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Episode.16


      ◇


 翌日。

 目を覚ますと、ひどく寒かった。

 頭がクラクラしていて、身体も重たい。


 周囲を見渡してみると、辺り一面緑の草原。


 少し先に衣服が集まってできた布団のようなものが見える。

 月は四つん這いのままそこまで移動し、布団のなかに包まった。


 衣服たちが暖かさと安心を与えてくれる。

 月は再び目を閉じた。


「お、月。起きたか!」


「…………」


「俺のこと、おぼえてるか?」


 遠くからそんな声が聞こえてくるが、睡魔には抗えずそのまま意識を手放した。


      ◇


 再び目を覚ますと、先ほどよりかは楽になっていた。

 だが、しんどいことに変わりはない。


 無理やり身体を起こす月。


 そこで、地平線の先まで続くコスモス畑が視界に入ってきた。

 幻想的で美しい光景。


「うぅ……」


 彼女は自分の肩を抱く。

 気温自体は暖かいのだが、寒気が止まらない。

 病に侵されている証拠だろう。


「…………ここは、どこですか?」


 独り言をつぶやく月。

 過去の記憶をたどってみても、なぜ自分がこんなところにいるのかわからない。

 

 月は再び寝転がり、アイテムボックスを開く。

 そして上から二番目の項目をタップして、パンを取り出した。


「……いただきます」



 無理をして半分ほど食べ進めた辺りで、


「うげぇぇぇ」


 突然の吐き気に襲われ、食べたものをリバースしてしまった。

 吐瀉物には血が混じっている。


「…………」


 身体の内部が痛くて、生きているのが辛い。

 

「…………ぐすっ」


 理由もなく、目から涙が溢れてくる。



 しばらく泣いていると、ふいに視界が暗くなった。

 上を向くと、一人の男性がこちらを見下ろしている。


「月、平気か?」


「ゲホッ、ゲホッ。誰……ですか?」


「どうやら、ちゃんと忘れているみたいだな」


「?」


「いや、気にするな。それよりも俺がいるから安心しろ。泣かなくていいんだ」


 男性はそう言うなり隣に座り込み、優しく頭を撫でてくる。


「…………」


 よくわからない不快感があるが、月はそれでも人のぬくもりに縋りつき、まぶたを下ろした。


「……おやすみ、月」


「ちなみに……どなたなんですか?」


「お前の夫だよ」


「えっ?」


「さあ、早く寝たほうがいい」


「あ……はい」


「…………」


「ゴホッ、ゴホッ。おやすみ……なさい」


「……おやすみ」

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