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トワのトナラー

お婆さんに注意喚起。これで未然に詐欺は防げるだろうか。

「ふう疲れたな」

「ちょっと天ぷらはないでしょう? 」

「お前だってハンバーグ何て言いやがって恥ずかしい奴だな」

「私は聞かれたから素直に好きなものを」

「だったら好きな飲みものを聞かれたらタピオカを要求するのか? 違うだろ?」

うわ…… 私の好みをなぜ知ってる? 馬鹿にされると言ってなかったのに。


この人弱点を突くのが上手い。相手を恥ずかしがらせ支配しようとする。

要求を通す術をよく知っている。はっきり言ってプロだ。

これなら交番勤務などせずにいっそのこと刑事にでもなればいいのに。

もちろんそれだけでは役に立たないが自供させる能力は高い。

一度もったいないなと冗談で言ってもみたが本人はこっちの方が性に合ってると。

同僚は私をからかう為だけにその能力を発揮する。

もっと有意義に使って欲しいな。


「お前たまにモールでタピオカの列に並んでるだろ? 」

「うわ…… プライバシー。見たんですか? 見たな! 」

どうにかごまかそうとするが相手は冷静。こっちが慌てる様を楽しんでる。

「見てない。聞いただけだ。お巡りさんが居たよって近所の主婦がわざわざ俺に」

これはまずい。すべて筒抜けのようだ。


「人違いですよ。いつどこで誰が? 」

「だから先週の土曜日だろ。間違えないそうだぞ。まだ嘘を吐く気か? 」

「違いますよ。実は…… 今後の身の振り方を考えていまして。

ほら警察の仕事向いてないじゃないですか。

だからタピオカ屋でも始めようかなと。一種の研究ですね」

上手くごまかしたぞ。これなら恥ずかしくない。

「冗談だろ? お前まで辞められたら困るんだ! 」

激しく動揺する同僚。いい気味だ。からかうからいけないんだ。


「ははは…… 冗談ですよ。それより早く仕事しましょう」

「お前だろうが。タピオカばかり飲みやがって! 」

同僚は意味不明に怒り出す。

「いえ一度たりともここでは飲んでません」

「まったく口の減らない野郎だ」

「まあもうこの話は充分でしょう? 本件とは関わりありませんからね」

「ああ。お前の言う通りだな。俺が悪かった」

「分かればいいんです。分かれば。こっちも良い宣伝になったかな…… 」

「はあ? 何か言ったか? 」

「いえこっちの話です。こっちの長い長いお話…… 」

「そんなことよりお客さんが来たぞ」

お喋りはこれくらいで仕事に戻る。


「済みません…… 」

恥ずかしそうに中に入らずに外から声を掛ける若い女性。

憂いを帯びたその姿に惹かれてしまう。

「どうされましたか? 」

椅子に座ってもらう。

「実は私…… 」

そこで止まってしまう。どうしたのだろう。

「本当にごめんなさい! ご迷惑をお掛けしました」

いきなりの謝罪。この人何かしたのだろうか?

「まさかお前告白でもしたか? 」

同僚は美人に弱いものだから浮かれている。

私まで鼻の下を伸ばしていては仕事にならない。冷静に冷静に。


美人と言っても化粧してるしな。

二十代後半と見た。大人っぽいがちょっときつい感じがする。

告白されるよりもするタイプかな。

服装もお洒落にほど遠いグレーのスーツに黒のスカート。

パンプスも使い古した感がある。


「どのようなご用件でしょうか? 」

「ほら麦茶でも飲んで落ち着いてね…… 振りたくもなるよな」

同僚の冗談はしつこい。私はこの人を知らない。知らないのか?

どこかで追い求めていたそんな気さえする。

初めて会ったのになぜ……

「そう振ってしまったんです」

同僚に乗っかる悪い女。私を嵌める気か?


「ごめんなさい。本当にごめんなさい! 」

あれ…… 同僚に向けて言ってるような。まさか奥さん? 

そんな訳ないよな。確かもう少しお太りになられていたような。

もっと逞しい方だったはず。だとするとどう言うことだ?

同僚でももちろん私でもない。

謎の訪問者は一体何の目的でここへ。

嘘までついて。考え過ぎか。


「分かりませんのでせめてお名前だけでも」

「これは本当に失礼しました。何から話せばいいか…… 」

不安そうに俯く。

「大丈夫。お名前をどうぞ」

「私はトワって言います。カス君が迷惑を掛けたそうで」

「トワさんですか。それでカス君とは? 」

言いにくそうに下を向いてしまった。

一体この女性は何を隠してるのか?


「カス君って言うのは私の彼でして…… 」

「はあもしかすると喧嘩でもされたんですか?

それで今日はその相談で訪れたと? でしたら詳しい話を伺います」

「いえ違うんです。何と言っていいか…… 」

ちょと顔を上げると再び俯く。

そして立ち上がるといきなり床に跪き謝罪の言葉を述べる。

「お許しください! 」

「ちょっと困ります。皆さん見てますよ」

通りがかりの市民が何だ何だと中を覗く。

これではイメージダウンは避けられない。

「どうしたんですか? 」


「それは儂から説明しよう」

また余計なのが現れた。


                 続く

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