表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/59

最後のトナラー

「済まんねわざわざ。どこに落としたんだか…… お巡りさんも気をつけな」

恥ずかしそうに頭を掻く主人。気をつけるように注意すると返されてしまう。

これで役目は果たした。後はゆっくりするとしよう。 


年季の入ったタイルにお馴染の富士山。

昔ながらの銭湯で一息つく。

ふう気持ちいいな。嫌なこともすっかり忘れそうだ。

「あれお巡りさんじゃないか。休職中? 」

一人で貸し切り状態だったのに余計なのが入って来た。

「あなたは? 」

「何だよ忘れちまったのかよ。俺だよ俺」

うん誰だ…… ハンバーグ? 面識はないはずだが。

当然あっちは見てるから親近感が湧くのだろうな。

だが今は風呂に入ってるんだから構わないで欲しい。

お巡りさんにだってプライベートはあるんだよ。


「前田です。どうぞよろしく」

自己紹介は大人しく控え目。拍子が抜けるなもう。

「前田さんって言うとまさか…… 」

最後のトナラ―。

「何だやっぱり知ってたんじゃないですか。水臭いなもう」

そう言うと寄って来る。

男の証言通り。人との距離感を測り切れてない。

まあいいか。聞きたいこともあるしな。


「あの…… 実は」

「何だよ聞こえないよ? 」

湯船でバシャバシャするからうるさくて聞こえないんじゃないか。よく言う。

「あのその…… 」

どう話していいものかもう終わった失踪事件。

それを忘れるために銭湯に来たのに。これでは逆効果。

「あれお巡りさんもあのちゃんのファンなの? いや奇遇ですな。

実は俺も親子でファンでして。ははは…… これは参ったな」

聞いてもいないどうでもいいことをベラベラと。不愉快になる。

「そうではなくて…… 」

「そう言えばもう一人俺よりも筋金入りのファンの男がいるよ。

いつも銭湯で会うと口癖のようにあのと言うからこれは間違いない」

やはり例の男について述べてるらしい。


「その人何か変じゃありませんでしたか? 」

「おいあのちゃんファンに悪い奴なんかいるかよ! 」

だから本人も否定してただろうが。

まったく何なんだこの人は? いきなり興奮して。

「いいや。彼は真面目な男だよ。俺のつまらない話に付き合ってくれるんだから」

それはあなたが無理矢理今みたいに迫るからでしょう。

そう言えたらすっきりするんだけどな。


「おかしな点は? 」

「何だ。お巡りさんはあの男を疑ってるのか? 何か事件の捜査かい? 」

意外な返しが来る。

「そうではなく気になるんです」

「確かにな。俺も彼の行動が気になるさ。いつも脱衣所で誰かに話し掛けてる。

最初は小さな声で時には叫びだすことも。大丈夫か心配するだろ普通?

でも駆けつけると当然だが誰も居ないし何もない。叫ぶ対象も怒る対象もない。

変だろ? 俺だけじゃない。他の奴も目撃してるんだ」

男の異常な行動を目の当たりにしていながら注意もせず黙っていたらしい。

「かなり怪しいですねそれは。不審者とか? 」

「不審か? それはそうだがそんな奴いくらだって。

俺だって人のこと言えないさ。だから放っておいたんだ」

「ありがとうございます」

まあいい。男についてはこれくらいで。


「ちなみに前田さんはブブンカさんを知ってますか? 」

「知ってるよ。疑ってるのか? 」

「付き合いがあるそうですが」

「ああ親しくしてる。近所だからな。一緒に風呂に行こうぜってな」

「彼は近所? 」

「そうだよ。俺たち引っ越して来たばかりの新入りさ。だから親近感があってさ」

「でもここの常連だって…… 」

「誰から聞いたか知らないがそうなんだ。俺は隣の市から引っ越して来た。

だから常連なんだ。まあいろいろあるのさ。詮索はなしにしてもらいたいな」

それはプライベートなことなのでもちろんこれ以上追及しない。

嫌だと言うなら聞くものではない。でもこの人言いたがってる気もする。

「その…… あのちゃんファンの方から聞いてましたのでつい」

言い訳する。まずいな勝手にファンにしてしまった。


「やっぱりあいつか。それで俺に何を聞きたい? 」

そうそうようやく本題に入れる。もう充分聞いた気もするが。

この際ブブンカはいい。別件で動いてるとの話も聞くしな。

「確認です。彼はあなたの近所の方? 」

「いや違うよ。それくらい調べがついてるんだろ? 」

うわ…… 痛いところを突いてくる。

「だから確認だと。ではどこに住まわれてるかは? 」

「はあ? 知るはずないだろ! 銭湯で仲良くなっただけだぜ。

それこそ警察の仕事じゃないのかいお巡りさん? 」

あのちゃん大好きおじさんは仲間を売る気はないらしい。


ついに最後のトナラ―が姿を見せた。

事件は一気にクライマックスへ。


                   続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