表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/66

嵐の風






















 逃げたいと思っていた。

 逃げたいが死にたいと同じ意味だと思った。

 死にたいと思うようになった。

 死ねないと思った。

 九尾の妖狐の命を持ったまま死ねない。

 そして今は、生かそうとしてくれるみんなの為に、死ねない。

 死にたくないではない。

 死ねない。


(違う。違うちがう!)


 お願い。お願い。この夢を奪わないで。悪夢を見せないで。

 これは現実だと突き付けないで。

 これは過去の出来事だと。

 今生では起こり得ないのだと知っている。




 知っているのに、




 衝突する音がする。

 衝突して、砕け散る音。砕け散ったまま、集まる事はない。


 違うのに。


 衝突は奪うものではないのに。

 衝突は芽吹かせるもの。続けられるものだ。

 こんな風に、絶やすものではないのだ。




『記憶を消してくれと願うか?願うのなら、叶えてやる。願うのなら、いくらでも叶えてやる。言え。苦しみから解放してくれと。言え…さっさと言え!』




 嫌だ。いやだいやだいやだ!


 もう間違えたくない。もう戻れないような事をしたくない。


『…いや……いやだ。あなたにはもう、願わない。絶対…いや』



 願われる事できっとなにかを得ようとしている九尾の妖狐。

 きっと得たいなにかは手にしていたはずなのだ。

 手にしている事に気付いていないから、きっと、あなたはまだ言うのだ。




 願え。あらゆる願いを叶えてやる。


 あなたの願いはなにか。




 訊いたらきっと、あなたはわからないと言うに違いない。

 大袈裟に考えすぎなのだ。

 油揚げを食べたいだって、立派な願い。

 あなたは数えきれないくらいに願いを告げて、叶えている。

 あなた以外の願いを求めなくたって、ほしいものは手にしている。

 私が行かない先、あの記憶の先で、あなたは手にしている。これからも手にし続ける。




 だから。




「早く命を戻して」






























(2019.7.28)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