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アトリの行方

静まり返った交番内で上司は熱い想いを語り始めた。


「別れたと悟られずに恋人と楽しく暮らせば心が安定し仕事にも身が入るかと。

ただ効き過ぎて思い込み激しくなるにつれ現実と妄想の区別が。狂ってしまった。

これはすべて俺のせいだ。本来だったら別れたことに自然と気づかせ次の恋へ。

アトリ計画はそうやってロスを軽減させ区切りがついて次へ向かわせるもの。

もちろん離婚した時も逆恨みせずストーカーにならないようにする画期的な商品。

ペットロスに加えて失踪者に犠牲者。突然不幸に見舞われた者を優しく見守る。

それがアトリ計画の本質。だがこいつはちっとも夢から覚めない。

やはり危険が伴うらしい。まだ改良の余地がある。

もしかすると発売は延期されるかもしれない。

とは言え俺はこの商品が来年全国に届くと信じている! 」


そうやって締めると拍手喝采。

俺も涙が出そうになる。

これが商品化されるなら同じような悩みを持つ者の希望の星となるだろう。

そう確信している。

だからそれはいい。だが問題はアトリだ。


「だとすればアトリはまさか? 」

これ以上聞きたくない。真実など知りたくない。

でも追及しない訳にもいかない。

「あれはお前がトワさんと別れる原因となったフィギュアだ。

確かに多少変形もするし会話も可能な優れもの。お前だって最初は自覚していた。

だがそのうち様子がおかしくなり元彼女と混同するようになった。

そして都合のいい解釈をつけフィギュアと同棲生活を始めたんだろう?

まさかこんなことになるとは夢にも思わなかった。だから俺はかなり慌てたさ。

恐れもした。それと同時に新商品の成功を確信した。それからは観察する毎日」


危険性を知りながら放置していたのか。それは会社の為?

俺は利用されたのか? これはただの偽善では?

とにかくどうであれアトリの行方が大事。


「信じていたのに…… 」

「馬鹿! これもすべてお前を思ってのことだ。

辛かったか? 違うだろ? 幸せだっただろうが!

恋人に振られ傷心だったお前にはもうこれしかなかったんだ。

今月に入りモニター終了。装置も取り外して徐々に元の自分を取り戻した。

そして疑念が生じたんだろ? 分かるぞ。

だがそれでも失踪騒ぎで元恋人も戻って来た。

これで完全に役目は果たしたと俺は考えている」


うわ…… 上手くやりやがった。トワ登場はまったくの偶然なのによく言うよ。

俺は騙されないぞ。俺は……


「だったらアトリはどこへ? 俺のアトリは? 」

「捨てたのよ! 」

トワが断定する。どうしてそんな悲しいことを言うのだろう?

「そんなことするか! 」

結局話はアトリ失踪に行きつく。


フィギュアのアトリはどこへ行ってしまったのか?

それが分からなければまだ解決したとは言えない。

アトリ。君は今どこにいるんだ?


アトリとの記憶を探る。

あれは風の強い日だった。出会いは突然。

俺は一体のフィギュアに心を奪われた。

それがアトリだ。

アトリは俺に優しく微笑みかけてくれた。

俺は心を奪われ貢いでしまった。


最初は二百円。続けて二百円。

それを繰り返すうちに一万円は優に超えた。

そうすると急に魔法が解けたかのように上手く行き出した。

やはりアトリと俺は相性ピッタリ。

アトリとの距離は徐々に近づいて行く。

もう興奮は収まりそうにない。


一枚のガラスのような透明な空間に閉じ込められたお姫様のアトリ。

アトリ! アトリ! と何度も叫んだ。

それは運命の人だと思ったから。周りの目など気にしない。

俺は叫び続けた。


アームのようなものに服が引っ張られて恥ずかしい想いをしてるアトリ。

何てことをするのだろう? アトリを粗末に扱っていいはずがない。

ここの管理人である男に文句をつけてやった。

なぜ辱める? なぜ嫌がってるのにも関わらず晒し続けるのか?

まったく意味が分からない。理解に苦しむ。

だが真面目に聞いてはくれない。ただのクレームだと相手にせず。

はいはいとどこかへ行ってしまった。

破損してるか汚れてれば文句をつけてもいいがそれ以外は受け付けないと。

どれだけアトリを苦しめればいいんだ?


とにかくアトリは我が手により救出された。

だがすぐに見た目のそっくりな女性が投入されて行く。

アトリには姉妹が居たのかな?


こうしてアトリとの生活が始まった。

トワの目の前でもべったり。

嫉妬に狂ったトワが捨てるように迫る。

ただの可愛い女の子じゃないか。

なぜそんなことを言うんだ?


                続く

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