侵攻
炎の熱量を剣の中に抑え込んで、熱量と剣の斬れ味で外殻ごと焼き斬る。
以前、ドラゴンとの戦闘で覚えたこの魔獣に対しても非常に優秀な効果を発揮していた。
「はぁっ!!」
そこにあるだけで空気が揺らぐ程の熱を持った剣を振り、リオと一緒に次々と追撃を仕掛けて行く。
相手とトカゲ顔は既にこの攻撃を受け止める事が危険だと認識しているから、回避に徹していた。
なにせもう片腕一つを私に落とされている。初撃でうっかり剣を受け止めた時に、私に斬り飛ばされているからだ。
残念ながらそのままトドメとはならず、こうして攻める私と逃げるトカゲ顔という構図が続いていた。
「埒があかないわね。避けるばっかりで攻めて来ないし」
「ガウッ」
一緒に戦うリオも期待外れって雰囲気ね。アレだけ自信満々だったんだから、何かあると思ったんだけど今のところは特にない。
魔獣として考えてもこのトカゲ顔はそこまで強い魔獣じゃない。精々Bランク相当。Aにすら届かない魔獣を揃えて一体何しに来たわけ?
今のところ、1番苛烈に戦っているのはアリウム&パッシオ VS シャドウだ。
シャドウに関しては元々強いし、2番手でもフェイツェイ&グレースア VS ショルシエ。
ほか、魔獣と戦っているところはそこまでじゃない。むしろ優勢だ。
これでは今までと何も変わらない。
あの性悪妖精代表みたいなショルシエがそれで済ませるわけがない。
何かあるはず、そう思ったところで魔獣に変化が現れる。
「なに、あれ……?」
ギチギチと音を立てて、トカゲ顔の首が伸びる。
伸びた首は顔と同じように爬虫類のような皮膚に覆われていく。
目の前で生き物が変容するサマを見せ付けられるのはかなり気持ち悪い。
皮膚が伸び、骨が軋むような音まで聞こえて来るから尚更。
しばらくすると、その変化は止まったようで長く伸びた首をこちらに向け、ギョロリと黄色い目を向ける。
「グルルルッ!!」
「リオ?」
それに対してリオが反応し、その視線を遮るようにして全身の毛を逆立てて威嚇を始める。
警告を出すための威嚇じゃない、これは本気の脅威に対する威嚇だ。
首が長くなっただけの変化で、そんなに変わるものなのか?
そう首を傾げる私をリオは咥えてその場から飛び退る。
「んなっ?!」
直後、さっきまでいた場所に大穴が空き、抉れた地面のカケラが吹き飛んで来る。
リオと2人でそれらを弾き飛ばして事なきを得るけど、抉れた地面の大きさは直径5mはありそう。
直撃してたら、ヤバかったわね。
「ハズシタ、カ……。ニクキ、マホウショウジョ、メ」
「喋った?」
「ワガカラダ、クチヨウトモ、コノチカラトニクシミハキエヌ。アノメギツネノサシズヲウケルノハ、シャクダガ、フタタビ、ニクキマホウショウジョヲ、ワガゴウカデヤキハライ、ソノズカイヲカミクダケルノデアレバ、ノッテヤルノモヨカロウ」
カタコトで話されてるせいで聞き取りづらいけど、憎いとか何とか言ってる辺りでロクでもないのは間違いない。
これ以上暴れられる前に、此処でさっさと決める!!
【Slot Absorber!! Leo!!】
Slot Absorberを起動して、リオをメモリーの中に。素早く装填してリオの魔力を纏う。
朱色の炎を振り払い、二刀流になった私は確実に上がったスピードで斬りかかる。
「ヨキ、ホノオダ。ダガ、マダマダワレニハトドカヌナ」
間違いなく、スピードも火力も段違いに上がってるハズだった。
今ならクライスだって私1人でも戦える自信がある。そのくらいには鍛えているつもりだった。それだけ、強くなったハズだった。
自惚れじゃない、ちゃんとした周りへの評価もあったし、強くなった自覚もあった。
前とは違う、まだまだ半人前だけど、皆にこうして任せられるくらいには成長したと思ってた。
「ホノオトハ、コウイウモノダ」
そんなものを軽く焼き尽くすかのような、圧倒的なまでの黒紫の炎が、私の身を焦すまでは。




