魔法少女交流会
「お、いたかた。ちょっと良かか?」
結局、協会内の案内をクルボレレに任せきりのまま、鼓の質問に答えたり、逆にこちらから大阪について質問したりして見ると、これまた特徴的方言で喋る人がやって来る。
あの人、今お偉いさん達とアレコレ話をしている頃じゃないのか?
「あれ、ドンナさんじゃないですか?どうしたんっすか?」
「いやぁ、うちとしたことがすっかり遅うなってしもうたばい。こげん逸材ば放っとくなんてもったいなか!!」
「へ?」
ずんどこずんどこと大股開きでやって来たS級魔法少女のドンナさんは、先頭で皆に説明していたクルボレレの肩をむんずと掴むと、ヒョイっと担ぎ上げて協会の窓をガラリと開ける。
「じゃ!!ちょっとこん子借ってくわ!!」
「は?」
「え?」
「んん?」
そこに足をかけ、びしっと私達に敬礼をしたと思った瞬間には、閃光と共にドンナさんとクルボレレの姿は無くなっていた。
え、いや、は???
「さ、攫われたぁぁぁぁぁっ?!」
「クルボレレさーん?!」
「あわわわわ、け、警察ですか?!」
「待て待て待て!!落ち着け、連れてったのはあのドンナさんだ。別に悪意があって連れ去った訳じゃないだろう。ここからは私達が案内する。クルボレレが何処まで説明してくれたか教えてくれるか?」
突然の事に全員がテンパって、数名がスマホを取り出す騒ぎになるがなんとかそれをとどまらせて大事にならないようにする。
危ない危ない。警察に連絡でもしようものならとんだトラブルの種になるところだった。それにしたって自由な人だ。ウィス姉を大概ぶっ飛んだ性格をしていたが、S級魔法少女とはネジの一つや二つ外れてないといけないのだろうか?
同じS級魔法少女のマギサさんは大人しいのだから、本人の性格由来だとは思うが、もうちょっと説明やら何やらをしっかりして欲しいものだ。
「さて、クルボレレに変わって私が案内する。翠剣の魔法少女 フェイツェイだ。クルボレレの先輩にあたる。後ろにいるのは激流の魔法少女 アズール。アイツも私の後輩だ」
「言っても半年しか変わんねぇだろ。ま、よろしく。生憎案内するのに適任なクルボレレがいなくなっちまったから、ウチらで案内すっからよろしく」
さて、案内するにも私はクルボレレほど愛想が良くないし口下手だ。ここは口もある程度回るアズールにも協力を願って、二人で上手い事乗り切るしかないだろ。
話を振れば仕方ないなという顔で同じように自己紹介をする。しかし、参った。今回ここにいるのは揃いも揃って年下ばかりだ。上手く案内出来るだろうか。
「フェイツェイさん、フェイツェイさん」
「ん?なんだ?」
「この、道場って何ですか?」
では早速案内を引き都合としたところで、くいくいと袖を引かれる。少々小柄な体躯に大ぶりの大剣が印象的な子だ。
協会のパンフレットを片手に指差したところには、道場と掛かれている。確かに訓練場があるのに道場があるというのも不思議なものだよな普通に考えると。
そこを主に使っているのは私とルビー、それとクルボレレだ。案内するのにも勝手を知っていて丁度いい。行ってみるか。
「え、良いんですか?」
「案内するのが私達の役目だしな。皆もそれで良いか?」
案内までしてくれるとは思っていなかったのか、目を丸くするその子。一応、他の魔法少女達にも声を掛けると口々に了解の声が聞こえて来る。
始めて来る場所を案内してもらえるなら何処に行っても変わりはないという事だ。折角だし、少し道場らしい使い方をするのも良いかもな。
「……なんや、言うてたほど口下手でも苦手でも無いやんか」
「自己評価が厳しいというか、低めなんだよアイツ。もうちょっと自信持てっつってんだけどな」
私が先導して歩くその最後尾で、鼓とアズールが何やら言っていたがこっちとしてはそれどころじゃない。
「そのあとここ行きたいです」
「ここってなんの場所なんですか」
「入口にあったカフェ行きたいです!!」
「わかったわかった。順番に喋ってくれ、答えてやるから」
意外とこの子達グイグイ来る。上にチョロチョロするから目が離せん。こら、そっちは違うから戻ってこい。




