12. 本意をお聞かせくださいませね
このような日々が続けばストレスも溜まり、今度は過労死してしまうかもしれませんわ。
「私アルバン様にお聞きしたいことがございます。」
「そんなにかしこまって、一体なんだ?」
アンリ侯爵様主催のサロンからの帰り道、カルザティー家の馬車の中で私はアルバン様に思い切って疑問をぶつけることにしましたの。
「私がアルバン様以外の殿方と交流を図ることを、アルバン様はお望みなのですか?」
「……何故そう思う?」
「私と社交に出る度に、敢えて私を一人にして殿方たちが接触するのをお待ちになっているのでは?」
「……。」
馬車の中で向かいに座るアルバン様は私の質問に対して、思った以上の反応されましたの。
アルバン様の顔色は血の気が失われており、額には汗が滲んでおります。
「アルバン様はもしかして……。」
「な、なんだ?」
「もしやアルバン様には意中の方がいらっしゃって、その方との未来のため伯爵家が原因の婚約破棄にする為に私に不貞を働かせる又は疑われるように仕向けてらっしゃるのですか?」
まかり間違えば私やドゥイエ伯爵家への厳しい叱責も免れないような問いかけでございますが、私には真実を明らかにする必要があるのです。
部屋に隠された日記を読んで私が感じたのは痛み……タチアナ嬢は理由も分からず理不尽な態度をなさる婚約者アルバン様を、それでも愛しておいでだったのです。
ですから、アルバン様には他に意中の方がいらっしゃって自分との婚約破棄を望んでいるのではないかと思い至ったタチアナ嬢は、誰にも相談することもできず独りぼっちで思い悩んで自ら命を絶ったのですから。
いつか機を見て本意をお伺いしようと思ってはいましたが、今日のここが聞き時だと思い至ったのですわ。
「どうかお答えくださいませ。本当はアルバン様は私との婚約破棄をお望みでございましょう?」
「……俺はお前と婚約破棄するつもりは全くない。」
……なんですって?
馬車が街中を走るガタガタという音だけが響き、長い沈黙のあとにアルバン様が口になさったのは俄かに信じられないような言葉でしたの。
「それでは……それでは、何故ですの?何故あのように社交場で婚約者である私のことを蔑ろになさるのです?どうして故意に他の殿方と接触させようとするのですか?」
「……お前がどう捉えているのかは別にして、俺は婚約者を蔑ろにしているつもりはない。」
アルバン様のお声は小さく呟くようなもので、耳を澄ませていませんと馬車の音にかき消されてしまいそうなほどでした。
「それでは何故私を必要以上に周囲へ美しく見せようとしたり、ダンスや振る舞いで目立たせようとしたりするんですの?そうかと思えば、私の色味に不似合いな白のドレスばかりを贈って敢えて朧げな印象になさったりとアルバン様の行いは私には理解不能なのです。」
目立たせるのは、他の殿方へのアピール。
その一方で白のドレスは、婚約者の座に収まる興味もない女への当て付けではありませんこと?




