第四十四話【寝顔】
瑠璃が目を開けると、真横に眠っている月がいた。
かわいくて今にも襲ってしまいたくなるような寝顔。
「……夢中でキスをしていたら、いつの間にか寝ていたな」
そう言いつつ、瑠璃はじっとしている。
正確には月を腕枕しているせいで動けないのである。
「もう眠たくないし攻略を始めたいところだけど……月が気持ちよさそうに寝ているから、もう少し待つか」
数年前の瑠璃からは想像もできないような発言だ。
やはり彼のなかで何かが変わってきているのだろう。
瑠璃は大切な物を扱うように、彼女の髪を撫でる。
「キスってあんなにすごいものだったんだな」
月との口づけを思い出して顔の温度が上がってくる。
「俺がこいつを守らないと」
改めてそう思った瑠璃だった。
それから数十分後。
「ふあぁぁぁ。おはようございます」
月が目を擦りながら体を起こした。
「やっと起きたか。……しつこく寝ていたせいで腕が潰れそうだったぞ」
「うるさいですよ。私はそんなに重たくありません」
「さて。月が起きるのを待っている間暇すぎたし、早く進みたいんだけど」
「えっ、ずっと待ってたんですか?」
「まあな」
「起こしてくれればよかったのに……」
「あんなかわいい顔で寝られたら、起こしたくても起こせねぇよ」
「……まさか、寝顔をずっと見ていたんです?」
「うん。わりと長いこと観察してた」
「やめてくださいよ。私の顔がブサイクに見えてきたらどうするんですか?」
「安心しろ。ずっとかわいかったし、そもそも俺は月がどんな顔だろうと好きで居続けるから」
「……それは私もですよ」
それから数秒ほど時間が空き、瑠璃が口を開く。
「行くか」
「そうですね。進みましょう」
「まずはあいつを呼びに行かないと」
「……あっ、そういえば部屋の外には空蝉さんがいましたね。正直忘れてました」
「なかなかひどい女だな」
「だって、昨日はあんなに激しかったんですもん。記憶だって飛びますよ」
「……言うな。恥ずかしい」
「は、はい」
そんなやり取りをし、顔を赤くする二人。
今時この年でここまで初心な大人も珍しいだろう。
キス以上のことは一切やっていない。
だけど今の二人にはそれで充分だった。
その後、外の階段で居眠りをしていた空蝉を叩き起こし、クリスタルに見えない罠がないかどうかを検証するために先に行かせたあと、瑠璃と月は同時にクリスタルへと触れた。




