S級魔獣を討伐せよ!!
案の定、激昂したリヴァイアタンの猛攻が始まる。身体の一部を切断されたハズだけれど、それを物ともしている様子は無く、依然としてその巨大すぎる身体をくねらせ、私達を丸飲みしようと、その大きな口を開けて襲い掛かって来る。
「そんなに餌が欲しけりゃ、くれてやるわよ!!」
「待てニーチェ!!」
「っ!!」
大口を開けて襲い掛かって来るリヴァイアタン。その口に直接魔法を放とうとした『雷剣の魔法少女 ニーチェ』。
自慢の雷属性魔法で作り上げた剣を振りかぶった彼女に、ファースト世代の魔法少女の一人。『灼炎の魔法少女 レッカ』が待ったをかける。
ギリギリで踏ん張って、攻撃を止めたニーチェをクルボレレが素早く回収し、私が横っ面を障壁で、返すようにレッカさんが巨大な炎で焼く。他にも次々と魔法少女達が自慢の魔法を放ち、リヴァイアタンは逃げるように海中へと潜って行った。
「なんでさっきの攻撃止めさせたんですか!!」
「待て待てカッカするな。『豪雷』を受け継ぐんだろ?火属性より導火線短いぞ」
「ぐぬぬぬっ」
負けん気が強くて怒りっぽいニーチェは早速先輩に噛み付いている。確かに不自然な待ったではあったけれど、意味はあるハズ。理由を聞くのが先。
そこは理解したのか、ニーチェも唸りながらレッカさんの言葉を待つことにしたようだ。
「『大海巨鯨 リヴァイアタン』の最大の特徴は成長し続けることだってのは知ってるな?」
「良いからもったいぶらずに結果を先に言ってください」
「分かった分かった。急ぎだしな、結論から言うぜ?アイツは魔法を喰う。『人滅獣忌』の毒の魔力とも、『天幻魔竜』の破壊の炎とも違う、『大海巨鯨』だけの特徴だ」
「魔法を喰う?」
そのままの意味だと私は判断する。リヴァイアタンにとって、魔法とは魔力の塊でしかなく、餌と言う認識なのだろう。
そしてそれを可能にするだけの巨躯と力がある。だから、リヴァイアタンの口に魔法を直接叩きこむのは池の鯉に餌を与えているのと同じ結果になってしまうだけだ。
それどころか、魔法を使う者を率先して餌と認識して襲い掛かって来る可能性もある。まるで対魔法少女のような生き物だ。
「リヴァイアタンが封印でも討伐でもなく、放置されていたのはそういう特性もあるからよ」
「何もしなければ人間に直接的な害が少ないって理由も当然あるけどね。アイツを倒すには、バハムートの炎よりも上の威力を持った魔法が必要でしょうね」
「ウィス姉の破壊属性じゃダメなのかよ?」
「大きすぎるわ。少しずつ破壊したって、先に私の魔力が切れちゃうわ」
番長、ウィスティーさん。アズールでも話し合いが行われる。あのウィスティーさんの破壊属性ならと思ったけど、破壊しようにもリヴァイアタンが大きすぎる。
余りの巨体に破壊属性が効力を発揮する前に、ウィスティーさん自身の魔力が切れてしまうだろうから、それでは無意味だ。
「それじゃあさっきのハバキリさんみたいにリヴァイアタンを一刀両断出来れば……」
「それも難しいでござろうな」
「うむ。先ほどよりリヴァイアタンの体表が硬質化してるでござる。恐らく、戦闘時になると分厚い魔力の壁を作るのであろうな。通常の魔獣も同じであるから、リヴァイアタンほどの巨体ともなると……」
『水晶の魔法少女 クリス』さんの案は『甲賀の魔法少女 シノブ』さんと『伊賀の魔法少女 シノビ』さんに否定されてしまう。
直接戦っていない私にはまだ実感が無いけれど、どうやらリヴァイアタンの体表硬度。正しく言えば、魔力で作る防護膜の強度か厚みが増したようで、既にハバキリさんを始めとした、斬撃を得意とした面々の攻撃も含めて、攻撃そのものが通りづらくなっている様子だった。
魔獣という生き物が基本的に備えている。魔法少女も勿論だけれど、薄い魔力の防護膜。
リヴァイアタンほどの大きさ、そしてとてつもない魔力を体内に注入されている今の状態でのその防護膜は、並大抵の強度、分厚さではなくなっている。
「正真正銘、魔力のバケモノか。アレを俺に注ぐつもりだと考えると流石に怖気がする」
「人の形を保っていられるかは怪しいところだね」
「生き物、と言うよりは精霊や我々妖精に近いかと。ここで逃がせば……」
「取り返しのつかない事になる、か」
リヴァイアタンはもう止まれない。この世界にある生命。それどころか海や大地、空まで飲み込む怪物になってしまうことだって考えられる。
そうなったら本来の意味での【ノーブル】の目標は達成されるのかも知れない。
魔獣という神による世界そのものの崩壊。そんなこと、させるつもりもないし、今じゃあ誰も望んでないとまで言えるだろうけどね。




