Episode.17
◇
目が覚めると、荒れ果てた荒野の上にいた。
「……っ」
月は起き上がろうとするも、しんどすぎて動けない。
記憶はないが、自分が病に侵されていることは感覚的にわかる。
「ゲホッ、ゲボッ」
咳をすると、血も同時に出てきた。
彼女は水を取り出すためにアイテムボックスを開く。
そこでふいに、一番上の項目に目が留まった。
【メモ帳】
「?」
月はとりあえず取り出して、メモ帳を開いてみる。
すると、非常に汚い文字で何かが記載されていた。
過去の自分が焦って書いたのだろうか?
「えぇっと……」
苦労しつつも読み進めていく月。
数分後。
なんとか読み終えた彼女はメモを収納し、寝返りを打って周囲を確認した。
「…………」
今のところ、誰の姿も見当たらない。
「……にしても、本当なのでしょうか?」
メモ帳に書かれていた内容は、到底理解しがたいものばかりだった。
自分は夫に会うためにこの不思議な世界へきた。
先に進むためには、夫の姿に化けた悪魔を倒さなければならない。
悪魔はいつも自分にまとわりついていて、物理的には存在しない概念のようなものらしい。
「概念なんて、どうやって倒せば……」
「おっ、月。起きたのか」
「ひゃっ!?」
突然背後から声を掛けられ、月は思わず身体をビクンッと震わせた。
おそるおそる振り返ってみると、一人の男性が首を傾げている。
「……っ」
おそらくこの人物が例の悪魔なのだろうと、直感的に判断する。
「ん? ……なんか様子がおかしいな。どうしたんだ?」
「えっと」
「まさか、何か思い出したとか?」
そう尋ねられ、月はとっさに記憶喪失のふりをし始める。
「……あの、あなたはどちら様ですか?」
「…………」
「それに、ここはどこなのでしょう……」
周囲を見渡す月。
「…………」
「ゲホッ、ゲホッ。状況が全くわからないんですけど、しんどいのでまた寝てもいいですか?」
「…………それは構わないが、その前に何か食べたほうがいいんじゃないか?」
「欲しくありません」
「そうか。まあ、無理をするのもよくないしな。……おやすみ、月」
「あ、はい……。おやすみなさい」
実際に死ぬほどしんどいため、月は咳をしつつも目を閉じた。




