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ランカーズエイジ  作者: 朝倉牧師
波乱の新学期編
78/98

驚くべき訪問者

引き続きホテルの話ですがサブタイトルは変えています。

楽しんで頂ければ幸いです。


 九月五日、午後八時十七分。



 凰樹(おうき)の部屋の前で三人の少女と複数の警備兵が問答を繰り広げていた。



「ですから!! 私は輝さんの部屋に()()()()だけ用事があるだけですわ!!」


「湯上りに香水、しかもホテル用のガウン姿でですか?」


「そうですわ。な……なにもおかしくありませんの」



 首都でのホテルではほぼ夜間に凰樹が何処かで特訓をしていた為についにリベンジの機会は訪れなかったが、荒城はこの日再び凰樹の部屋への訪問を果たそうとしていた。



「で、そちらの彼女も?」


「なんだか寝付けないから少しお話でもいいかなと思っただけです!!」


「その格好で?」


「何か問題がありますか?」



 荒城と同じく、宮桜姫(みやざき)も湯上りに香水をつけてホテルのガウンを身に纏っていた。


 警備員は頭を抱えていたが、後ろに控えている竹中に比べればまだ荒城や宮桜姫の恰好はマトモに見える。



「そこまであからさまですと流石に……」


「夜這いは日本古来からの風習。だいじょうぶ、あきらもきっと満足してくれる」


「ぜんっぜん大丈夫ではありませんわ!!」


「そうよ!! ()()()()胸が大きいからって!!」



 竹中(たけなか)に至っては、同じホテルのガウン姿ではあったがわざとサイズが小さなものを選び、前を閉じても胸が半分くらいこぼれ出している状態で凰樹の部屋へ突入しようと試みている。


 もう既にどこから突っ込んでいいか分からない程にアウト過ぎて、周りの警備員も困り果てていた。



「自由恋愛までは止めませんが、ここで問題を起こされると我々も困るんです」


「まあ、法的にはギリギリ問題ありませんしそういう時期なのは分かりますが、そういった行為は出来れば自宅に戻った後にして貰えませんか?」


「三人とも、()()()きょ()()()()!!」


 騒ぎを聞き付けてきた楠木(くすのき)は、三人にそう言って釘を刺したが、三人が三人とも「随分前の話だよ」「輝さんが受け入れてくれるかどうかは別問題ですわ」「あきらでも据え膳は食べてくれると思う」と言って何食わぬ顔をしていた。



「玉砕覚悟で告白するなら止めないけどね」


「その位、わかってますわ」



 と言いながら、荒城はキスまでしてもダメならばもう一段階上の行為で何とか事前に約束を取り付けようとは思っていた。


 今のままでは本気で竹中辺りの強引で大胆な色仕掛けに凰樹が押し切られてもおかしくないからだが。



「とりあえず、続きは家に帰ってからするんだ。そこまで俺達も邪魔をしようとは思っちゃいない」


「そうそう、ここで問題を起こせばここのホテルにも迷惑がかかる。あの凰樹さんならばそんな事を望んだりせんでしょう」



 警備兵の中には凰樹の事を神か何かの様に敬っている者も結構な数で存在する。


 普通、()()()()()()()を積めば増長してプライドの塊となり周りの大人に対しても横暴な態度で接するのが普通だが、凰樹は前人未到の武功を重ねた今でも信じられない程に謙虚で、人に対する態度にもそんな言動が欠片も無いからだ。


 聖人君主という訳ではないが防衛軍の戦友や警備の者に対してもキッチリ礼節を守る所などは高く評価され、「やっぱりあれだけの人格者だから、多くの仲間に支えられているんだろうな」などと、事実とはだいぶ異なるがその人となりは好感を持って受け入れられている。


