魔法少女戦線
魔法で射抜かれた魔獣はパタリとその場で倒れる。一撃で倒したみたいね。C級の魔獣だと思うけど一撃で魔獣を倒せるなら大した腕だわ。
周囲を見渡すと反対側の河川敷、その上空に人影が見えた。アレが魔獣を倒した魔法少女ね。
「流石東京、良い腕の魔法少女が当たり前みたいに出て来るな」
「首都を防衛する役割もありますし、人口も多いので単純な頭数が多いですから。その分競争率も高いですから自然とレベルが上がりますよね」
ここから見る限り、あの宙に浮かぶ魔法少女は最もオーソドックスな杖を魔法具にして、魔法を主体に戦うタイプだ。
宙に浮かぶという時点でレベルの高さが伺える。魔法を使って跳ぶ事は簡単でも飛ぶことと、空中で静止する事は難易度が全く違う。
属性での向き不向きもあるけどね。例えば飛行に1番適正があると言われてるのは風だ。
フェイツェイもそうだけど、風属性の魔法少女は空中を戦いの主戦場にする場合が多い。
逆に適正がほぼないのが土属性。主に地上で戦うというのもあり、空中に飛ぶ利点も手段も少ないと言われている。
こんな感じで差はあるけど、その適正を考えても飛ぶ。そして空中で静止するというのは超のつく高等技術。
私達の中で飛べるのはフェイツェイとアメティアくらいだ。私はどちらかと言うと跳ぶの方だし。
それを平然とやっているあの魔法少女のレベルは当然高い。しかも離れた場所から魔獣を一撃でしとめるコントロールの良さもある。
間違いなく腕が良い。それだけは分かった。
「こっちには見向きもしねぇか。都会の連中は淡々としてやがるぜ」
「どうせ後で嫌でも会うわよ。こっちは変身もしてないんだから、あっちからしたらただの一般人よ」
倒した事を確信したのか、すぐにその場を離れて飛んで行った魔法少女へ悪態をつく碧。
どうせ東京の魔法庁本部に着いたら顔くらいはチラ見するわよ。
わざわざ突っかかる理由もないし、多少いけすかなくてもどうでもいいわ。それにだ。
「話では東京本部とマギサさんがやられたと聞いていましたけど……」
「魔法少女の防衛機能は普通に動いているね。何度もこの船は使ってるけど、あの子たちの対応に大きな変化は無いように思うよ」
気になるのは普通に魔法少女がやって来たことだ。
番長の話では東京本部が乗っ取られたくらいの騒ぎのようだったけど、どこのニュースを見てもそんな話はしていないし、ここから見る限り東京やその周辺に異変があるようには感じない。
比較的平穏な雰囲気すらある。一体どれが本当なのやら。
番長が念には念をと策をうって様子を探れればと提案した交流会の話もアレよアレよとまとまり、すぐに決行された始末らしいし。
「逆にキナくせえな。平穏過ぎるぜ」
「罠かも知れません。気を付けましょう」
「警戒し過ぎて逆に警戒されないようにね。自然体で行くのが理想だよ」
警戒しながら自然体というのも無理難題な気がするけど実際それをしないと気取られるのよね。
玄太郎さんの言うことも聞きつつ行かないと。アリウムも用件を済ませて、時間があれば合流するって話だけど借りずに済むならその方がいいし。
そうして東京での取り組み方針をまとめたところで船は接岸。ここから先はいよいよ敵の本拠地と思うべきよね。
と気を引き締めていると、桟橋で待っていたのは意外な面々だった。
「おひさー、元気にしとった?」
「あれ?響じゃん。どうしたんだよ、お前大阪所属だろ」
待っていたのは大和田 響。またの名を『音撃の魔法少女 鼓』。魔法庁大阪支部に所属する魔法少女。
この前協会が開いた交流会で出会った魔法少女の1人だ。
実力は折り紙つき。直接戦ったわけでも共に戦ったわけでもないけど、その自信に満ちた佇まいからかなりの実力者であることは言わなくても分かるというやつね。
「東京本部がきな臭いっつー話はウチらのとこにも来てな。ウチら西の魔法少女を取り仕切る魔法少女がウチを含めた指折りの実力者を連れてアンタらに合流しに来たんや」
「成る程ね」
「頼もしいです」
そんな響が来た理由も東京本部絡みのようだ。どうやら魔法庁を介さずに魔法少女同士のネットワークでこの情報は動いているようす。
頼もしい味方だ。手と目は幾つあってもいいしね。
「おいではりましたか。はじめまして『魔法少女協会』のみなはん。うちは神奈。遠山 神奈と申します。よろしゅう頼みます」
その響の後ろ。桟橋から河川敷に渡るところにいた女性が特徴的訛りで私達に挨拶してきた。




