その3
2週間ぶりの投稿です。水古戦場はもう飽きました。
オレンジよりも、ずっと濃い色の夕日がやっと沈んできた午後6時過ぎ。私とお兄ちゃんの二人は、皆と別れて帰り道を歩いていた。
あの後喫茶店で二時間ぐらいケーキを食べながらおしゃべりをしていた。
「それにしても、あの蝉郎さんって本当に探偵なのかな?」
私は、ふとお兄ちゃんに問いかける。
「ん? あぁ、あの人は……どうなんだろうな」
お兄ちゃんはいつものように生返事だ。
「だって、今までどんな事件を解決したんですか? って聞いたら、地域の猫のノミを全部綺麗にしたとか、怖い夢を見る子供にいい夢を見させたとか、なんか適当な事言ってたじゃない」
あとは、絶対に動物が寄り付かない案山子を作ったとか言ってたわね。
「あの人、本当に謎だわ……大体なんであの夏美はあんな変人と仲が良いんだろう」
蝉郎さんの突拍子もない話に夏美は、小言を挟みながらも、笑顔で聞いていた。その時の夏美の顔は学校で見るときよりもこう、なんか安心してる……っていうのかな。そんな風に見えた。
「あの蝉郎さんって人は、多分探偵じゃない職についてると思う」
「じゃあ何してる人なの?」
「それは分からん」
「隠してる?」
「いや、本当に分からない。候補はあるけど」
「その候補はなんなの?」
「……」
お兄ちゃんは、急に立ち止まって、私の顔をじっと見つめた。
「な、なに?」
「確証がないことは……言わないことにしてる」
「お兄ちゃんのケチ」
「悪いな」
「でも、探偵っていう職業は違うんじゃないかって疑ってるのよね?」
「あぁ、それはそうだ」
うーん。蝉郎さんの職業……なんなんだろう……。
今度夏美に聞いてみようかな。でも、夏美自ら蝉郎さんは探偵だって言ってたのよね。
「夏美さんと蝉郎さんがどうやって知り合ったのか。それが分かればすぐにこの謎は解ける」
どうやって知り合った、か。
「普通に親戚とかじゃないの?」
「それなら、親戚の人だって紹介するだろ。あの二人はとっても仲がよさそうだった。一年二年、もしかしたら、それ以上の付き合いかもしれない」
「あの二人、本当の親子みたいだったわ」
「そう。本当の親子のようだった。仲が良い親子のよう。それがかなり引っかかってる」
「どういうこと?」
「前、話したろ? 夏美さんは、もしかしたら、家庭環境が上手く行ってないかもって」
そう言えば、そんな話をしてたような……確か夏美の家はお母さんが既に亡くなってて、父子家庭なのよね。
「あ、父子家庭……」
「デリケートな問題かもしれない。あんまり詮索入れるのも野暮だ」
昔のお兄ちゃんなら、ありえない台詞でびっくりした。
「お兄ちゃん、そういうの気にするタイプだっけ?」
「……最近気にするようにしただけだ」
「ふーん……」
お兄ちゃんも、やっとそういうのを気にするようになったのね。妹としてちょっと安心したわ。
まぁ、お兄ちゃんもいつか大人になって、誰かと結婚とかして、家庭をもつようになるのよね。
……想像もできないけど。
私もいつか、誰かと結婚するのかな。
どんな人と結婚するんだろうな。
優しい人なら、いいな……。
キュッ、キュッ、と音が響く。電気も消えた、人影のない校舎を大きなカバンを背負った男が、どこか落ち着かない様子で歩く。
校舎内なのに、外靴で歩くその男の鼻息は荒い。
男は、辺りを見渡しながら男子トイレに入っていく。
そして、用具入れのトビラを開ける。
「野郎に興味はないが……金のためだ……」
ドアのふちに設置された小型カメラを手に取り、男はカメラをカバンにしまう。
そのまま男はトイレを出る。
「よし……次はお待ちかねの……」
その瞬間、男はライトで照らされた。
「ウワッ」
「こんな時間に学校内でなにをしているんですか?」
ライトを持った男は尋ねる。
「えっ、えっと……工事の……」
「工事? こんな夜更けにどんな工事をしていたのです? もしよろしければそのカバンの中を見せてもらえませんか?」
「なっ……そ、そんな権利どこにあるんだ。大体お前こそこんな時間に学校内で何をしている! 通報するぞ!」
「あぁ、これは失礼。私は」
ライトを持った男は、懐から黒い手帳を取り出し、男に見せる。
「警視庁特別捜査官の海山蝉郎という者です」
電気の消えた部屋に、一つ大きな明かりが煌々と輝いている。
背の高いその男は、画面をじっと見つめていた。
「やっと保存できた……」
男は、興奮した様子で、その画像ファイルを展開する。
映し出された画像には、制服姿で無邪気にほほ笑む、金髪碧眼の美少女が映し出されていた。
「他人じゃない……絶対本人だ」
男は、次々に画像を表示していく。
「……」
男は、その後数十分ほど食い入るようにその画像を見つめていた。
次回から、文化祭編です。次回更新の時期は未定です。出来れば今月中にあげたいです。




