第二十七話【こうもり】
それから五秒ほど沈黙が続き、瑠璃が後ろを向いて口を開く。
「な? 大丈夫だったろ……って、見てないじゃん」
「見るわけないでしょ!? というか大丈夫だったんですか」
そう言って月はゆっくりと目を開き、彼の背中越しに様子を確認する。
ギロチンの歯が腕に当たって止まっていた。
全く食い込んですらいない。
皮の表面で止まっている。
「ふぅ、久しぶりにちょっと緊張したな。もしかすると切れるかもしれないって不安だったぞ」
「じゃあやらないでくださいよ! 頭おかしいんですか!?」
「うん、自分で言うけど絶対おかしいと思う」
「知ってます」
「なんにせよ俺にダメージを与えられないことがわかったし、もう興味がなくなった。消えろ」
瑠璃が軽く蹴飛ばすと、ギロチンは正面に向かって吹き飛んでいった。
それにより、丁度真っすぐのタイミングにいたギロチンたちが幾つか巻き添えになっていく。
「いつも言ってますけど、本当にめちゃくちゃですね」
「次は床の底に何があるのか気になるな」
「……まさかとは思いますけど」
「ちょっと行ってくる」
瑠璃はわざと真っ暗な底に向かって飛び降りた。
「ちょっと!? ……はぁ。本当に仕方のない人ですね。絶対病気ですよ」
そうつぶやいた時だった。
「「「キーキー!」」」
天井から大量のこうもりが月のもとに接近し始めた。
「強そうな瑠璃さんがいなくなったからチャンスだと思ったんですか? 言っておきますけど私も強いですよ?」
月は近づいてくるこうもりを片っ端から高速パンチで仕留めていく。
「なんせ瑠璃さんの女ですから」
レベルアップの音が彼女の頭上から何度も響いていく。
「このこうもりたち。めちゃくちゃ経験値持ってますね」
その後、月は大量のこうもりたちを全滅させた。
だが、レベルアップの音は鳴り止まない。
「まさか……」
そうつぶやいて彼女は下を見つめる。
真っ暗で何も見えない。
「さっきのレベルアップはこうもりによるものじゃなかったみたいですね。そもそもびっくりするくらい弱かったですし」
底で瑠璃が強敵を倒しまくっているのだろうと判断する。
レベルアップの音はまだ止まらない。
「下の様子が気になりますけど……怖くて下りられません。間違って瑠璃さんに攻撃されても嫌ですし」
さすがに月は真っ暗な部分に向かって飛び降りようとは思えなかった。
ゆえに先へ進み、あとから瑠璃が通りやすいようにギロチンの刃を全て破壊しておこうと決意する。
「瑠璃さんといると甘えてばかりですが、私だって少しは役に立ちたいんです」