 凰樹を知っている者に聞けば、『神は神でも敵には容赦が無く無能な味方にも容赦の無い鬼神か何かだろう』といわれる事は間違いない。



「そこまで言われては、仕方ありませんわね」


「そうだね、今日はこの位でいいかな?」


「あきらに迷惑がかかるのは困るから……」



 ただ、このホテルから帰って夜這いを仕掛ける場合、近所に住む竹中がはるかに有利な状況になるのだが、この時の荒城と宮桜姫の二人は気が付いていなかった。



◇◇◇



 九月五日、午後九時三十七分。



 超高級ホテル山景王(さんけいおう)の入り口に黒塗りの高級車数台がとまり、そこからスーツを着込んだ十数人の男が姿を現した。


 身形の良い一人の男を取り囲むように黒服と完全武装のSPが十人程周りを固めており、その人物が相応の重要人物である事は伺いしれる。



「このホテルです」


「うむ、上手くいくだろうか?」


「交渉次第でしょう。望むだけの報酬を出せない可能性はありますが」



 その身形良い男の横には大きなアタッシュケースを抱えた小太りの男が控えており、時折質問などに答えていた。


 ホテル内に突入したその一団は受け付けを無視してエレベーターに乗り込み、そして最上階へと向かった。



「なんだお前達は」


「ここを誰の客室だと思ってる?」



 目の前の一団を不審人物だと判断した警備員は応援を呼び、近くの部屋に待機していた防衛軍の兵も含めた十人程でその一団を取り囲んでいた。


 そこに大きな胸をした一人の少女……、クリスティーナがその一団の中から姿を現して「すみませ~ん。ちょっと訳ありで~す」と、言って防衛軍の兵士に耳打ちをしていた。



「そ、そういえば……」


「間違いない。どうする?」


「我々の手には余る。上に判断を……」



 そう言って上官に判断を仰ごうと思った時、その一団からもう一人男が姿を現した。



「まあ、そこまで話を大事にする必要も無いだろう。ここは私に任せてもらえんか?」


「か……、影於幾(かげおき)さん」


「ここのAGE事務所所長か? まあ、うちも世話になってるが」



 対GE民間防衛組織事務所所長である影於幾(かげおき)之滋(ゆきしげ)


 方々に裏金を回しているだけでは無く、儲けた金を効率的に使う頭脳も持ち合わせている為にこの居住区域に駐留している防衛軍の部隊にも必要とあれば出し惜しみする事無く予算を投入している。


 精鋭と呼ばれ予算と装備が潤沢な特殊機動小隊以外では割と不足している物資などを、無尽蔵とも呼べる予算のあるこの居住区域の対GE民間防衛組織から出したりもしており、今では防衛軍内でも結構顔が効く存在だった。



「どうする?」


「影於幾さんは凰樹さんのシンパだし、あの人の性格も熟知してるだろう」


「悪いようにはせんよ。ちょっと話があるだけだ」



 警備兵は迷った。


 しかし、現在の状況は自分たちの手には余るモノであり、最終的に単に留学生でなんの力も持たないクリスティーナではなく影於幾であるならばこの場を任せても良いと判断した。



「どうぞ」


「武器などは持っていないでしょうな」



 相手がどれだけ身分が高い者でも、この部屋の警備という与えられた任務は忘れない。



「私自身は護身用も持っておらんよ。武器を持つSPは此処に残して行こう」


「この方も凰樹さんと敵対するとどうなるかは重々承知しておるよ」



 付きあいのかなり長い影於幾クラスになれば、凰樹はたとえ相手がどんな身分の人間でも敵対して来れば容赦なく処理にかかる事位は承知している。  



◇◇◇



 影於幾は凰樹の部屋のドアを叩き、「凰樹さん、私だ」と声をかけた。



「影於幾さん? 何か直接訪ねないといけない様な緊急事態が?」


「いや、まあ緊急事態には間違いが無いんですが……」



 部屋への入室が許可された影於幾は留学生のクリスともう一人、ホテル内でありながらも帽子をかぶりサングラスで顔や表情を隠した男と共に部屋へと足を踏み入れた。



「クリス? それに後ろの人は……、まさか副大統領? 実質今のアメリカの最高権力者でしょう?」


 もうひとりの男の正体。


 それはアメリカ副大統領のフォルクマール・ベーレンドルフで、彼は大統領であるアルフォンス・グッドオールが周囲の反対を押し切って被災地を訪問中に、急襲した赤竜種型(ドラゴンタイプ)W・T・Fの攻撃で石像に変わって以来、実質臨時の大統領として活動している。



