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第十三話 決闘準備。スタンバイ


 九条が教官に話をつけている。

 その間に、どこからか黒服の男たちが現れて何やら準備をしている。


「……あれは」


「カメラじゃなあ」


 ひょっこりと左胸のポケットから顔を出した玄武が言った。


「はめられた?」


「そうじゃろうな。なあに、軽い気持ちでやればいい」


「そんな、呑気な」


 樹が玄武に、げんなりとした顔を向ける。対する玄武はからっとした声で笑ってみせた。


「なんじゃ、樹。さっき、自分で言っておったじゃろ」


「なにを?」


「負けても、嬢ちゃんが望んでくれるなら番でいると」


 樹は頭を乱暴にかきだす。


「これ。髪が抜けるぞ」


「うるさい。誰のせい」


「全く。照れが入ると髪やら頬やらかきむしりおって。傷がつくじゃろ」


「かきむしってはいないよ」


 樹は、深く息をはいて荷物を訓練場に設けられている観客席の一つに置いた。


「三橋くん」


 振り返ると九条が笑顔を浮かべている。


「許可は取れたよ。ああ、それと」


 樹の左胸ポケットにいる玄武を指さした。


「その子。大事なら、荷物と一緒にいてもらうといい。僕も手加減ができないといけない」


「……ご忠告どうも」


 樹は玄武をポケットから出して荷物の上に置いた。


「待ってて」


「無理はするなよ」


 樹が離れると、職員がが玄武の近くまで来る。それを九条が咎めた。


「余計な真似はしないでくれ」


「……私はなにも」


 職員が口を開きかけるが、九条は許さなかった。


「お前が何かしたことで、彼を倒しても僕の価値が下がるだけだ。お前は僕に卑怯者の汚名を浴びせたいのか?」


「いえ。そんな、ことは」


「卑怯な真似をして勝ったところで、何も面白くない。余計な真似は一切するな! 何かしたと後からでもわかれば父に伝えて支援は取りやめてもらうからな!」


 九条の言葉に職員は慌てて玄武から離れた。


「失礼をしたね。安心してくれ。君の友人に手出しはさせない」


「……ありがとう」


「礼など必要ない。僕は正しさを証明したいんだ。それなのに、不正を初めから働いて勝ったところで意味はない」


「そうだね。そこだけは君が正しいと認めるよ」


 樹の言葉に九条は、初めて柔らかい笑みを浮かべた。

 教官が何かを抱えてやってきた。


「うちの職員が失礼をしました。では、改めて」


 教官がRPGゲームで戦士がまとうような鎧を二人に渡す。


「対人戦は基本、騎士団では起こりません。ですが、過去は不審者に対応するためとして対人訓練をしておりました」


「このプレートは、その時に使用していたものを改良したものです」


 それぞれ控えていた黒服に鎧をつけてもらう。装着すると鎧の左胸部分に数字が浮かんだ。


「鎧の耐久値です。スコアを1000に設定しています。九条さまの戦闘訓練での数値基準で作りました」


「ほう?」


 九条が目を輝かせる。


「三橋くんは、正確な数値を測ったことがないので、もしかすれば大変かもしれませんが」


「想定ではどれくらい攻撃が持つんですか?」


 樹の問いかけに教官は手元に資料を呼び出して確認する。


「九条さまの通常での攻撃値を100として設定しています」


 樹は首を回す。


「で? 鎧の数値を0にした方が勝ち?」


「そうですね。なるべく鎧を攻撃してください。顔や手足は、基本禁止です」


「了解したよ」


 樹と九条、双方が頷いたため教官もうなずく。


「では、両者準備を」


 三歩、互いに距離を取る。


「戦闘デバイス、起動。魔術エンチャントアプリ、起動」

『承認』


 スマートウォッチに触れて樹が両手剣を呼び出す。九条は右手の人差し指にはめたスマートリングに命令した。


「戦闘デバイス、起動。戦闘補助アプリ同時起動」


『承認いたしました。デバイス、アプリ起動。カウント、3、2、1』


 九条の右手には美しいレイピアが現れた。黄金色に輝く光と共に右手におさまる。


「すまないが、この勝負。僕の勝利で終わらせてもらう」


「前も言ったけど、俺の意見は変わらない」


 ちらりと観客席で見ている玄武を見た。


「心配かけたくないんだ。だから、無傷で終わりたい」


「安心したまえ。鎧の耐久力は僕も見た。それに」


 九条の青い瞳が赤く見える。


「危険と感じたら降参してくれて構わない。僕は、平和主義者だからね」


「表情と言葉、合ってないけど?」


 樹の指摘に九条の瞳はさらに輝き、笑みが深くなる。

 樹が両手剣を構える。九条もレイピアを頭上高く構えた。


「試合、開始」


 教官の号令を合図に、二人の剣がぶつかり、耳をつんざく音と衝撃が訓練場に響き渡った。


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