第二十六話【ギロチン】
第34階層。
「これは……初めてのギミックだな」
「やばくないですか?」
二人の目の前には細い通路が真っすぐ伸びており、道中で複数の振り子のギロチンが左右に揺れている。
通路以外の部分は全て床がなく、どこまで下に続いているのかわからない。
真っ暗なのだ。
「あれにぶつかったらおもしろそうだな」
「マジでそういうことを考えるのは止めましょう。ろくなことにならないんで」
「だって鉄の刃だろ? いくら見た目が怖くても俺なら余裕だろ」
「見届けるのが嫌なので、本当にやめてください」
「えー。勝負したかったのに」
「勝負をするなら、せめて魔物にしましょう」
「そういえば、パッと見魔物が一体もいないな」
月は周囲を見渡しつつ返答する。
「そう……ですね」
「ギロチンはたくさんあるけど」
このスタート地点から見える限り、30は超えているだろう。
通路の真上を中心とし、ずっと振り子のように揺れている。
「さすがに多すぎません?」
「これくらいあったらひとつくらいぶつかりそうだな」
「嬉しそうに言わないでください」
「……で、どっちが先頭を行く?」
「瑠璃さんどうぞ」
「了解」
軽く返答し、瑠璃はゆっくりと歩き始めた。
通路の幅は60cmほどでかなり細いため、少しでも気を抜くとすぐに落ちてしまいそうだ。
「瑠璃さん。絶対おならとかしないでくださいよ?」と後ろから月。
「俺は出そうになったら出すぞ? 生理現象を我慢すると身体によくないし、そもそも気を遣わないと一緒にいられないような相手を選んだ覚えはない」
「確かに私も気を遣わずに自然体でいられるような相手と一緒にいたいですけど、状況が状況じゃないですか。……もしおならをされたらくさい臭いが全部後ろの私にくるんですよ」
「けど、おならがくさいっていうのは固定観念でしかないよな」
「おならがくさいのはただの事実なんですよ」
「月が振ってきた変な会話をしているうちに、一つ目のギロチンにたどり着いたぞ」
そう言って瑠璃は立ち止まる。
「良いこと思いつきました。瑠璃さんが殴って壊してください」
「よく俺の考えていることがわかったな。最初からそうするつもりだったぞ」
「殴るタイミングを間違えて手首が吹き飛ぶみたいな展開は本当にやめてくださいね?」
「誰に言っている。仮にミスって手首に当たったとしても、金属の刃物程度で俺の腕が吹き飛ぶと思うか?」
「逆に傷を負わない想像がつかないんですよ。めちゃくちゃ不安です」
「そこまで言うなら試してやるよ」
そう言って瑠璃はギロチンのすぐ目の前まで移動し、タイミングを合わせて腕を突き出す。
「えっ、ちょ。瑠璃さん!?」
重くて鋭そうな刃が瑠璃の腕に向かって下りてくる。
「かかってこい」
瑠璃は顔をにやつかせた。
今更だが、彼はやはりどこかが壊れているのだろう。
普通の人間はたとえ自信があったとしても、決してこんなことをやろうとは思わない。
「きゃっ!?」
刃が接触する直前、月は思わず目を閉じた。