「この格好でも正体を見破られてしまったか。まあ、そういう事でね、影於幾君や表の警備兵たちは責めないでやって欲しい」


「……、まあ、影於幾さん達でも普通は手に余る相手でしょう。では、あちらでご用件を窺がりましょうか?」



 ロイヤルスイートのリビングに案内し、四人はテーブルについた。


 冷蔵庫内にあった未開封のペットボトルの水を全員の目の前に置いたのは、凰樹なりの配慮ともいえる。



「最初に言っておきたいが、私やアメリカは君に敵対するつもりも無ければ、強引に事を運びたいとも思ってはいない。たしかに、今我が国の状況は滅亡だけでなく国家として存在できるかどうかの分水嶺(ぶんすいれい)だ。だからといって同盟国とはいえ、他国に全てを丸投げして助けて貰おうなどとは考えていない」


「あと数か月、おそらく年末までこの事態が続けば、衰退して国家の体を成さなくなった他の国と同じ運命だとしてもですか?」


「無論だ。先日、防衛軍特殊兵装開発部の坂城(さかき)君と非公式だが会談を行い、最新型の武器の供与と、ライセンス契約について話し合いを行った。我が国に(ヴリル)を持つ者がいれば……」




 最新鋭の装備や(ヴリル)に関する事は現時点ではこの国の最重要機密だ。


 GEという共通の敵が存在しているとしても、心血を注いで開発した最新鋭の武器の情報やライセンス、それにそれを使う為に必須といえる能力の(ヴリル)の存在などはけっして他国になど容易には公開しない。


 それを話すだけの交渉が行われたという事で、おそらくその交渉が長期にわたり相当に難航したであろう事は想像に難くない。



「今身体の周りに見えている物が(ヴリル)です。これと同じ事が起こっている者がいれば赤竜種型(ドラゴンタイプ)W・T・Fの討伐も可能だとは思いますが」


 凰樹は(ヴリル)の制御を一時的に止めて、全身から眩い黄金色の(ヴリル)を漂わせてみせた。


 はじめてみるその光景にフォルクマール達は暫く見入り、そして信じられないといった感じで首をゆっくりと左右に振った。


「そんな者は見た事も無いな。例のカートリッジシステムが完成しても無理だと思うかね?」


「無理でしょう。少なくとも現在の状況ではですが、アメリカが滅ぶ前にその出力が可能なレベルの武器が開発される事は無いと思いますよ」


 普通の人間ならば例え事実であっても口にはしない事を凰樹はハッキリと断言した。


 GEとの戦いは遊びでも無ければ、人類がこれまで行っていた戦いと違いひとつ間違えれば即滅亡への道をまっさかさまに転げ落ちるような代物だ。


 甘い予測や楽観的な思考を持つ事が既に危険で、そこには現実的な事実以外に入り込む余地はなかった。



「日本で開発した物を譲り受けたとしても?」


「その頃には幾つもの現実問題で討伐そのものが不可能になります。討伐後に石化から復帰した数百万人分の食糧と住居、そのたの莫大な量を必要とする物が全部何処かから湧いてくる訳ではないでしょう?」


「確かに、現在ならば増産も可能だが、そこまで追い詰められた状況では無理だな。それに金融機関を初めとした社会的な影響も大きすぎる」



 如何に広大な国土と強大な生産力を誇るアメリカといえど、これ以上国土と其処で生活をする国民を奪われればその力は大きく失われる。


 逆に言えばアメリカの全人口が三千万人ほどまでに減少した現在にそれだけの力をまだ残している事が奇跡であり、赤竜種型(ドラゴンタイプ)W・T・Fさえ討伐してしまえば再び在りし日の姿に戻れると信じている事は疑いようも無かった。



