友達
感想はひとつ。もう次が来たのか、だ。増殖するのが最大の特徴とは言え、本当にゴキブリよりもバクテリア並みの増殖力って言った方が正しく思えるよ。ショルシエ。
「わざわざ戦えない雑魚に何の用? ちょっかい出す利点が思い浮かばないんだけど」
「それは随分な過小評価だなルミナスメモリー。私はお前を純粋に評価しているんだよ」
スライム状の身体ではないショルシエはさっきまで私達が戦っていたショルシエとは別に生成された個体だと思う。次から次へと本当に厄介だ。
倒しても倒しても同じ顔と声が現れるんだから嫌になるのも分かって欲しいね。
それにしても、私を評価しているなんて言うとかどういう風の吹き回しなんだろう。私が認識しているショルシエっていう存在は自分が唯一無二の最強存在みたいに振舞っている印象で、私達を評価するようなヤツではないんだけどな。
「その圧倒的な記憶力と吸収力。戦いの中で常に新しい発見と発想をして、毎秒進化を続けるような敵はシンプルにお前が初めてだ。まるで世界の寵愛を一身に受けたかのような存在だ。あの忌々しいアリウムフルールですら、その実力の裏には泥臭い努力が詰まっているというのに貴様と来たら、だ」
カツカツと石畳を叩く靴底の音が響く。不敵に笑いながら私達の周囲を回るように歩くショルシエから視線を外さないように、私達は円陣を組んでどこから攻撃が来ても良いようにする。
この長々とした講釈に耳を貸す必要はゼロ。私達の心理的動揺を誘うのが目的。特に私の、ね。
嫌な汗がたらりと垂れる。これは本当に良くない展開かも知れないからだと思い至ったからだ。
「そこに『浄化の光』を持つ一族の者のメモリーを所持し、そのメモリーの力を十全に発揮する『思い出チェンジャー』というアイテム。人望にも恵まれ、カリスマとリーダージップにも優れる」
ニタリと笑うショルシエの瞳は私だけを捉え続けている。他にはまるで興味が無い。それが意味することは1つ。
「喜べ、ルミナスメモリー。貴様は『獣の王』に見初められた数少ない存在だ。私は貴様の力が欲しくてたまらないぞ」
ショルシエは、私のことを狙っているってことだ。
「シルト!!」
シルトに指示を飛ばすとほぼ同タイミングでショルシエからの魔法をシルトが盾で弾いて見せる。
流石はメモリースターズのスーパータンク。鉄壁の防御力は反応速度もバッチリだ。
「おじさん達は逃げて!!」
「おい、バカ言うな。嬢ちゃん達だけに――」
「狙いは私!! 巻き込まれるよ?!」
一緒に戦ってくれると言ってくれるおじさん達。でも、すぐにその考えは無謀だっていうことを見せ付けられる。
凄まじい威力の魔法の連打はさっきまでのショルシエなんかよりも完全に上だ。クソっ、さっきのだってギリギリだったって言うのにまだ上があることをまざまざと見せつけて来るのは腹が立ってくる。
しかも、これでも全力ってわけじゃないんだよね。今の私達ならこのくらいの力で襲い掛かれば十分だってくらいの強さで来ている。
そんな余裕をショルシエから感じる。
「ほうほう、これを凌ぐか。シルトメモリーだったか、貴様はまるで眼中に無かったがその防御能力は魅力的だ。魔法少女どものバカ火力には手を焼いていてな。コストの低い防御手段が欲しかったところなんだ」
そんな魔法を捌いて見せたシルトメモリーにもショルシエは興味を示す。シルトの防御力は見ての通り。
ショルシエの攻撃に対してもしっかりと対処をして見せるくらいには高い能力を有している。
ショルシエからしてみれば、自分の攻撃をどうにか出来る存在自体が希少に見えるのかも。それを目の前で披露したシルトにすら私に向けていた視線を向けている。
例えるなら獲物を狙う、狩人の目。
「逃げておじさん達!!」
「時間は稼ぎます!!」
【必殺!!】
「『樹々怪界』」
盾を地面に突き立てたと同時に私達の周りに暗い森が作り出される。
視界と行動を制限するための結界魔法。しかもいくつもの属性を組み合わせた魔法。
流石はエルフ族、一度は種族から失われたはずの魔法も覚えてしまえばこの抜群のセンスには驚くよ。
短期間でこんな複雑な魔法、私には無理だったからさ。




