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ひかた

(……大丈夫、か)



 地中から飛び出して踊りまくる杉をとっ捕まえてから地中に突き刺す。毎年の事ながら、面倒で、けれど、力が存分に振るえるので、楽しくて、楽しくて仕方がないやしろはしかし、なにやら格好をつけて飛び回るラグナを視界に入れて、眉根を寄せた。



 実は、かづらやのばら同様に、ラグナにも一抹どころか十抹ばかりの懸念を抱いていたのだ。少ししか行動を共にしていないので断言はできないが、やはり、不安定な存在で、圭の魂を守れはしないのではと疑問に思っていた。

 現状を伝えられた挙句、渡してしまったものはどうしようもないと思いながら、自分がラグナの分まで引き受けた方がいいのではないかと勘繰ってしまう。



 自分ほど日々充実した生物はいないのだから。



(くっくっく。どうだ。圭。楽しいだろう。嬉しいだろう)


 毎日毎日、やしろは途切れる事なく、高笑いを上げていた。だって、どうしてか、嬉しくて仕方がないのだ。


 無論、圭の状況を喜んでいるわけでは決してないのだ。以前みたいに早く会って、頭脳戦の続きを再開させたい。今は圭が勝ち越しているのだ。早く挽回したい。

 それに圭の状態がこのまま続いたら世界にも悪い影響を与える。そうなってもらっても困る。

 早く戻ってきてほしい。真なる心だ。



 ならばどうして圭が戻ってきていない今、高揚した心を抑えられないのか。不安がないからだろうか。どうしてか、マンドレイクの所為で圭の命が危うくなった時のように、不安がない。皆無だった。


 自分が直接的に圭に元気を与えられる存在になったからだ。間接的ではない。直接だ。

 あの時のように待っているだけではない。本当に並んで一緒に闘っている。そう思ったら、なんだか、無敵になってしまったようだ。



 自分がいるから圭は大丈夫。絶対だ。

 今日がだめなら、明日がある。明日がだめでも明後日がある。

 絶対圭は戻って来る。そう遠くない明日に。






「おらおらかかってこいや杉ども!」

「…高笑いをしているわよ。よっぽど楽しいのね。杉との取っ組み合いが」



 休憩を取ったラグナは更に手渡されたとまとを一口齧った。人間国で栽培されているのに、どうしてか自分の両の手に収まる大きさなのだ。人間国にも妖精と同じくらいの大きさの人間か生物がいるのかと問えば、いませんと返ってきて、首を傾げる。



「まあいいわ。うん。すごく美味しい。触感が面白いわね。皮は固くてパリッと歯ごたえがよくて、果汁も溢れて来るし、果実は滑らかだし、種はつるつるで噛めばアーモンドみたいにカリッとしているし。甘さ多めで酸っぱさ少なめで、もったりしているようであまり後に引かない爽やかさがある味だわ。ベリーたちとまた違って。へえ。すごいわ」

「圭様が育てていらした苗をわたくしたちが引き継いで育てたとまとたちです」

「うん。美味しい。ありがとう。更」

「…ラグナ様」

「なにかしら?」



 急に顔を曇らせた更が心配になり、同時に圭になにかあったのではと嫌な予感がしたのだが、どうやら杞憂だったようだ。否、あながちそうでもないような。



「やしろ様に圭様の魂を預けて大丈夫だったのでしょうか?わたくしはとても不安です」

「おらおらおら!俺は最強だぜ!かかってこいやあぁぁぁぁぁ!」



 嫌いだが信用している。そう信用。圭の魂を預けられるという信用。共に頑張っていけるという信用。あれ?信用ってなんだっけ?シソ?ジャスミン?ハーブの仲間だっけ?



「大丈夫よ。だって、すごく楽しそうだし」



 やしろの高笑いが木魂してこの空間を支配したが、ラグナの言葉はかろうじて更の耳に届いたのであった。かろうじて。



 圭に悪影響を与えないかしら。

 そんな不安も要らぬ心配なのだ。本当。ええ。










(2019.7.21)




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