 フォルクマールは少年でありながら救出後の住宅問題や食糧事情などをそこまで考えている凰樹の慧眼に驚き、思わず「君は本当に十六歳なのか?」などと口にしていた。



「年齢に関しては間違いありません」


「にしても……、君のような人材が我が国にいてくれればな……」


「仲間と機会に恵まれていただけですよ。この力に関しては確かに様々な努力をしてきましたが……」



 ()()()()その力に目覚めていたのかは、既に凰樹ですら記憶が怪しかった。


 生命力(ゲージ)を使う能力に関しては最低でも三歳ごろにはある程度のレベルに達しており、四歳にして当時は恐怖の対象でしかなかった中型(ミドルタイプ)GEを倒していたのだから……。



◇◇◇



「仮の話になるが、君ならばあの赤竜種型(ドラゴンタイプ)W・T・Fの討伐が可能かね?」


「最新の状況を知りませんので過去のデータになりますが、あのくらいの速度と攻撃力であるならば状況次第では可能です」


「可能なのか……、最新の情報を持っていないのかね?」


 アメリカ政府は留学前のクリスティーナに凰樹説得の密命と共に必要と思われる物はすべて渡してある。


 この日までそこまで日数が無かった為にその機会に恵まれていないと判断されたが、一度凰樹にその情報を求められたにもかかわらず下手な交渉をしようとして自滅した事が知られればクリスティーナの立場がかなり悪化した事だろう。



「ええ、これでもただのAGEに過ぎませんから、動画サイトやSNSの情報それと方々から回ってくる情報位しか手元にはありません」



「AGE、わが国のガンナーズのような物だったか? それだけの力を持つ者を飼い殺しとは……、少年とはいえすでに幾つも武功を重ねた立派な勇者なのだから、その功績に見合った相応の階級や地位を授けるべきだろう」


「AGEはあくまでも民間の対GE組織ですが、要請があれば防衛軍や守備隊と共にGEの殲滅を行います。我が対GE民間防衛組織はその為の存在ですので」


 対GE民間防衛組織事務所所長である影於幾はその事を強調した。


 AGEは既に守備隊以上の働きをしており、防衛軍とほぼ同等の活躍をしているという誇りもあるからだが。



「私の立場もあるからこれ以上他国の内政に口出しするのはやめておこう。それで、仮にだがどの位の報酬があれば()()の討伐依頼が可能かね?」


「どれだけ積まれてもこの国が俺を国外に出す事なんて認めませんよ。その間にこの国にW・T・Fが出現すれば終わりですから」



 首都圏やその周辺区域でその兆候がある環状石(ゲート)は優先して破壊されている為に首都圏がW・T・Fの恐怖に(さら)される可能性は少ない。


 しかしその為に地方でW・T・Fの可能性がある環状石(ゲート)は防衛軍の破壊計画に入れられる事は少なく、仮に出現が予測された場合でも『地方なら多少の被害は仕方がないし、彼に任せればいいだろう』などと上層部では考えられている。


 その為に万に一つもW・T・Fの可能性があれば凰樹を国外に出す事などありえないし、もしあり得るとするならばそれなりの対応が出来る場合に限られる。



「確かに……、その危険性を顧みれば長期的にはありえんか。では三日程の期間ではどうかね?」


「超音速型の旅客機か戦闘機での高速移動ですか? まだそんなモノが残っているとは……」


「私が乗ってきた政府専用機。あれならばあのアホウドリW・T・Fの脅威をすり抜けて本土まで辿り着く事が可能だ」



 アメリカ合衆国大統領専用機、コールサインはエアフォースワン。


 GEの出現後に開発された最後で最新の大統領専用の飛行機で、エンジンなども強化されている為にアメリカと日本の距離を僅か二時間ほどで飛行可能だ。 


 元々フォルクマール・ベーレンドルフは副大統領であるためにコールサインはエアフォースツーであるが、臨時とはいえ大統領代理をしている為にコールサインはエアフォースワンとなっている。



