第十八話【最終決戦・四】
いつの間にか後ろで気絶していたはずの瑠璃がそこにいた。
体全身に水色のオーラを纏っている。
「瑠璃さん!? ……って、その体はどうしたんですか?」
「地球の神様とかいうやつにパワーアップしてもらった」
「……?」
「いや、マジでいたんだって」
するとそのやり取りを聞いていた魔神はなぜか空を睨む。
「あいつ、余計なことしやがって。……あとで殺す」
「まあでも目の前に魔神がいますし、地球の神様が存在していてもおかしくはないと思いますけど」
月がつぶやいた。
「とにかく神様が言うには全ステータスが一時的に十倍になるらしいし、正直さっきもあまり本気を出していなかったからな。今度は絶対あいつを殺さない程度に殺す」
「なら、私も一緒に戦います」
「いや、後ろに下がっていてくれ。正直力の制御ができるかどうかわからない」
一瞬言い返そうとした月だったが、化け物みたいなステータスを持っている瑠璃の強さが更に十倍になった時のことを想像し、真剣な表情で頷いた。
「……確かにそうですね。けど、力が必要になったらすぐに言ってくださいよ?」
「おう。その時は頼んだ」
「はい」
瑠璃の言葉に返答し、彼女は二人から距離を取った。
「まあいいや。下等な神ごときが手を貸した程度で僕の有利は揺るがないし」
「言ってろ」
「じゃあいくよ?」
「こっちからもいくぞ──」
その刹那、瑠璃の姿が消えた。
同タイミングで魔神の姿も消える。
「えぇ……なんですかあの速度」
二人が閃光のように地面や空中を移動していく。
瑠璃の身体から放出されている青いオーラがなければ、月の動体視力をもってしても目で追うことは不可能だろう。
それほどまでに人外な速さだった。
殴り合って別の場所へと移動したあとに音が遅れて聞こえてくる。
「一緒に戦っていたらむしろ足を引っ張るところでした」
◆ ◇ ◆
「人間なめんなぁ!」
瑠璃の連続パンチが相手の鼻、首、鳩尾、股間へと同時に向かっていく。
魔神はそれを冷静に両手でいなし、彼の横腹にミドルキックを叩きこんだ。
「ゲホッ……」
瑠璃は口から血を吐き出しつつも、魔神の股間を蹴り上げた。
容赦のないその攻撃を食らった魔神は、少し不愉快そうな顔をするもすぐに微笑む。
「顔が、がら空きだよ?」
「お前もな」
同時にお互いの顔面へハイキックが炸裂した。
二人は左右に吹き飛びながらも体勢を立て直し、再び相手に向かって走り出す。
「はは、久しぶりに全力を出せたよ」
「そうか──よっ!」
魔神と接触する直前で瑠璃は大ジャンプをし、空へと上がっていく。
地面が大量に抉れ、瑠璃は一瞬にして雲の上へと到着した。
雲の水蒸気により服が濡れたが、彼がそんなことを気にするはずがない。
鋭い眼差しで魔神を警戒していた。
「ここだよ」
声が聞こえた瞬間、瑠璃は後ろ回し蹴りを放つ。
それは運よく魔神の顎に命中し、少なくないダメージを与える。
「痛いなぁ……もう」
「ならもっと痛そうにしやがれ……っ!?」
気づくと瑠璃は脳天に踵落としを食らっており、急降下していく。
「一瞬気が緩んだね?」
魔神は空中を蹴って加速し、彼のあとを追う。
「いってぇ」
瑠璃はなんとか体勢を立て直そうとするも、脳が揺れているせいで体が思うように動かない。
「あれ、もう追いついちゃった。ん、どうしたの? 逃げないの?」
「う……るせぇ」
「じゃあ、もっと速く落としてあげるね」
魔神の容赦ないパンチが彼の腹に命中し、更に落下速度が増した。
「くそ、あいつ」
瑠璃は必死に脳を回復させようと神経を集中させるが、予想以上にダメージが蓄積されているらしく、ぼんやりとした視界が元に戻らない。
「親切心から教えてあげるけど、もうすぐ地面に着くよ?」
そう言いながら相手はゆっくりと拳を握っていく。
「これはマジでやばい」
「準備はいい?」
魔神がパンチを放つ直前、瑠璃は体を全力で捻った。
それによって急所ではなく左肩が魔神の拳と地面の間に挟まれ、ゴキィィィ! というえげつない音が響く。
粉々に砕けたようだ。




