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30. 隠し事をするのはとても心苦しいのです


――そして結婚式の夜、初夜に向けて会談後に忙しなく準備を整えられた私は、今とても大きな夫婦の寝台のあるお部屋で落ち着きなくウロウロと歩いておりますのよ。


「初夜はもちろん初めてですから、とても緊張して胸が苦しいですわ。セドリック様のお姿を見るだけで失神してしまうかもしれませんことよ。」


 思わず独りごちたところで、扉が開きました。


「タチアナ、どうした?」

「セ、セドリック殿下。少し緊張してしまって……。」


 ウロウロと歩いているところを見られた気恥ずかしさと、まだ湿ったブルーブラックの髪を後ろに撫で付けたスタイルの見慣れぬ殿下の姿に、お顔全体が熱く火照ってしまいましたわ。


「こちらへおいで。一度お茶でも飲もう。」


 殿下は慣れた手つきで私のためにハーブティーを淹れてくださいましたの。

 最近では殿下の淹れたハーブティーの方が美味しい気がいたしますのは気のせいかしら?


「ありがとう存じます。いただきますわ。」


 ソファーへと腰掛けて、二人でハーブティーをいただいておりますと、少しずつ緊張がほぐれてまいりました。


「今日の会談が上手くいったのはタチアナのおかげだ。礼を言おう。」

「殿下、殿下が努力されたおかげですわ。私の力など微々たるものでございます。」


 神秘的な瞳は私を優しく見つめてらっしゃって、そうすればすぐ隣に座る殿下の方を私は見られなくなってしまいましたの。


「イライザ……。」


 ……え?


 胸がドクンと高鳴り、締め付けられるような痛みが襲いました。

 私は思わず胸の辺りに手をやり、震える唇を懸命に隠そうといたしましたの。


「イライザとは、ヒューバート国王陛下の婚約者であった女性の名だそうだ。」

「……そうですか。」

「タチアナ……、今日の会談の際に陛下がそう呟かれた時にも胸に手を当てて苦しそうにしていたな。」


 セドリック殿下は気づかれていたのですか?


 あの時、イライザと陛下が呟かれたことも……私が動揺を隠せなかったことも。


 手が震え、唇も震えてまいりました。

 きっと顔面も蒼白になっているでしょう。

 

「タチアナ、私はお前のことを信じている。それに随分前から知っているんだ。お前がブーランジェ王国の話をするたびに切ない表情をするのも、国王陛下にヒューバート殿が即位した時に見せた表情も。私はその違和感に気づいていたよ。」


 何か理由があるんだろう?と優しく問うセドリック皇太子殿下の手が私の手に重ねられました。


 この方に私の秘密を話して良いのかしら?


 いいえ、本当はお慕いするこの方に隠し事をしていることがずっと心苦しくて辛くて、本当のことを何度も言いたいと思ったのです。


「話してくれないか?私はタチアナのことを心から愛しているんだ。お前のそんな表情を見るのが辛い。」


 私は大きな深呼吸をいたしました。


「殿下、私の荒唐無稽なお話を聞いてくださいますか?」


 そして、私は今までの出来事全てを殿下に語ったのですわ。

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