友達
「ナイス、シルト」
「お互いにですね、ルミナス。私が番長さんから『影』の疑似メモリーを受け取ってる事、忘れてなかったんですね」
そりゃ、玉座の間にいる時に使ってたじゃん。それに記憶力には自信があるしね。ちょっとやそっとじゃ忘れないよ。
疑似メモリーと言うのはメモリーの一種で、簡単に言うなら使い捨てのメモリーのことだ。
使い捨て、って言っても何回かは使えるらしいから、どっちかというと回数制限のあるインスタントメモリーって言い方の方が適切かもね。
これも元々私の両親が創設に関わっている魔獣信仰宗教組織【ノーブル】で作られたモノの鹵獲技術のひとつ、らしい。
本来、魂を保管してそこから魔力を借りるのがメモリーなんだけど、疑似メモリーには魂は入って無くて魔力だけ。
魔力は魂から発せられるものだから、魂の入っていない疑似メモリーは入れている魔力量以上の魔力は引き出せないから、使い捨てのメモリーになるってわけ。
以前から存在はしていたんだけどその性質上、魔力を提供する魔法少女にメリットが薄い事とか安定した出力とか安全性とか。
諸々の事情で研究はあまりされてなかったんだけど、今回の戦いでの戦力向上手段として一時的に採用、実用化されたって感じ。
と言っても用意されたのは2枚だけ。
ブラザーが持つ『水晶』とシルトが持つ『影』だけで、それぞれ『水晶の魔法少女 クリス』さんと番長こと『影鎌の魔法少女 リエンダオ』から提供された物だ。
何故2枚かって言われれば、そんな量産するような代物じゃないし、私達の戦力を増強するのに相性が良いモノが厳選されたから。
とにかく、『影』のメモリーは文字通り影属性の魔力。これは光属性のメモリーを使う私と相性が良いってワケ。
光あるとこに影があり、光が強くなれば影も濃くなるように、私とシルトのコンボ攻撃が組みやすくなるから採用された属性なのよね。
「それにしても、こんだけ苦労してようやく一画なのは嫌になるね」
「きっと体積を増やすように見せかけて、分裂してリスクを分散していたんですね」
「ホント、動物ってよりバクテリアとか微生物みたいな生態してる」
自分のコピーを量産して数を増やすってやり方は少なくとも多細胞生物っぽくはないよね。微生物とかウィルスとかの増え方だ。
世界に感染しているウィルスっていうのが『獣の王』の分かりやすい例えな気がして来た。
「やるじゃねぇか嬢ちゃん達」
「まさか倒しちまうなんてなぁ」
私たちと一緒に戦っていたおじさん達が駆け寄って来て、ねぎらってくれる。でもまだ安心は出来ない。城下町の他の地域では絶賛ショルシエが暴れている最中だ。
ここはおじさん達に任せて、私達は次の地域に行かないと。
「おじさん、ここは任せたよ。私達は次の――」
そう思った時、ぐらりと視界が一瞬だけ暗くなる。ヤバいと思ってハッと身体に力を入れた時にはもうシルトの腕の中で抱えられている状態だった。
「大丈夫ですか?」
「……ごめん、どのくらい意識なかった?」
「10秒くらいです」
「そっか」
勢いをつけて立ち上がって、身体の状態を確認すると変身も解除されている。それが意味するところは『光』のメモリーの魔力残量的にも、私の体力的にも限界だってこと。
結構自信あったんだけどな。体力もかなり付いたと思ってたし、魔力効率も前に比べれば格段に上がったと思う。
それでも私が真っ先に戦闘継続が出来なくなったのは完全に私の落ち度だ。シンプルに落ち込む。出来ると思ってやったことが、このザマだからさ。
「何言ってるんですか。一番無茶したスバルが先に息切れするのは当たり前です。むしろ、私達の実力不足です。もっと私達がスバルの実力に追いついていたら、こんなに1人に負担は集中してないですから」
「……詳しい事情は知らねぇが、俺は何も嬢ちゃん達が凹むことはねぇと思う。アンタ達は結果を出してる。こんな短時間で『獣の王』の一部を追っ払えるなんて、少なくとも俺らには無理だからな」
シルトと2人で落ち込むのを見た住人のおじさんが私達に声をかけてくれる。そう言ってもらえるならせめてもの救いだ。
それでも他の皆は今でも戦い続けている。その中で魔力と体力的に続かないなんて言うのは論外なんじゃないかと思ってもしまう。
高過ぎる理想なんだろうけどさ。
「満身創痍だなぁ、ルミナスメモリー」
そんな中でも嫌に聞きなれてしまった声に私達はその場で身構える。




