トナラー全員集合
女性の突然の謝罪。もう訳が分からない。
「それは儂から話そう。カス君と言うのはあんたらが疑っておる男。
そしてこの女性こそが彼のお相手。儂は二人が仲よく買い物する姿を目撃した。
だから間違いない」
裏のお爺さんが姿を見せる。
午後に来ると言ってた。まさか失踪中の彼女を引き連れてくるとは。
「実はな。お主と別れてすぐに彼女が儂の家を訪れてな。
今何が起きてるかを報せてやったんだ」
そうお爺さんだけは彼女の存在を知っていた。
新居を紹介してもらった恩人であり迷惑を掛けた一人だから。
会ってもいるし交流も無い訳ではないそう。
「新居の件でお詫びに伺いました。そしたらカス君が……
警察から電話があったって聞いたので念の為に」
彼女の話では両親からトラブルに巻き込まれてるのではと連絡があったらしい。
とりあえず確認。
「あの…… 二人はもう別れたでよろしいですね? 」
「ええもう彼には愛想が尽きました。だから勝手に出て行ったんです。
だって彼ったら酷いんですよ…… いえ何でもありません。
話し合いになれば別れたくないって泣きつくだろうから姿を消しました。
勝手ですが仕方なかったんです。それがこんな大事になるなんて」
別れた夫がしつこく迫りストーカーになる事例は数えきれない。
二人の場合はまだ結婚してなかったようだが。
失踪者はついに姿を見せた。
男の執念が彼女を呼び寄せたとも言える。
「ちょっと待って! いつ居なくなったか覚えてますか? 」
同僚が割って入る。
「たぶん先月の…… 中頃だったかな。引っ越し先が決まってすぐだから」
「実際新居には住まわれたんですか? 」
「いえ…… 一度足を運びましたがそれ以降は特に」
「では姿を消したのは引っ越される前? 」
「ですから先ほどからそう申し上げております。何が聞きたいんですか? 」
まずい。しつこく聞くものだから怒らせてしまった。
でもこれはとても大事なこと。仕方ないので代わる。
「先月に別れたと? 」
「ええそう言うことになりますね」
「ありがとうございます。その証言が得られれば充分です」
「おかしなお巡りさん。そうだもう一つ謝らなくてはなりませんでした」
そう言うとお爺さんに向かって深く頭を下げる。
「ははは…… よくあることじゃ。気にするでない」
「いえそれもそうですが車をぶつけてしまいました。
本当に申し訳ありませんでした。
私が駐車にこだわりがあったのとカス君が風を考えずに開けてしまったから。
逃げるつもりはなかったんです。ぶつかったのではなくかすった程度。
傷もへこみもないと言うから慌てて別の駐車スペースに」
お爺さんと初めて出会った時に起きたトラブル。
「ああ気にしておらんよ。奴など恐らく忘れてるであろう」
お爺さんは勢いで許してしまった以上何も言えない。
「当て逃げの件ですか? なぜ早く知らせない? 逃げていいはずがない! 」
すぐに通報せずに逃げたことを同僚は怒って見せる。
「済みませんでした。反省しております」
もう一度頭を下げる。
「本当によろしいんですね? 」
被害者が許すと言うならもうこれ以上は追及できない。
「ああ一度許したものを蒸し返してはみっともないじゃろ。修理費用は請求せん」
警官の前で取り下げると明言した。後でトラブルになることはないだろう。
これで一件落着。
だがこれで終わりでないのがこの事件の根深いところ。
「ちょっと! 何するのよ! きゃああ! 」
左横田さんが駆けこんでくる。
「変質者! この人私に襲い掛かったの。早く捕まえて! 」
派手な登場の左横田さん。一体何があったと言うのだろう?
「大丈夫ですか? お怪我はありませんか? 」
「そんなことより早く捕まえてよ! 」
「分かりました。お任せください。こら暴漢! 」
同僚が駆けて行く。すぐに容疑者を二名連行。
「おい誤解だって! 彼はそんな男じゃない! 」
二人組の男。どちらが犯人? それとも共犯か?
卑劣な男は言い訳を繰り返す。
「あれ…… 前田さん? 」
「おおお巡りさん。忘れものだ。ハンカチが落っこちてたぞ。
これあんたのだろ? 」
ああ…… 昨日からないと思ってたんだよな。
いくら探してもなったからもしかしたらと思ったがやはり銭湯に忘れてたか。
落としもの届けに行って自分が忘れてきたら世話ないよ。
「ありがとうございます。では逸失物届けにご記入お願い…… 」
まずい。いつもの癖が……
続く




