡れていた。
罪人とはなんなのか……?
《あ……あああああああッ!! 違うで!! 違うんやでえええッ!!》
感情任せに私刑し続けてきた結果、罪なき者も殺めてしまった悍ましい自分の罪と向き合えなかった。
自分を見る人々はまるで加害者を見るかのようだ。
被害者を救済する為に、罪人は処刑するべきとなりふり構わず断罪し続けてきた故の過ち。
《我が心に従うでッ!! 罪人だと思ったら、そいつは紛れもなく罪人ッ!! 我が行う裁きこそ真の正義なんやでッ!!》
己の罪はなかった、と目を背けて私情で裁くのみと突き進むしかなかった。
そうして火闘神マルスさまより力を授けられて五領主の地位につけた。
それにより正当性を増して、我思う罪人を思う存分処刑し続けてこれた。
「きさまこそ目を背けるでないわッ!!!」
「な、なにおおおおッ!!! 大罪人に言われたくもないでッ!!!」
「被害者を私情で『甘すぎるから』という適当な理由で処刑するというのなら、きさまはただの悪質な大罪人ッ!! これ以上被害を拡大せん為に、悪を絶たせてもらうッ!!!」
ドォーン!! と時空を超越する輪を世界中に広げ、ヤミザキは『偶像化』の漆黒の大剣四本を融合し、束ねた超巨大な剣を振るう!
漆黒の稲妻を走らせ、停止した時間と相余って光速にも等しい一撃に昇華して繰り出す!!
ディアディは「己が悪」と胸に刺さる痛みに見開いた!
「夕夏大魔神!! 覇極・降魔滅殺剣!!」
「あ、悪は……ッ!!!」
ディアディは戸惑いながらも仰々しいツノで防ごうとするが、時が堰き止められていて動けないッ!
突き刺すような罪悪感のせいもあってか、体が言う事を聞かない!
構わずヤミザキが繰り出す渾身の一太刀が一閃した!
「ま……待つんやで…………ッ!!」
ズガン!!
眩い閃光と共に漆黒の稲妻が四方へ迸り、凄まじい衝撃で大地を深々と裂き、何層もの雲を裂き続け、ディアディのツノが木っ端微塵に砕かれたッ!!
皮肉にも首まで切断された!!
驚愕の表情のままディアディの首が胴体からずり落ちていく……!
「な……にッ……!? こ……このッ…………我がでッ!!」
天地が轟音を立てて一直線と裂かれて地平線の彼方にまで走っていった!
ディアディは無念と「ぐブッ!」と吐血!
見下ろすヤミザキ。そして人型に戻ったディアディの首。
「グ……気づくには遅すぎたんやで……。この我の……大罪…………」
「殊勝だな」
「自分で……お、己の罪を……問えと他人に押し付けおってからに……、そのツケが回ってきたんで…………。今更……否定しても……ガッ」
苦しそうに吐血。ぜいぜい息を切らし霞んでいく視界。
「こ……この心を…………突き刺す……罪悪感は、消えてくれへんで…………!」
「私もだ。この罪悪感は一生ついて回るだろう」
ヤミザキは綻ばせた笑みを見せた。
「ヤミザキ……!」
「私も死ねば地獄へ落ちる身。それまでに犯してきた罪以上に、多くの人が間違わぬよう導いていく。生き続ける限り贖罪は続けられるからな」
「う……羨ましいものやで…………。そ、その大罪を背負ってなおも……贖罪に走れる心意気よ…………」
「すまんな。こうでもしなければ止められなかった」
なんとヤミザキが頭を下げてきて、ディアディは見開いた。
恨まれて蛇蝎のごとく嫌悪されて、そのまま踏み潰されるのも仕方ないと罪悪を抱いていた。
なのに敵を殺した事を悔いる姿勢には驚くしかない。
やがて「フッ」と笑みをこぼした。
「嗚呼…………、生きて……償い続けたかったで…………」
己の抱いた罪を、罪悪を晴らす事ができぬと悔いを残しながら、チリとなって空へと流れていった。
ヤミザキはしばし目をつむって黙祷……。
そしてザッと踵を返して、コクアたちが駆け寄ってくるのを迎え入れた。
咎を背負ったヤミザキの贖罪はまだ続く……。




