トナラ―の落としもの
今度の失踪事件どこかおかしい。どこがどうと具体的に言えないが不自然過ぎる。
通常の失踪事件にない違和感。もう気になって気になって仕方がない。
「じゃあまた来るね。あんた何が好きかね? 」
お婆さんは行ってしまった。今度は得意の料理を作ってくれるそう。
それは願ってもないこと。楽しみだな。
地域の方との触れ合いは積極的に行ってる。向こうが勝手に来るのだが。
いくら巨大モールがあろうともここは田舎。都会とはやはり違う。
「それでばあちゃんは何だって」
「これです。落としものなんですけどね…… 」
「どれどれ。何だこれ? 」
封筒にぎっしり詰まった資料に唖然とする同僚。
ただのゴミとも取れるし会社の極秘資料とも取れる。
うーんどっちだ。
そもそも落とすか? ただのゴミと見るべきか?
仮にそうだとすれば廃棄物処理法違反に該当しなくもない。
もちろんこの量では無理だが。
明らかにわざと落として行ってる。うっかりと言うより故意と見るべきだろう。
会社名が記されてるといいが人の名前があるのみ。
社長名でもない限り特定には相当時間を要する。
せめて地元の会社なら特定出来なくもないのだが。
ただ特定してどうなるものでもない。
やはりこれも無駄な努力となってしまうのか?
落とし物かゴミかの区別さえ困難。
またしても事件性の低いかつ無駄に調べ甲斐がある。
平和で長閑な町だから事件性がある方が稀。
失踪事件が一番調べ甲斐があるほど。言い過ぎか。
多くは窃盗やご近所トラブル。後は騒音トラブルも年々増えてきた印象。
もちろんご近所トラブルは事件に発展するほどではない。
最近は外国人犯罪もチョコチョコ。政府が受け入れを表明した以上仕方ないこと。
その多くは窃盗に手を染めるか飲酒トラブルか不法在留。
一時期減少していた自転車の盗難は電動自転車や高級バイクを中心に増加傾向。
我々も該当者に注意喚起と職務質問を繰り返し防犯に当たっている。
ただ追いつかないのが現状。
そう言えばあの男の乗っていた自転車はかなりクラシックだったな。
まあお金にならなければ意味がないので狙われはしないだろうが。
「それで何か分かったか? 」
同僚が興味を示す。私が謎の失踪事件に掛り切りなので心配してのこと。
本来一失踪事件にここまで力を入れるものではない。
どうもただの失踪事件ではなさそうだ。
男は隣の市から引っ越して来たばかりの同世代。
他に重大事件もないことだしな。動けなくもない。
だからこそ大事になる前に早く彼女を見つけなければ。
最悪の事態は避けなければならない。
男の為にも最後まで捜査を尽くす。
「それが失踪した彼女ですがどうやら存在感が薄いと言うか無いと言うか……
これはどう言うことでしょう? 」
あまりに目撃証言がなさすぎる。有ったのはここ来る前のお爺さんの目撃談のみ。
それだってあやふやだ。
「失踪した彼女の名前はこれでいいんだよな? 」
「はい。今関係者に連絡を取ってるんですがあまり本気にしてなくて。
元気にやってるはずだからと両親は取り合わない。
娘が失踪したと言うのに笑ってるんですからもう意味が分かりません。
まさか二人で駆け落ちでもしたんでしょうかね」
「あの男とか? それはいくら何でも飛躍が過ぎる。
それで親戚や知り合いには当たったのか? 」
「はいそちらも空振りです。どうも結婚間近だと知ってる様子。
警察沙汰になればご破綻になると口が堅いんです。
それから知人は先月は元気にしてたと。ですが失踪したのは今月。まるで無意味。
まあこの辺りには男が知らせてるはずですがどうも皆さん呑気と言うか…… 」
報告のはずが最終的には愚痴になってしまった。
訴えた男も消えた彼女もその両親も親戚も皆おかしい。
「分かった続けてくれ」
「男が指定した隣人のお二方に話を聞いてきましたが特に手掛かりはなし。
掴めたのは男の評判と存在感のない彼女。それから当て逃げ事件ぐらいですかね」
手帳のメモを読みながら報告を行う。
これは情報共有にもなるしいいのだが聞いてない気がするんだよなこの人。
一個上の同僚はもう興味が薄れたらしい。
おかしいな。同世代の事件には関心が強いはずなんだけどな。
続く




