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マリエッタ様は、私と同じ学年だった。エレガントローズ学院では、一学年に十五人編成のクラスが二つある。その多くは男爵家や子爵家の令嬢だった。
学院は教育者としてのキャリアを追求する、職業婦人達を育成する。上流階級の女性達は伝統的に慈善活動や社交活動に専念し、職業として教育者の道を選ぶことは少ない。そのため、伯爵より上の身分の生徒はいなかった。
だからこそ、マリエッタ様は「自分が一番偉くなったと感じてしまった」と漏らす。
「わかる気がします」
私はにっこりと頷く。
「他のみんなからちやほやされるのが楽しくなってしまって……私、本当に愚かでした」
そう言いながらマリエッタ様は、ローストチキンを小さく切り分けパクリ。
「あら? これ、いつもとお肉が違いますわ……とても美味しい」
私も一口食べて驚いた。ハーブ風味のローストチキンは絶妙な調味と焼き加減。口に入れた瞬間、肉汁がじんわりと広がり、ハーブの香りがふわりと鼻腔を満たす。彩り豊かな野菜の盛り合わせは、まるで絵画のような美しさだった。鮮やかなオレンジ色のニンジン、深い緑のブロッコリー、鮮度の良い赤いパプリカなど、様々な色と形状が一つの皿に繊細に盛り付けられていた。ドレッシングは、さっぱりとした口当たりと程よい酸味で、野菜によくあっていた。
「寄宿舎のお料理は凄いのですね? ラバジェ伯爵家の料理より数倍美味しいです」
「これはフレンチ伯爵家の料理より美味しいですわ。ずばり、シェフが変わったのですわ。今までと違いますもの」
「皆様! 恵みに満ちた食卓を前に、ビニ公爵夫人に感謝の気持ちを捧げましょう。この素晴らしい食材を提供してくださり、ビニ公爵家のシェフを派遣してくださいました。これからも、このように美味しい料理が毎日、食べられますよ」
ウィレミナ学院長の声が大食堂に響いた。ますますキラキラとした目で私を見つめてきたマリエッタ様は、愛らしい顔で微笑んだ。
「お姉様のお陰でしたのね! お姉様がいらして、本当に嬉しいですわ」
彼女の取り巻きの子達も、頬を緩ませていた。やはり、美味しい物は人の心を優しくする。
「あの……私達も……その……お姉様と呼んで良いですか?」
マリエッタ様の取り巻き――私の前に座っていた数人が、遠慮がちに聞いてきた。けれど、断る理由もないし、悪い子達には見えない。
「えぇ、どうぞ」
私は小さく微笑みかけた。取り巻きの子達は嬉しそうに頬を染めた。それから、私は毎日彼女達と行動をともにするようになった。
そんなとき事件が起きた。
ある日、私が授業から戻ると、部屋のクローゼットが開いていた。淡いローズピンクのドレスが無残な姿になっている。それは繊細なレースとシルクで作られ、ふんわりと広がる優雅なフレアスカートが特徴だった。けれど、レースは切り刻まれ無数の穴と裂け目ができていた。
「いったい、誰がこんなことを……」
「マリエッタ様がこのお部屋に入るのを見ました!」
生徒達も学園長も集まってきたなかで、以前庇ってくれたメイドが叫ぶ。
私の隣にいたマリエッタ様は、顔色を変えた。
「私じゃないです! お姉様、私じゃない……だって、私はお姉様が大好きなのに……こんなことするわけないでしょう?」
彼女は自分が犯人ではないことを何度も否定したのだった。
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