「日本政府が許可して、最新の映像で対策を練った後ならば可能です。パスポートの申請やその他の手続きで早くてもひと月後ですか」


「流石に今回パスポートは不要だ。となれば日本政府の認可次第という話かね?」


 パスポートを用意し旅券を発行するまでも無く、今回は臨時とはいえ大統領直々の救援要請だ。


 身分やその他は保障されるし、なんの問題も無かった。



「最新の映像と報酬次第ですね。倒しにくい地形という事もありますし、単独でやるにも限度があります」


「ランカーズの他の隊員を連れて行くとすればどうかね?」


「この居住区域の安全度はこれ以上下げられません。それに、ひとりやふたり連れて行く位ならば凰樹さんであれば単独の方がやりやすいでしょう」


「周囲の施設を含めてどれだけ破壊しても可能という条件でしたら可能ですけどね……」



 赤竜種型(ドラゴンタイプ)W・T・Fであれば飛行能力や移動能力は低い為に今の凰樹であればそこまで強敵という程のものでは無い。



「今は旧工業地帯に陣取っている。確かに足場は悪い」


「砂漠か荒地のど真ん中にでもいてくれればまだやりようはあるんですが」


 討伐可能、その言質が取れれば後の事などどうでもよかった。


 仲間が必要といえば万難を排してでもランカーズ全員連れて行っただろうが、単独で可能という事ならばその必要も無い。


「討伐自体が可能という事ならばあとは報酬だが」


「先日のリビングアーマー装備のアラクネ型W・T・Fの撃破報酬は防衛軍経由でしたが確か三千億でした。今のレートですと三十億ドルですな」


「レベル三のW・T・Fが三千億。推定レベル七ともなればそんな物ではすまんのだろうな」



 W・T・Fは少ない資料から導きだされた試算で全能力値を合算した数値ではあるが、レベル二つあがれば倍近くに能力が上がる。


 レベル三でもあの強さだったのだからもし仮にレベル七であれば、更に四倍近い能力を有していると考えられた。



「最低でも百億ドル、日本円にして一兆円は必要という事か」


「報酬が目的じゃありませんが、国外の事ですのでそんな感じですかね」



 もし仮に赤竜種型(ドラゴンタイプ)W・T・Fが国内に発生したのであれば、凰樹は報酬などそこまで求めなかっただろう。


 しかし、アメリカにまで出向いてW・T・Fの討伐を行う以上、今後の事も考慮しそれなりの報酬は必要と思っていた。



「討伐報酬はキャッシュでは無いが百二十億ドル用意しよう。私の帰国に合わせるので、出発は九月九日になるが……」


「日本政府の許可が下りますかね」


「先日総理大臣とも会談しサイパン諸島などの譲渡。それに加えてありとあらゆる貿易品にかける関税の撤廃など大幅な譲歩をしてあらかじめ認めさせている。三日というスケジュールもその時に出された条件だからな」



 とはいえ、サイパン諸島を初めとする太平洋の島々にはアホウドリ型W・T・Fがいる為に迂闊に近づく事も出来ない。


 譲渡されても現在となっては近付けない上に本土から離れた離島などにたいして価値も無く、現在はGEに支配された元の国土を取り戻すだけで精一杯ではあるのだが。


 また、関税に関しても同様で、昔と違いあまり現在では食料や自動車なども含めて国外との貿易を積極的には行っていない為に、今更ゼロになろうがなるまいがそこまで影響は出ない。


 アメリカ側が日本政府に対して体面上これだけの譲歩をしたという形を見せているだけだった。



「ここまでは既に予定調和って事でしたか。でしたら赤竜種型(ドラゴンタイプ)W・T・Fの最新映像はあらかじめ渡しておいて欲しかったですね」


「無いと不安かね?」


「勝率を百パーセントにする為には最善を尽くす必要があります。必要な物は入手しておかないと失敗しましたでは済まないでしょう? 特に今回の場合」


「そうだな……。コレが最新映像の入ったメモリーカードだ。過去の映像も最高の物が揃っている」


「確かに受け取りました」



 本心から言えば、凰樹は今回の討伐依頼を受ける気が無かった。


 しかし、様々な事情から今すぐに故郷のレベル四を破壊する事が出来ない以上、その間であるならば僅かではあるが討伐に向かう時間があった。


 そして日本政府とアメリカ政府の様々な思惑がある以上、無為に断る事も出来ない事も察している。



 最低限の報酬と最短期間での帰国。


 それだけが条件だったが思いのほか好条件で討伐依頼が来た為に今回は引き受けただけだった。





読んで頂きましてありがとうございます。

誤字報告などありがとうございます。

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