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9話

 さてさて、思い出してもこんなぐらいしか役に立ってないぞ? 頼む! 俺を正式に専属執事として雇ってくれぇぇぇぇぇっっっ!!!



「シュルト、少し話がある」


「うぇっ!? ふぇ、フェイリスさん!?」



 そんなことを考えていると後ろから急に話しかけてきたフェイリスさんに俺は驚く。



「ミゼお嬢様のおそばに居なくてもよろしいのですか?」


「今は構わん。現在ミゼお嬢様と面会しているのは我が伯爵家騎士団の団長様だからな」



 おぉ! ゼノス騎士団長か! 俺の剣術を指南してくれたこともある。真っ直ぐで優しく、だが剣術も強い素晴らしい人だ。



「なるほど……それで、話とは一体? どこかに場所を変えましょうか?」


「いや、構わん。大してどうでも良いつまらない話だからな」



 な〜んだ、じゃあ適当に聞き流すか。早く言ってくれ。俺は今日拾った銅貨を早く磨きたいんだ。ピッカピカにしてやるぜ銅貨! 待ってろよ〜!



「シュルト、ミゼお嬢様は貴様を専属執事に正式に任命するとのことだ」



 へぇ〜…………ぇぇぇぇぇっっっ!?!?!? それめっちゃくちゃ重要な話じゃんっ!? 何が大してどうでも良くてつまらない話だよっ!? もう少しちゃんと聞きたかったぁぁぁーーっっっ!!!!!



「…………本当、なんですか?」


「はっ! いくら仕事を半分奪われたからとは言え、こんな嘘をつくほど私は落ちぶれていないぞ。……正直、会ったばかりの人間にミゼお嬢様のおそばに寄らせるのは抵抗しかない。……だが、貴様はミゼお嬢様の命を救ったのだ。少しぐらい譲渡はしよう……しかし、ミゼお嬢様の1番の理解者は私だ! それだけは絶対に譲らん!」



 フェイリスさんはそう言い残し、フワリとメイド服のスカートを翻しながら去っていった。…………え、俺、受かったのか? つまり……これからもお金がたくさんもらえるってことかっ! やったぁぁぁっ!!!


 拳を握りしめて俺は小走りで屋敷の中を駆け抜けていった。そして……。



「お呼びでしょうか? 当主、ハルバート・フォン・クロイツ様」



 俺は伯爵家当主であり、ミゼお嬢様の父親でもあるハルバートさんと面会をしていた。ハルバートさんは綺麗に整えられ髭を生やし、それに相手を威圧できる威厳のある強面をこちらに向けてくる。


 また、ハルバートさんは俺をミゼお嬢様の専属執事に任命した張本人でもある。いわば俺の人生の恩人の言っても過言ではないだろう。



「シュルトよ。君が専属執事となって一週間だな。娘はどうだ?」


「才色兼備、容姿端麗、成績優秀などなど、私ごときの言葉だけでは伝えきれない、とだけ申し上げます」


「ふむ……。何も問題はないかな? もちろんそれは娘本人のことだけではなく、専属メイドのフェイリスについてでも構わんよ?」


「御当主様の慧眼に狂いなどございません。皆が一様に素晴らしく優秀で、大変有意義な毎日を働き過ごしております」



 はぁ、とりあえず話を合わせてるけど、呼び出した理由ってこれか? ならさっさと終わって欲しいもんだな。



「ふむ、君は聞いていた通り……いや、それ以上に優秀だとすぐに理解できる受け答え、また立ち振る舞いや作法だね」


「もったいなきお言葉です」



 おぉ、誉めてくれてる!? ってことは何かしらボーナスでも出るのか? この前黒装束の賊を殺した報奨金も近々入ってくる予定だし、明日はお金を磨く時間が多くかかりそうだな!



「さて、社交辞令はこのくらいにして、本題に入ろう。……君が殺した賊についてだ」



 おぉ、やはり賊についてだな。倒した俺に報奨金が出る可能性も高くなって来たぞ!



「なんでも騎士団長のゼノスが言うにはだな、君の実力ならば不殺を目的とした捕縛をできる程度と聞いたのだが?」



 あれ? この流れおかしいぞ?



「つまり君は、私の娘がこれからも危険な目にあうかもしれないのに、情報を吐き出すこともなく殺してしまったというわけになる」



 待って? 待って待って!? ストップして!



「我が伯爵家に不要な労力を割かせることになったわけだが……何か釈明はあるかね?」


「……いえ、全くございません」


「だよね……一言で言おう」



 首だけは勘弁してくださぁぁぁぁぁいっっっ!!!!!



「減俸だ」



 あぁぁぁぁぁああっぁぁっ!?!?!?



 こうして俺は減俸を言い渡された。それでもお金のため、シュルトはこれからもお嬢様(お金)のために働く事になる。

最終話です。ここまで読んでくださりありがとうございます。

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